イドンナップ 雨の日高、花の稜線

北海道 日高  イドンナップ(標高点峰1,752m、三角点峰1,748m)、新冠富士1,667m   2016年7月16~18日(テント2泊)

(イドンナップ)北海道百名山

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日高の長い稜線を西から東に歩く。

新冠富士(1,667m)は丸い頂上の優しい姿、三角点峰(1,748m)は左右に尾根を広げた優美な姿、そしてイドンナップ(標高点峰1,752m)は力強いピラミッドの岩峰だった。

あいにくの霧雨模様だったが、稜線にはたくさん花があり、黄色い大きなキンバイソウ、薄紫のチシマフウロ、白い群落のウラジロナナカマド?などが咲き誇っていた。

最高点峰1,776mは東に、2.5km先に少し雲をかぶって見えていて、その間の稜線は穏やかそうに見える。しかし、こう体が濡れ、風が吹いているのでは無理だろう。帰路につく。

今回は早すぎたかと諦めていたウサギギクが一輪だけぽつんと咲いているのを帰路に発見。少し幸せな気分になる。

帰りに、若者二人が登ってきたのに会い、びっくり。この日の天気予報もやはり晴だったのだろう。彼らの他にも新冠富士頂上に立つ人影を数人、新冠富士からの下りで男性一人に会った。2泊3日の私に比べ、イドンナップであれ、新冠富士であれ、雨模様のコンディションにかかわらず、日帰り登山で頂上到達した彼らは本当に大変だったと思う。

イドンナップは個性の異なる頂稜をいくつも持ち、花も豊かなすばらしい山だった。一方、ルートは余り整備されておらず、到達は容易ではない。私の場合、余裕をもったテント泊でないと難しかったと思う。

イドンナップ(標高点峰1,752m)は力強いピラミッドの岩峰だった。
新冠富士(1,667m)は丸い頂上の優しい姿
三角点峰(1,748m)は左右に尾根を広げた優美な姿
キンバイソウ
チシマフウロ
ウラジロナナカマド?
トウゲブキ
エゾツツジ
エゾイソツツジ
チシマヒョウタンボク
ハナシノブ
D1 5:52 林道ゲート発 6:38 作業道(誤りだった) 9:17 登山道復帰10:36 P1(878m)第一岩場13:24 P5(1,140m)第二岩場16:42 干上がった沼17:24 広場・テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り11時間32分D2 4:26 テント発 5:59 新冠富士 7:51 三角点峰 8:50 イドンナップ・・・・・・・・・・・・・・・・登り4時間24分10:09 三角点峰11:36 新冠富士12:40 テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復8時間14分D3 4:48 テント発 5:46 干上がった沼 7:30 P5(1,140m)第二岩場 9:15 P1(878m)第一岩場10:46 林道終点11:52 林道ゲート着・・・・・・・・・・・・・・下り7時間4分

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(D1)

7月連休は北海道のみ晴予報となり、フェリーを予約。イドンナップに登る日がやってきた。この山には水場がないため、日帰りも考えたが、水7リットルを詰めて2泊3日で最高点1,776m峰を目指すプランにする。(イドンナップまで約8.5㎞、最高点まで更に2.5㎞)

初日はテントサイトまでの6km。登山口ゲートからの林道歩き2kmの間にやっかいな渡渉3回がある。このために持ってきたダブルスティックを使い、なんとか靴下まで濡らさずに渡る。ヨメナ、キオン?、イケマ?ヤマアジサイ、ヒヨドリバナを見る。

次は稜線(売山コル)までの斜面登りで、林道終点から沢沿いの道をたどると、九十九折の登山道が売山コルまで続いている。だが、往路では道を間違え、林道作業道に入ってしまい、途中でおかしいと気付き、登山道を探して笹斜面を登り、2時間半かけてようやく登山道に出る。このときに体力をかなり消耗してしまい、この日は大幅ペースダウンとなった。

売山コルからの稜線歩き(約4㎞)は笹ヤブに比べれば天国だが、踏み跡が笹に覆われ、小規模ながらアップダウンが多く、更に後半、歩きにくい笹斜面の長いトラバースがあり、楽ではなかった。あわててもしかたないので何度も昼寝しながらのんびり登る。白い花はヤマブキショウマ?ガマズミ(見事な群落)、シャクナゲなど。長い柄の先の丸い白い花はギョウジャニンニクだろうか。黄色い花はキスミレ?とキバナアキギリ。

二つの岩場(P1とP5)などには固定ロープがある。P7・1,404m峰の南側をトラバースした地点に干上がった沼があり、その先に狭いテント・スペースがあったが、更に進む。

地図に池塘が描かれているP8・1,450m峰のあたりにテントを張りたかったのだが、登山道はそこには登らず、その南側をトラバースしていくので、途中の倒木で埋まった広場のスペースにテント設営。もう夕方。のんびり野菜スープを作って食べ、寝る。曇っていて星空はなし。

(D2)

