向白神岳     白神山地の最高峰

青森県  向白神岳(南峰・最高点1,250m、北峰・三角点1,243m、中央峰1,240m)  2010年4月9日

    白神岳(北峰・最高点1,235m、南峰・三角点1,232m)、玄関岳1,135m、蟶山(まてやま)842m

(向白神岳)日本の山1000、青森110山

(白神岳)日本二百名山

6

白神岳登山口駐車場でザックにスキーを装着して出発、6時。冬道に入ったところに赤リボン。林の中を少し登ると固定ロープが張ってあり、やがて雪がびっしり着き、シールに切り替える。落葉のブナ林の樹間に朝日が射し、背後には日本海も見える。真っ青な海に岸辺、海の奥は霞んでいる。

森林限界を超え、急斜面を登っていくと、曲がりくねったダケカンバ。そして主稜線に上がったところで、谷向こうに向白神岳が現われる。その姿は実に力強く、切れ落ちた稜線の上は狭く見え、簡単にはたどり着けないように見えた。

だが、歩きながら向白神岳を良く観察すると、その稜線は遠目には狭いが傾斜はそれほどなく、玄関岳のところ以外は楽そうに思えてきた。だが、玄関岳はどうだろう。尖った頂上を越えていかなくてはならないのか。まず白神岳の頂上(三角点峰1,232m)に向かう。

快晴だが、時々突風が吹き、ゴーグルをかける。白神頂上から斜めに下って玄関岳に向かう。

玄関岳の稜線は左右両側ともに深い谷に切れ落ちていて、尾根筋を頂上まで登る。玄関岳頂上からは狭い尾根を慎重に下る。振り返ると広い雪斜面に滑走トレースがまっすぐ長く付いている。

P1頂上に到着すると、まったく形がちがう向白神岳が正面に見える。それはゆったりした稜線と白い大障壁の姿。

P3の頂上が近づくと、向白神の三つのピークが目の高さに並んで見える。ここから見る向白神岳はとても穏やか。

東側が雪の急斜面になっている狭い向白神岳・南峰に到着。ここが白神山地での最高点、1,250m地点だが、雪の上には何もない。行く手には刃渡り尾根と鋭角に尖った二つのピーク。刃渡り尾根を進んで中央峰に到達。ここは南峰よりも更に小さなピークで、動き回ると東側の雪庇を踏み越えて落ちそう。

北峰を登っていくと、すぐ手前のところに頂上標識を発見。「向白神岳」という文字を見て、スキーを外してその場に座り込む。やった、着いたぞ。あこがれの向白神岳頂上にたどり着き、万感の思い。向白神岳の標識のちょうど奥に白神岳が位置している。南には斜めの半円の形の中央峰。その頂上は刃渡り尾根で奥の南峰(向白神岳・最高点)につながっている。強烈だが美しさを備えた自然の造形美。

登り返しが多いためシールを付けたままで戻る。この日は晴れていたが風が強く、シールには全く雪がついていない。P2からは本日のハイライトの細尾根急斜面のシール滑走。

白神岳・北峰(最高点1,235m)でシールを外した時、日本海に映る日差はもう夕日。そして本格滑走開始。鋭角のショートターンで急斜面を快調に下る。主稜線からのダウンヒルの後は細尾根アップダウンで、黙々と横登りや開脚で登り、狭い樹間を滑る。

駐車場で片付けている間に日が落ち、車のヘッドランプをつけて夜道の帰路につく。いやあなんとか明るいうちに駐車場に戻れてよかった。こうして、数年来の念願だった向白神岳への登頂を終える。天気が幸いした。感謝。

 やった、着いたぞ。あこがれの向白神岳頂上(三角点峰)にたどり着き、万感の思い。向白神岳の標識のちょうど奥に白神岳が位置している。
 向白神岳・北峰(三角点峰)からの情景:南には斜めの半円の形の中央峰。その頂上は刃渡り尾根で奥の南峰(向白神岳・最高点)につながっている。強烈だが美しさを備えた自然の造形美
向白神岳
 玄関岳の縦長三角形ピークの真正面にやってくる。頂上から半円の雪庇の坂に見える、造形物のような情景
摩須賀岳

