黒笠山 阿波のマッターホルン
徳島県 1,700m 2012年8月16日
四国百名山
35
名山一人旅
私の登る山には名山と呼べない山もあるだろう。だが、登っているときに心ときめくものがあれば、それは私にとって名山だ。
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祖谷渓谷(いや)、霧谷の沢を遡り、黒笠山に登る。
やさしい沢にランクされているが、私にとって沢はいつも挑戦。難所の通過にはいつも緊張する。
稜線で古い登山道を見つけたのは予想外。登山道というのは安心感がある。
黒笠山頂上で、真夏の日差しに我慢して、矢筈山から三嶺、剣山までの景観を目に焼き付ける。記憶に残る山旅。
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祖谷渓谷(いや)の奥、黒笠山の西を流れる霧谷は、「日本登山体系10巻」で「明るく遡行しやすい谷である」と紹介されており、やさしい沢にランクされているが、私にとって沢はいつも挑戦。滝や岩場の難所の通過には緊張を強いられ、このときも難行苦行となる。(岩場にワクワクするという人もいるようだが・・・)
霧谷川沿いの林道に入り、荒れた林道の途中で駐車し、7時前に歩き始める。切り出した木を扱うための仕事場らしき場所を過ぎ、二つ目の沢を横切るところで、やや貧弱に見えるが、これが目指す沢と判定して入渓する。7時半。(この沢は、一つ手前の沢だったことが後で判明)
雨で洗われ、倒木も目立つ、やや暗い沢。F1、F2、F3は、比較的楽に直登で越える。F4は深い釜があり直登できず、左を巻く。F5、F6を直登し、次のF7は狭いゴルジュの連瀑。手前の3mの奥に10mくらいのが見えている。ここは右から大きく高巻き、左岸の林の斜面を歩き、ロープを出して懸垂降下。
次のF8・15mは、最初見たとき登れないと思ったが、良く観察し、右壁の窪みに手掛かり、足がかりを見つけ、ホールドの多い壁を登る。滝上から見下ろすと、本当によく登れたものだと思える。
この後は水量が減り、9時に最初の水涸れとなり、ガレ沢を登っていくとまた水が少し出てくる。二俣を左に入り、その後も分岐が数回。やがてガレ沢の真ん中の大岩の先で沢は消える。源頭。
源頭から稜線までは40分くらいかかっているが、林の中の下生えは比較的歩きやすい。稜線に達したところで、稜線の反対側、東側に標識を発見。ここに登山道があるとは思っていなかったのでびっくり。標識には黒笠山まで900m、林道小島峠まで4kmとある。小島峠というのはどこだろう。とりあえずほっとして休憩。登山道というのは安心感がある。どうやら一つ手前の沢に入ってしまったことに気づくが、ともかく、登山道を黒笠山へ向かう。もう余り歩かれていない道のようだ。ところどころ赤テープが残っているが、踏跡は消え気味。高度が上がるにつれ、周囲の山の一部が見えてくる。
そしてついに黒笠の頂上に到達する。強い日射し。12時45分。それは狭い頂上で、文字が読めない石柱があり、奥に頂上標識が倒れていた。雲がかかり始めた空には強い太陽の日射しが真上から射し、耐えられないほど暑いが、我慢して四周に展開する絶景を目に焼き付ける。すぐ西には地蔵山、矢筈山、サガリハゲの稜線、その左手には三嶺の稜線、塔丸、ジロウギュウと剣山。剣山・山系の最高の景観だ。
帰りは登山道を下ったが、小島峠というのはだいぶ東の方にあり、林道を歩いて駐車地点に戻ったのはだいぶ遅くなってしまった。
沢を間違え、帰りも遅くなってしまったが、難所を越え、黒笠山に登りきったときの達成感は数倍だったと思う。頂上から最高の景色も見ることができ、記憶に残る山旅になった。
入渓地点
F8・15m、右壁を登れる
源頭の大岩
ツメ終盤
汚れた登山道標識
登山道からの黒笠山
黒笠山頂上
サガリハゲ、矢筈山(右)の稜線
剣山とジロウギュウ(右)
旧小島峠の地蔵尊