ドイツ企業はなぜ拠点地域を応援するのか
ドイツ・エアランゲン市(人口10万人)主催の文化プログラム。
地元の金融機関がサポートしている。
■拠点サポートから生まれる循環
拠点地域の文化・福祉・教育方面のサポートをするドイツの企業・金融機関を取材すると、『拠点へのおかえし』『地域社会の生活の質を高める』『社会の多様性を確保する』といった返事がかえってくる。
この理屈、職住近接・地方分権型のドイツの事情を考えると、一定の合理性が見いだせる。
企業は良質の人材を必要とする。そういう人材とその家族は安全性や治安の良さはもとより、文化などが揃ったクオリティの高い生活環境を望む。良質の人材が多いと行政も新たな企業誘致がしやすくなる。同時に飲食・小売、娯楽分野のサービスなども一定規模必要になり、これもまた雇用を生み出す。
■スマートな絆
私が住む人口10万人のエアランゲン市を見ていると、企業・金融機関の支援先のNPOのひとつに、スポーツクラブ(NPO)がある。統計上、人口の4割の老若男女がどこかのクラブに所属しており、クラブはまさに健康や余暇の『インフラ』のような役割を果たしている。
こういう組織は経済的(仕事)なつながりとは別に、社会的な『信頼の網目』をつくる。数値化は難しいが、これは地域の雰囲気にかなり影響しているように思う。さらに、人間関係に着目すると、クラブに加入するのは自由意思であるため、地縁・血縁のような強制性がない。そのせいか、クラブを通じてできあがる信頼の網目は『ベタベタしすぎず、それでいて必要な時は協力しあう』という都市型のスマートな絆でできているように思う。
エアランゲン市内のスポーツクラブにあるスポンサーのプレート。
地元の企業・金融機関が並んでいる。
■『都市の質』から地方都市を見てみたらどうか?
経済・文化・福祉・教育などに加え、地域内の信頼の網目、こういったものが揃う質の高い地方都市は、地方政治・行政、市民活動によるものも大きいが、企業もまた一役買っているのだ。そしてそれは企業にとっての合理性も見いだせるわけだ。
地方創生や生活の質への要望などが高まっている昨今の日本、こういう企業と『都市の質』というところからの発想は地方を再構築していく出発点になりそうな気がする。ただ長時間労働や主に都市圏で見られる長時間通勤が多い現時点では、もう一捻りする必要あると思う。(了)
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※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。