 ダケカンバ

 主稜線からの滑走

 主稜線に上がったところで、谷向こうに向白神岳が現われる。その姿は実に力強く、切れ落ちた稜線の上は狭く見え、簡単にはたどり着けないように見えた。
  5:53 駐車場発  6:25 冬道分岐  8:22 蟶山(842m)10:03 主稜線10:33 白神岳(1,232m)11:08 玄関岳(1,135m)12:35 向白神岳・南峰(1,250m)最高点12:46 向白神岳・北峰(1,243m)頂上標識(三角点は雪の中)・・・登り6時間53分14:33 玄関岳15:29 白神岳15:54 白神岳・北峰(1,235m)滑走開始16:44 蟶山17:16 滑走終了17:58 夏道合流18:27 駐車場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合計12時間34分

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4年前、白神岳山頂で一泊したが天候悪化して行けなかった向白神岳に日帰りでトライ。天気さえ良ければ14時間くらいで往復できると考えた。テントを担いでいては滑りも楽しめない。ガイドでは白神から向白神への往復6時間、これに白神岳往復8時間で14時間となる。(結果的には、白神-向白神往復は5時間強、白神への登り5時間弱、下り3時間弱でクリアでき、全体で12時間半)。

夜明前、鯵ヶ沢から深浦に入った頃に明るくなり始め、カーブを曲がったときに白い白神岳が夜明けの空に見える。蟶山の尾根と隣の大峰岳の尾根が良く見える。白神岳の登山道に左折。車道の雪は消えていて、駐車場まで入る。

白神岳登山口駐車場でザックにスキーを装着して出発、6時。往復14時間とみて、ヘッドランプを二つもっていく。もう明るい。上の駐車場に着くと小型ジープが一台(この人は山中泊だったようで、途中で出会う)。最初は夏道を登り、途中でヤブの冬道に入る。4年前と比べて雪は少ない。分岐に冬道の標示は無いが、夏道側に登山道標識があり、冬道に入ったところに赤リボン。林の中を少し登ると固定ロープが張ってあり、ロープを伝って延々と登る。傾斜が緩むと残雪が現れる。雪に踏跡。やがて雪がびっしり着き、シールに切り替える。朝のアイスバーンは登りやすくはないが、歩くよりはいい。落葉のブナ林の樹間に朝日が射し、背後には日本海も見える。真っ青な海に岸辺、海の奥は霞んでいる。

8時半前に蟶山(まてやま)に着き、最初の休憩。コル1へは数十メートルの下り。シールでの滑走。コルには道標と夏道からの踏み跡があり、尾根の踏跡は太くなる。アップダウンのある尾根を淡々と歩く。主稜線に上がるまでに5つの小ピークとコルがあった。コル4あたりで下ってきた二人に会う。大きなザックを背負っていて、朝の9時過ぎだから、昨晩は泊まったのだろう。頂上トイレが登るに従い次第に大きくなっていく。M5とコル5を過ぎると木もまばらになり、青空の下の登りとなる。

真っ青な空に更に青い日本海。白い船。森林限界を超え、急斜面を登っていくと、頂上トイレが同じ高さに見えている。もうすぐ主稜線だ。曲がりくねったダケカンバ。そして主稜線に上がったところで、谷向こうに向白神岳が現われる。その姿は実に力強く、切れ落ちた稜線の上は狭く見え、簡単にはたどり着けないように見えた。本当に登れるんだろうか。やや不安。向白神岳の稜線にはたくさんのピークがある。どれが頂上だろう。そのうちの一つは岩木山が重なって見えているものだった。八甲田も見えており、天気は上々、白神に来て八甲田が見えたのも初めてだ。

主稜線を南に進み、緩く登った先が白神岳・北峰(最高点1,235m)。玄関岳が見えてくる。歩きながら向白神岳を良く観察すると、その稜線は遠目には狭いが傾斜はそれほどなく、玄関岳のところ以外は楽そうに思えてきた。だが、玄関岳はどうだろう。尖った頂上を越えていかなくてはならないのか。白神岳・北峰から少し下りとなり、緩い丘の向こうに頂上トイレ、その向こうに平凡なる白神の頂上。かすかに頂上の標識が見える。まず白神岳の頂上(三角点峰1,232m)に向かう。