イドンナップ(標高点峰1,752m)まではあと2.5㎞だが、そこから更に東にある最高峰1,776m峰まで(プラス2.5㎞)行くつもりで、4時半出発。しかし体調は回復しておらず、ペースが上がらない。朝の空がまだ曇っていたのが救いに思えた。新冠富士への登りで最初の花斜面に遭遇。黄色い花はキンポウゲ、キンバイソウ、トウゲブキにエゾカンゾウ。キンポウゲより一回り大きいキンバイソウ(ヒダカキンバイ?)が目を引く。紫色のチシマフウロ?は本州以南のフウロとは違う花に見える。白い花はカラマツソウにエゾノシシウド?など。トウゲブキの園の中で最初の休憩。

まず新冠富士(1,667m)に到達。そこから見たイドンナップ三角点峰(1,748m)は左右に尾根を広げた優美な姿。これに対し、稜線途中で背後に見た新冠富士は丸い頂上の優しい姿。そして、三角点峰手前から見えてくるイドンナップ(標高点峰1,752m)は力強いピラミッドの岩峰だった。幌尻岳、カムエク、1,839m峰が黒いシルエットで見えていたが、三角点峰の手前で雨が降り出す。霧雨程度だが、笹やハイマツで体が濡れ、西風が吹くと体が冷えてくる。赤い小さな花はチシマヒョウタンボクというらしい。稜線では赤いタカネバラ?や岩場にびっしりのアオノツガザクラ。白いミツバオウレン、ツマトリソウにゴゼンタチバナの群落。黄色いキバナウツギ。紫の花はハナシノブ?赤紫はヨツバシオガマだろうか。

三角点峰頂上は狭い稜線上にあり、小さな空き地の左手前に二等三角点があった。その先でルートはいったん稜線から大きく東斜面に下るが、そこに二つ目の花斜面があった。崖のような急斜面一杯に広がる花畑。白いチングルマ、ウラジロナナカマド?エゾイソツツジ、赤いエゾツツジ?に黄色いキンバイソウなどなど。三角点峰からイドンナップまでは際どい岩場の通過が2ヶ所ほどあり、もう一度、稜線から大きく東斜面に下って登り返す。

辿りついたイドンナップ(標高点峰)には頂上標識がなく、ハイマツをこいで頂上東端まで行ってみるが、やはり頂上標識はない。たぶん風で飛ばされてしまったのだろう。イドンナップは個性の異なる頂稜をいくつも持ち、到達は容易ではない。私は辿りつけて良かった。このとき雨は止んでいたが、日高の稜線は雲をかぶっていた。

最高点峰1,776mは東に、2.5km先に少し雲をかぶって見えていて、その間の稜線は穏やかそうに見える。しかし、こう体が濡れ、風が吹いているのでは無理だろう。帰路につく。今回は早すぎたかと諦めていたウサギギクが一輪だけぽつんと咲いているのを帰路に発見。少し幸せな気分になる。

帰りに、若者二人が登ってきたのに会い、びっくり。この日の天気予報もやはり晴だったのだろう。彼らの他にも新冠富士頂上に立つ人影を数人、新冠富士からの下りで男性一人に会った。2泊3日の私に比べ、イドンナップであれ、新冠富士であれ、雨模様のコンディションにかかわらず、日帰り登山で頂上到達した彼らは本当に大変だったと思う。

私の体力はさっぱり回復せず、登りのときすぐに息が上がってしまう。この日の2.5km往復・5時間の計画に8時間以上かかっている。最高点峰まで行かないなら、この日のうちに下山、と思っていたが、この体調では無理だろう。もう一泊することにする。が、テントで寝ていると、雨が降り出した。

(D3)

天気予報は曇時々晴だったから、すぐに止むだろうと思った雨はその後も降り続け、止まなかった。水も食糧も十分にあるが、一晩中、雨音を聞かされ、憂鬱だった。憂鬱になることばかり考えてしまう・・・・・明日の朝も雨だろうか、雨の中でテントを畳まないといけないのか、などなど。夕食と朝食をテントの中で作って食べ、テントの中でザックを荷づくりし、乾いた替えソックスにコンビニ袋をかぶせ、いざテントの外に出ると、雨は上がっていた。よっしゃ!とはいえテントはズブ濡れだし、あらゆるものが湿っている。道に覆いかぶさる笹もズブ濡れなので、雨が降っているのと大差はない。濡れた下り斜面も神経を使ってしんどかった。こうして、テントから7時間で下山。