白神山地の東部・南部の山々が広がる。玄関岳のはるか向こうに見えているのが尾太岳と田代岳?その右手にひときわ高いのが藤沢駒?その右手の双耳峰が二ツ森?その周辺に真瀬岳や小岳。同じようなピークがたくさんあって同定が難しい。1,000mを越えている泊岳は二ツ森の右奥。玄関岳のすぐ南にある目立つピークは摩須賀岳。トイレのところで最初の休憩。トイレの中は凍り付いている。避難小屋は屋根下まで埋まっているが、西側の1階入口が見えている。そして白神岳の頂上。丘にもなっていない平坦な頂上で、見えているのは案内標識で、頂上標識は埋まっていた。南への稜線が連なり、白いマイナーピークの先には日本海。そのはるかかなたに鳥海山が見えている。この南の主稜を歩くことはあるだろうか。

快晴だが、時々突風が吹き、ゴーグルをかける。白神頂上から斜めに下って玄関岳に向かう。避難小屋の屋根を見てぐんぐん下る。風で雪は乾いており、シールでも滑りは良い。それにしてもずいぶん下るなあ。ブッシュにリボンと、踏跡もあり、歩いている人はいるようだ。ただし、その先ではリボンや踏跡は見ず。

玄関岳手前のコルに滑り込み、そこから登り返し。玄関岳の稜線は左右両側ともに深い谷に切れ落ちていて、斜面はクラストしていたため、トラバースは難しい。尾根筋を頂上まで登る。北に見える笹内川の谷の奥は茶臼山のあたり。あの山の頂上から白神を見たこともあった。玄関岳の頂上付近までくると南のすさまじい谷が見える。それは追良瀬川の源流部。玄関岳頂上からは狭い尾根を慎重に下る。シールをつけたままでは厳しかったが、ワンターン毎のストップ・アンド・ゴーで急なところを下る。一回転倒したが、大過なし。いったん平坦なところに一気に滑り込み、雪庇をこえてコース中の最低鞍部に下る。振り返ると広い雪斜面に滑走トレースがまっすぐ長く付いている。

緩い尾根をゆっくり登ってP1を目指す。どんどん視界が広がり、白神岳から玄関岳の稜線が眼下になっていく。西と南には白神山地の最奥部が広がり、その中に摩須賀岳の鋭角峰も見えている。まばらにブッシュのあるP1頂上に到着すると、まったく形がちがう向白神岳が正面に見える。それはP3と合わせて三つのピークを横に並べたゆったりした稜線と白い大障壁の姿。向白神岳には三つの頂上ピークがあり、更にその手前にマイナーピークが三つ(P1、P2、P3)ある。それらを順に登って行くと、P3からは、向白神岳の三つのピークが目の高さに並んで見え、更に北峰の向こうに静御殿が続く。長い稜線だ。

急斜面を登ってP2の頂上に到着。ここは1,221mなのでもうP3や向白神も同じ高さに見える。東の谷向こうに低く見えているのは天狗岳だと気付く。あそこに登って向白神を見上げたのはもうだいぶ昔のことだ。P3の頂上が近づくと、向白神の三つのピークが目の高さに並んで見える。ここから見る向白神岳はとても穏やか。更に北峰の向こうに静御殿があるが、その時はどれが向白神の頂上か分からず、静御殿までは歩くつもりでいた。たどり着いたP3は雪庇のある長細い頂上。

東側が雪の急斜面になっている狭い南峰に到着。ここが白神山地での最高点、1,250m地点だが、雪の上には何もない。行く手には刃渡り尾根と鋭角に尖った二つのピーク。刃渡り尾根を進んで中央峰に到達。ここは南峰よりも更に小さなピークで、動き回ると東側の雪庇を踏み越えて落ちそうである。背後の刃渡り尾根に二本のトレース。行く手には東側がやや黒い北峰に、岩木山。

中央峰から刃渡り尾根を滑り降りると、北峰の手前はやや広くなっている。北峰に登る前にマップを取り出して確認。「頂上稜線の三つのピークの最後の峰に三角点と頂上標識」とあるが、たぶん三角点は雪に埋まっているだろう。別のガイドには頂上標識は今はない、と書かれていたが、北峰を登っていくと、すぐ手前のところに頂上標識を発見。正面に岩木山のある頂上のやや西よりに小さな標識が雪の上に立っている。文字は反対側に書いてあったが、「向白神岳」という文字を見て、スキーを外してその場に座り込む。やった、着いたぞ。あこがれの向白神岳頂上にたどり着き、万感の思い。向白神岳の標識のちょうど奥に白神岳が位置している。南には斜めの半円の形の中央峰。その頂上は刃渡り尾根で奥の南峰(向白神岳・最高点)につながっている。強烈だが美しさを備えた自然の造形美。ひっくりかえしたスキーにピッケル。極限の機能美。今日は晴れているが風が強く、シールに雪はついていない。北には静御殿とその先の大夫峰の南のピーク(吉ヶ峰)が見えている。近く見えるが、結構距離があり、キレットになっているようだ。

北峰に15分ほどいて、お茶も飲み干し、帰途につく。まだ太陽は真上にあり、13時に北峰発。こうなるとなんとも名残惜しいが、ゆっくりもしていられない。当初は向白神岳でシールを外して滑走の予定だったが、登り返しが多いためシールを付けたままで戻る。この日は晴れていたが風が強く、シールには全く雪がついていない。よって、シールはよく滑るのでショートターンも決めながらの旅となる。悪くない。P3に登り返し、向白神の三つのピークを改めて眺める。ふむ、あれが標識のある頂上だったのか、と北峰を同定する。P3からは、最初はシールのショートターンで急斜面をこなし、緩斜面は真直ぐ滑る。快調。すぐに滑走は終了し、つらい登返しでP2に到着。時々強風が吹き、両足を広げて踏ん張らないといけないくらいになるが、それほどでもない。P2からは本日のハイライトの細尾根急斜面のシール滑走。ここもショートターン1、2回でブレーキをかけ、その後はまっすぐ長く滑走。シールなので直滑降でもそんなにスピードはでない。登り返してブッシュのP1、軽いターンと直線で最低コルに着き、登り返しとなる。

1,122m峰までいってみたかったが、太陽が少し傾いてきており、止めて玄関岳に向かう。14時。雪庇を越え、往路のトレースを歩いていて、トレースに穴があく。おっと、気をつけないと。そして玄関岳の縦長三角形ピークの真正面にやってくる。頂上から半円の雪庇の坂に見える、造形物のような情景。そして最大斜度の登り。斜めの急斜面にはストップ・アンド・ゴーで下ったトレースがついている。シールはよく利いて、ほぼ真直ぐに玄関に登っていくが、最後に傾斜がきつくなって九十九折に登り、ようやく玄関岳頂上に到達。コルから30分。向白神の頂上がわずかに見えている。玄関岳頂上からは最初は緩い下り、それから急斜面となり、ストップ・アンド・ゴーでコルまで下る。その後は往路トレースに沿ってゆっくり登り返す。正面の頂上トイレの屋根が次第に大きくなり、やがてその左手に避難小屋が見え、稜線に到着。疲れていたが避難小屋の脇を通って白神岳頂上に向かう。白神岳頂上には新しい踏跡があり、誰かが来ていたようだ。

トイレに寄り、白神岳・北峰(最高点1,235m)でシールを外した時、日本海に映る日差はもう夕日。そこで寝転がって休憩。疲れた。そこから見る向白神は、P3の大きなピークの向こうに小さく南峰と北峰が見えている。そして向白神からは見えなかった大夫峰の頂上が確かにここからは見えているようだ。そして本格滑走開始、16時。赤テープを確認して蟶山の尾根に滑り込む。鋭角のショートターンで急斜面を快調に下る。ブッシュの出ている箇所は北側の斜面を回って通過し、木立の細尾根となる。M5に登り返したところで休憩3回目。急斜面を飛ばすとヒザが疲れる。寝転がって足を延ばすと疲れが抜けていき、いい気分。主稜線からのダウンヒルの後は細尾根アップダウンで、黙々と横登りや開脚で登り、狭い樹間を滑る。