雨の日高、長い稜線のイドンナップは厳しく、変化に富み、花の美しい山だった。

林道ゲート前の標識

花1:ヨメナ(ヒナギク?)・・・・・登山口、林道

花2:キオン?・・・・・林道

花3:イケマ?・・・・・林道

渡渉点1・・・・・渡りにくい渡渉点が3ヶ所。スティックを使って渡る

花4:ヤマアジサイ・・・・・林道

花5:ヒヨドリバナ?・・・・・林道

間違えて登った作業道・・・・・渡渉点3のすぐ先

正しい登山道入口・・・・・林道終点にある。入口標識はなし。赤テープが一つ

売山コル手前の登山道・・・・・ここでヤブから登山道に合流。笹が覆いかぶさっているが、それまでのヤブに比べると天国。

間違えて登った植林斜面・・・・・売山コル付近より。正しい登山道は画面下の沢沿いから登る

売山・・・・・この山の右斜面から中央の吊尾根(売山コル)を手前に辿る


第二岩場・・・・・固定ロープあり。この上がP5・1,140m


花6:ガマズミ?の見事な群落・・・・・尾根

花7:シャクナゲ・・・・・尾根

花8:ヤマブキショウマ?・・・・・尾根

花9:ギョウジャニンニクの花?・・・・・尾根

花10:キスミレ?・・・・・尾根

花11:キバナアキギリ?・・・・・尾根

干上がった沼・・・・・P7・1,404m峰の南

狭いテントサイトあるが、先に進む

テント・・・・・P8・1,450m峰の南。広場があるが、倒木で埋まっており、スペースはあまりなし。水もない

私は7リットル持参。雨になったので結果的に余ったが、晴天だと余らなかったと思う

花斜面1・・・・・新冠富士への登りの途中。キンバイソウ、キンポウゲ、トウゲブキ、エゾカンゾウの黄色い花。

この他、白いカラマツソウ、エゾノシシウド?紫色のチシマフウロ

花12:キンポウゲ・・・・・花斜面1

花13:カラマツソウ・・・・・花斜面1

花14:エゾノシシウド?・・・・・花斜面1

花15:キンバイソウ・・・・・花斜面1

花16:トウゲブキ・・・・・花斜面1

花17:チシマフウロ・・・・・花斜面1

本州以西のフウロとはず違う感じ

花18:エゾカンゾウ

P8・1,450m峰・・・・・地図には池塘が記載されているが、この写真では確認できない。テントサイトはこの左下だったが、この1,450m峰の上にテントを張りたかった。

新冠富士・・・・・稜線上、三角点峰に向かう途中より。丸い頂上の優しい姿

新冠富士頂上・・・・・頂上標識あり。背景は三角点峰

幌尻岳・・・・・東方向、稜線の左

カムエク・・・・・東方向、稜線の右

1,839m峰・・・・・南東方向

チシマヒョウタンボク

花19:タカネバラ?・・・・・稜線。新冠富士付近、1ヶ所のみ

花20:アオノツガザクラ・・・・・稜線。ところどころ、岩場にびっしり咲いていた

花21:キバナウツギ・・・・・稜線。数ヶ所

花22:ミツバオウレン・・・・・稜線。ところどころに群落

花23:ハナシノブ?・・・・・稜線。紫のキキョウかシャジンのような花をいくつか見た

幌尻岳(左)と三角点峰

三角点峰・・・・・左右に尾根を広げた優美な姿

二等三角点・・・・・狭い尾根道の途中のひっこんだところにある

三角点峰の東斜面・・・・・登山道はこの斜面を下る(画面右)。下ったところが花斜面2

花斜面2・・・・・チングルマ、ウラジロナナカマド?、エゾイソツツジなどの白い花、黄色いのはキンポウゲ、赤いエゾツツジが混じる

花24:エゾツツジ・・・・・稜線。花斜面2、その他

花25:チングルマ・・・・・稜線。花斜面2、その他

花26:ウラジロナナカマド?・・・・・稜線。花斜面2、その他

花27:エゾイソツツジ?・・・・・稜線。花斜面2、その他

イドンナップ(標高点峰、1,752m)・・・・・「イドンナップ」として地図上に表記されている峰。力強いピラミッドの岩峰

イドンナップ頂上・・・・・頂上標識は無かった。たぶん風で飛ばされてしまったのだろう

イドンナップ頂上北端・・・・・ハイマツを漕いで北端まで行ってみたが、やはり頂上標識はなし。この先は崖になっている

最高点峰(1,776m)・・・・・「北海道百名山」には、イドンナップは「4kmほどもある長い頂稜を持ち、最高地点は北東端にあって1,776m」とある。(実際は、新冠富士からイドンナップまで2.5㎞、最高点峰まで更に2.5㎞)

このときは、最高点峰は少し雲をかぶって見えていて、その間の稜線は穏やかそうに見えた。しかし、雨で濡れた体が風で冷え、体調も良くなかったので、ここで引き返す

花28:ヨツバシオガマ・・・・・稜線。数か所

花29:ツマトリソウ・・・・・稜線。群落があり、たくさん咲いていたが、良い写真なし。これは日留賀岳のものの写真

花30:ゴゼンタチバナ・・・・・稜線に群落

花31:ウサギギク・・・・・稜線の帰りに一輪だけ発見。時期が早すぎたのだろう。私の好きな花なのでうれしかった

花32:オオウバユリ・・・・・車道(砂利林道)脇に数ケ所。巨大

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