蟶山へ登り返し、休憩後、最後のスキー滑走。すぐにおかしいと気づく。蟶山からの二つの下りの尾根の違うほうに下ってしまった。登り返さずにトラバースしてゆき、西南尾根を横切って往路トレースを発見。やれやれ。ブナ林の尾根の滑走は、急なのはともかく、ブナが密集していて滑りにくい。枝や幹をかわしながらのショートターンだが、ついに枝を避けきれなくて転倒。メガネに雪がついてしまい、ヘルメットをとってメガネを拭く。やれやれ。頃合いのところでスキーを外し、ザックに担ぐ。滑走終了17時半前。滑走時間は約1時間半。すっかり柔らかくなった雪にスキー靴が埋まりながら斜面を下り、いったんザックをおろしてストックもザックに取り付け、ロープ下降。17時半過ぎ。夏道に戻り、途中でフキノトウを少しとっていく。もう18時を過ぎ、あたりはだいぶ暗くなってきた。駐車場で片付けている間に日が落ち、車のヘッドランプをつけて夜道の帰路につく。いやあなんとか明るいうちに駐車場に戻れてよかった。こうして、数年来の念願だった向白神岳への登頂を終える。天気が幸いした。感謝。ウェスパ椿山という温泉に寄っていく。やや狭いが新しくて快適。

メモ: 白神山地世界遺産地域への入山

海岸から見る夜明けの白神岳

4年前、白神岳山頂で一泊したが天候悪化して行けなかった向白神岳に日帰りでトライ。天気さえ良ければ14時間くらいで往復できると考えた。テントを担いでいては滑りも楽しめない。ガイドでは白神から向白神への往復6時間、これに白神岳往復8時間で14時間となる。(結果的には、白神-向白神往復は5時間強、白神への登り5時間弱、下り3時間弱でクリアでき、全体で12時間半)。

早朝の登山口

夜明前、鯵ヶ沢から深浦に入った頃に明るくなり始め、カーブを曲がったときに白い白神岳が夜明けの空に見える。蟶山の尾根と隣の大峰岳の尾根が良く見える。白神岳の登山道に左折。車道の雪は消えていて、駐車場まで入る。

冬道分岐

白神岳登山口駐車場でザックにスキーを装着して出発、6時。往復14時間とみて、ヘッドランプを二つもっていく。もう明るい。上の駐車場に着くと小型ジープが一台(この人は山中泊だったようで、途中で出会う)。最初は夏道を登り、途中でヤブの冬道に入る。4年前と比べて雪は少ない。分岐に冬道の標示は無いが、夏道側に登山道標識があり、冬道に入ったところに赤リボン。林の中を少し登ると固定ロープが張ってあり、ロープを伝って延々と登る。傾斜が緩むと残雪が現れる。雪に踏跡。やがて雪がびっしり着き、シールに切り替える。朝のアイスバーンは登りやすくはないが、歩くよりはいい。落葉のブナ林の樹間に朝日が射し、背後には日本海も見える。真っ青な海に岸辺、海の奥は霞んでいる。

冬道分岐標示

冬道のロープ場

残雪斜面

蟶山頂上

8時半前に蟶山(まてやま)に着き、最初の休憩。コル1へは数十メートルの下り。シールでの滑走。コルには道標と夏道からの踏み跡があり、尾根の踏跡は太くなる。アップダウンのある尾根を淡々と歩く。主稜線に上がるまでに5つの小ピークとコルがあった。コル4あたりで下ってきた二人に会う。大きなザックを背負っていて、朝の9時過ぎだから、昨晩は泊まったのだろう。頂上トイレが登るに従い次第に大きくなっていく。M5とコル5を過ぎると木もまばらになり、青空の下の登りとなる。

蟶山頂上標識

鳥海山

日本海と蟶山

真っ青な空に更に青い日本海。白い船。森林限界を超え、急斜面を登っていくと、頂上トイレが同じ高さに見えている。もうすぐ主稜線だ。曲がりくねったダケカンバ。そして主稜線に上がったところで、谷向こうに向白神岳が現われる。その姿は実に力強く、切れ落ちた稜線の上は狭く見え、簡単にはたどり着けないように見えた。本当に登れるんだろうか。やや不安。向白神岳の稜線にはたくさんのピークがある。どれが頂上だろう。そのうちの一つは岩木山が重なって見えているものだった。八甲田も見えており、天気は上々、白神に来て八甲田が見えたのも初めてだ。

ダケカンバ

 向白神岳

向白神岳

向白神岳

尾太岳、藤里駒ヶ岳、二ツ森、泊岳

白神岳・最高点から白神岳・三角点峰

主稜線を南に進み、緩く登った先が白神岳・北峰(最高点1,235m)。玄関岳が見えてくる。歩きながら向白神岳を良く観察すると、その稜線は遠目には狭いが傾斜はそれほどなく、玄関岳のところ以外は楽そうに思えてきた。だが、玄関岳はどうだろう。尖った頂上を越えていかなくてはならないのか。白神岳・北峰から少し下りとなり、緩い丘の向こうに頂上トイレ、その向こうに平凡なる白神の頂上。かすかに頂上の標識が見える。まず白神岳の頂上(三角点峰1,232m)に向かう。

二ツ森、泊岳、森吉山

玄関岳と摩須賀岳

避難小屋、頂上トイレ、白神岳・三角点頂上

白神山地の東部・南部の山々が広がる。玄関岳のはるか向こうに見えているのが尾太岳と田代岳?その右手にひときわ高いのが藤沢駒?その右手の双耳峰が二ツ森?その周辺に真瀬岳や小岳。同じようなピークがたくさんあって同定が難しい。1,000mを越えている泊岳は二ツ森の右奥。玄関岳のすぐ南にある目立つピークは摩賀岳。トイレのところで最初の休憩。トイレの中は凍り付いている。避難小屋は屋根下まで埋まっているが、西側の1階入口が見えている。そして白神岳の頂上。丘にもなっていない平坦な頂上で、見えているのは案内標識で、頂上標識は埋まっていた。南への稜線が連なり、白いマイナーピークの先には日本海。そのはるかかなたに鳥海山が見えている。この南の主稜を歩くことはあるだろうか。

避難小屋

白神岳・三角点頂上

白神岳・三角点峰から四周

向白神岳

玄関岳

快晴だが、時々突風が吹き、ゴーグルをかける。白神頂上から斜めに下って玄関岳に向かう。避難小屋の屋根を見てぐんぐん下る。風で雪は乾いており、シールでも滑りは良い。それにしてもずいぶん下るなあ。ブッシュにリボンと、踏跡もあり、歩いている人はいるようだ。ただし、その先ではリボンや踏跡は見ず。

大峰岳と茶臼山

茶臼山

玄関岳から見る向白神岳と岩木山

玄関岳手前のコルに滑り込み、そこから登り返し。玄関岳の稜線は左右両側ともに深い谷に切れ落ちていて、斜面はクラストしていたため、トラバースは難しい。尾根筋を頂上まで登る。北に見える笹内川の谷の奥は茶臼山のあたり。あの山の頂上から白神を見たこともあった。玄関岳の頂上付近までくると南のすさまじい谷が見える。それは追良瀬川の源流部。玄関岳頂上からは狭い尾根を慎重に下る。シールをつけたままでは厳しかったが、ワンターン毎のストップ・アンド・ゴーで急なところを下る。一回転倒したが、大過なし。いったん平坦なところに一気に滑り込み、雪庇をこえてコース中の最低鞍部に下る。振り返ると広い雪斜面に滑走トレースがまっすぐ長く付いている。

玄関岳からの滑走

玄関岳

追良瀬川源流部

追良瀬川源流部

コルから玄関岳、白神岳、向白神岳

真瀬岳

二ツ森

タケガクラノボッチ

摩須賀岳

尾太岳と田代岳

ダケカンバ

緩い尾根をゆっくり登ってP1を目指す。どんどん視界が広がり、白神岳から玄関岳の稜線が眼下になっていく。西と南には白神山地の最奥部が広がり、その中に摩須賀岳の鋭角峰も見えている。まばらにブッシュのあるP1頂上に到着すると、まったく形がちがう向白神岳が正面に見える。それはP3と合わせて三つのピークを横に並べたゆったりした稜線と白い大障壁の姿。向白神岳には三つの頂上ピークがあり、更にその手前にマイナーピークが三つ(P1、P2、P3)ある。それらを順に登って行くと、P3からは、向白神岳の三つのピークが目の高さに並んで見え、更に北峰の向こうに静御殿が続く。長い稜線だ。

P1から向白神岳と岩木山

向白神岳と岩木山

P2から白神岳、摩須賀岳

白神岳

P2から見るP3と向白神岳・南峰

急斜面を登ってP2の頂上に到着。ここは1,221mなのでもうP3や向白神も同じ高さに見える。東の谷向こうに低く見えているのは天狗岳だと気付く。あそこに登って向白神を見上げたのはもうだいぶ昔のことだ。P3の頂上が近づくと、向白神の三つのピークが目の高さに並んで見える。ここから見る向白神岳はとても穏やか。更に北峰の向こうに静御殿があるが、その時はどれが向白神の頂上か分からず、静御前までは歩くつもりでいた。たどり着いたP3は雪庇のある長細い頂上。

天狗岳、高倉森、八甲田

八甲田

岩木山

P2/P3コルからP3、南峰、岩木山

白神岳と大峰岳、崩山

大峰岳と崩山

崩山

茶臼山

P3から見る向白神岳の頂上三峰・・・・・右手前より南峰1,250m、中央峰、北峰(三角点峰)1,243m

稜線の東側は西側よりもややなだらか。ここから見る向白神岳はとても穏やかに見える。三つの頂上のどれが一番高いのか、見た目には分からない

P3から白神岳

向白神岳・南峰

東側が雪の急斜面になっている狭い南峰に到着。ここが白神山地での最高点、1,250m地点だが、雪の上には何もない。行く手には刃渡り尾根と鋭角に尖った二つのピーク。刃渡り尾根を進んで中央峰に到達。ここは南峰よりも更に小さなピークで、動き回ると東側の雪庇を踏み越えて落ちそうである。背後の刃渡り尾根に二本のトレース。行く手には東側がやや黒い北峰に、岩木山。

向白神岳・南峰頂上

向白神岳・北峰(三角点峰)・・・・・復路時の映像

中央峰から刃渡り尾根を滑り降りると、北峰の手前はやや広くなっている。北峰に登る前にマップを取り出して確認。「頂上稜線の三つのピークの最後の峰に三角点と頂上標識」とあるが、たぶん三角点は雪に埋まっているだろう。別のガイドには頂上標識は今はない、と書かれていたが、北峰を登っていくと、すぐ手前のところに頂上標識を発見。

向白神岳・北峰から見る白神岳

正面に岩木山のある頂上のやや西よりに小さな標識が雪の上に立っている。文字は反対側に書いてあったが、「向白神岳」という文字を見て、スキーを外してその場に座り込む。やった、着いたぞ。あこがれの向白神岳頂上にたどり着き、万感の思い。向白神岳の標識のちょうど奥に白神岳が位置している。南には斜めの半円の形の中央峰。その頂上は刃渡り尾根で奥の南峰(向白神岳・最高点)につながっている。強烈だが美しさを備えた自然の造形美。ひっくりかえしたスキーにピッケル。極限の機能美。今日は晴れているが風が強く、シールに雪はついていない。

向白神岳・中央峰と南峰

ひっくりかえしたスキーとピッケル

静御前、吉ヶ峰、太夫峰

北には静御殿とその先の大夫峰の南のピーク(吉ヶ峰)が見えている。近く見えるが、結構距離があり、キレットになっているようだ。

太夫峰と直角峰 

向白神岳・北峰から四周

P3からの滑走

北峰に15分ほどいて、お茶も飲み干し、帰途につく。まだ太陽は真上にあり、13時に北峰発。こうなるとなんとも名残惜しいが、ゆっくりもしていられない。当初は向白神岳でシールを外して滑走の予定だったが、登り返しが多いためシールを付けたままで戻る。この日は晴れていたが風が強く、シールには全く雪がついていない。よって、シールはよく滑るのでショートターンも決めながらの旅となる。悪くない。P3に登り返し、向白神の三つのピークを改めて眺める。ふむ、あれが標識のある頂上だったのか、と北峰を同定する。P3からは、最初はシールのショートターンで急斜面をこなし、緩斜面は真直ぐ滑る。快調。すぐに滑走は終了し、つらい登返しでP2に到着。時々強風が吹き、両足を広げて踏ん張らないといけないくらいになるが、それほどでもない。P2からは本日のハイライトの細尾根急斜面のシール滑走。ここもショートターン1、2回でブレーキをかけ、その後はまっすぐ長く滑走。シールなので直滑降でもそんなにスピードはでない。登り返してブッシュのP1、軽いターンと直線で最低コルに着き、登り返しとなる。

P2からの滑走

P2・マイナーピークからの滑走

玄関岳

1,122m峰までいってみたかったが、太陽が少し傾いてきており、止めて玄関岳に向かう。14時。雪庇を越え、往路のトレースを歩いていて、トレースに穴があく。おっと、気をつけないと。そして玄関岳の縦長三角形ピークの真正面にやってくる。頂上から半円の雪庇の坂に見える、造形物のような情景。そして最大斜度の登り。斜めの急斜面にはストップ・アンド・ゴーで下ったトレースがついている。シールはよく利いて、ほぼ真直ぐに玄関に登っていくが、最後に傾斜がきつくなって九十九折に登り、ようやく玄関岳頂上に到達。コルから30分。向白神の頂上がわずかに見えている。玄関岳頂上からは最初は緩い下り、それから急斜面となり、ストップ・アンド・ゴーでコルまで下る。その後は往路トレースに沿ってゆっくり登り返す。正面の頂上トイレの屋根が次第に大きくなり、やがてその左手に避難小屋が見え、稜線に到着。疲れていたが避難小屋の脇を通って白神岳頂上に向かう。白神岳頂上には新しい踏跡があり、誰かが来ていたようだ。

玄関岳

玄関岳

避難小屋

白神岳・三角点峰から白神岳・最高点、向白神岳、岩木山

白神岳・最高点

トイレに寄り、白神岳・北峰(最高点1,235m)でシールを外した時、日本海に映る日差はもう夕日。そこで寝転がって休憩。疲れた。そこから見る向白神は、P3の大きなピークの向こうに小さく南峰と北峰が見えている。そして向白神からは見えなかった大夫峰の頂上が確かにここからは見えているようだ。そして本格滑走開始、16時。赤テープを確認して蟶山の尾根に滑り込む。鋭角のショートターンで急斜面を快調に下る。ブッシュの出ている箇所は北側の斜面を回って通過し、木立の細尾根となる。M5に登り返したところで休憩3回目。急斜面を飛ばすとヒザが疲れる。寝転がって足を延ばすと疲れが抜けていき、いい気分。主稜線からのダウンヒルの後は細尾根アップダウンで、黙々と横登りや開脚で登り、狭い樹間を滑る。

白神岳・最高点からの滑走

日本海と蟶山

蟶山へ登り返し、休憩後、最後のスキー滑走。すぐにおかしいと気づく。蟶山からの二つの下りの尾根の違うほうに下ってしまった。登り返さずにトラバースしてゆき、西南尾根を横切って往路トレースを発見。やれやれ。ブナ林の尾根の滑走は、急なのはともかく、ブナが密集していて滑りにくい。枝や幹をかわしながらのショートターンだが、ついに枝を避けきれなくて転倒。メガネに雪がついてしまい、ヘルメットをとってメガネを拭く。やれやれ。頃合いのところでスキーを外し、ザックに担ぐ。滑走終了17時半前。滑走時間は約1時間半。すっかり柔らかくなった雪にスキー靴が埋まりながら斜面を下り、いったんザックをおろしてストックもザックに取り付け、ロープ下降。17時半過ぎ。夏道に戻り、途中でフキノトウを少しとっていく。もう18時を過ぎ、あたりはだいぶ暗くなってきた。駐車場で片付けている間に日が落ち、車のヘッドランプをつけて夜道の帰路につく。いやあなんとか明るいうちに駐車場に戻れてよかった。こうして、数年来の念願だった向白神岳への登頂を終える。天気が幸いした。感謝。ウェスパ椿山という温泉に寄っていく。やや狭いが新しくて快適。

ウェスパ椿山