富士山 にっぽん最高峰からの滑走
静岡県 3,776m 2013年5月25日
日本百名山
55
名山一人旅
私の登る山には名山と呼べない山もあるだろう。だが、登っているときに心ときめくものがあれば、それは私にとって名山だ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
噴火口の縁の雪原に出ると、正面に剣ヶ峰が立っている。大勢の人たちが往来しており、日本最高峰を目指す。
噴火口の縁を回って剣ヶ峰への最後の登り「馬の背」にかかる。もう降りていく人、追い越していく人。眼下には雲海が広がっている。
剣ヶ峰の最奥の最高地点から噴火口の全景を見下ろす。ここが富士山の最高地点だ。疲れ切っていたが、気分は最高。
その日本最高地点から滑走開始。まず噴火口に少し滑りこんで登り返し、火口の外まで歩き、大鳥居の下から雲海に向かって長大な雪渓のダウンヒル。
でこぼこがあって滑りにくく、傾斜があり、エッジを利かせにくいのでスピードが出やすい。でこぼこの上を足がしびれながらも滑りまくり、今季最後のスキーを楽しむ。
最後は、緩い下りをのんびり歩き、五合目駐車場に到着。白き天空から喧噪の下界へ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺はただ無心に登った。はるかなる白き峰しか見ていなかった
体は疲れ果て、太陽はまぶしく、汗がしたたり落ちた
それでも俺は登るのを止めなかった。上がらぬ足を騙し、惰性で登った
頂上に着いたとき、俺の頭はからっぽになった。すごく、いい気分だった。
俺は天空から下界を見下ろしていた。天空は穏やかだったが、去らねばならなかった
そこで俺はスキー板を履き、天空から滑った。
俺は風になっていた
(遥かなる白き峰)
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前日夕刻に富士宮口の五合目に到着。翌朝、4時半過ぎに起きるが、周囲ではもう出かけている物音。夜明け前だがまだ明るく、遠くは霞んでいる。出発した5時半にはちょうど日が射してくる。奥の階段ではなく、皆が通っている正面入口を、閉鎖ロープをくぐっていく。通行止め表示があるが、これだけの人が通るのは自己責任ということなのだろう。正面に8合目と思われる建物が見えているが、見た目ほど近くはない。最初は岩と砂の九十九折り。六合目小屋に着き、眼下に見えている低い山が愛鷹山であることに気づく。
東に歩いて行って宝永火口を見て、西に九十九折りの道を登り、残雪を踏んで新七合目の小屋。眼下には駐車場、六合目小屋、九十九折りを登る人たちが大勢見える。九十九折りを東に向かうと、今度は雪渓が見えてくる。そこを登っている人。追いついてきたスキーヤーに道を譲る。宝永火口がはるか眼下となり、八合目に到達。9時前。出発してから2時間半。建物の上の雪の上で最初の休憩。下界には雲が湧き、山々は見えなくなってきていた。
周囲には大勢が休憩しており、アイゼンを付けて出発すると、これまた大勢が広い雪斜面を登っている。もう降りてきている人もいる。九合目の建物の上で2回目の休憩。10時。8合目から1時間弱。やがて岩場となり、アイゼンではひどく歩きにくくなるが、あと少しと思って登り続ける。このあたりでもうへばっていて、岩場の登りで体力を使い果たす。
鳥居をくぐり、「頂上富士館」の広場に入り、噴火口の縁に出ると、正面に剣ヶ峰が立っている。雪原で3回目の休憩。大勢の人たちが往来しており、日本最高峰を目指す。剣ヶ峰に向かって歩き始めると噴火口の縁に出て、大きな噴火口が見下ろせる。その噴火口の斜面をボードを背負って登っている人がいる。噴火口の斜面にはたくさん滑走トレースがついており、はるか下を登っている人もいる。
噴火口の縁を回って剣ヶ峰への最後の登り「馬の背」にかかる。雪がついているので登りやすいが、へばり切っているので辛い登り。上にはスキーとボードの団体さんが登っている。ということは、頂上から滑れるのだろう。もう降りていく人、追い越していく人。徒歩の人の方が圧倒的に多い。登路の左側の手すりの向こうは何もない切れ落ちた空間で、眼下には雲海が広がっている。
頂上の大きな建物に着き、頂上標識(「日本最高峰、富士山剣ヶ峰」)の脇を通過し、最奥の最高地点に登る。小さなアンテナ・ドームのようなものがあり、噴火口の底と全景が見下ろせる。それに頑丈な観測所の展望台。ここが富士山の最高地点だ。ザックとスキーを下ろす。展望台から降りてきた人に頼んで写真を撮ってもらう。
20分ほど休んでからスキーを履いて滑走開始。スキーとボードのパーティがいて、噴火口に順番に滑り込んでいる。底まで滑るのではなく、頃合いで登り返せ、と言っている。できれば底まで滑り込みたいところだが、こうへばっていては無理。彼らの横を滑り降り、急斜面をトラバースして剣ヶ峰「馬の背」の基部に滑り降り、数十メートルを歩いて噴火口の縁に登り返す。
頂上雪原を富士館まで戻り、下りにかかる。案内の頂上マップで地形を確認。大鳥居をくぐって岩場を下る途中で右手にルートを外れ、雪のある最上部のところでザックを下ろして休憩。それにしても大勢の人たちが登ってくる。眼下の雪斜面いっぱいの人たち。その雪斜面のすぐ下は雲がおおい、その背後には青空。下界はたぶん曇なんだろう。頂上は快晴。
滑走2回目。大鳥居の下から雲海に向かって長大な雪渓のダウンヒル。でこぼこがあって滑りにくく、傾斜があり、エッジを利かせにくいのでスピードが出やすい。でこぼこの上を足がしびれながらも滑りまくり、今季最後のスキーを楽しむ。ここは上部の雪渓(雪渓1)で、8合目まで続いている。その途中で休憩6回目。9合目のあたり。人のいないところを選んでショートターン滑走を繰り返す。くたびれて、スキーをつけたままで横になって休む(休憩7回目)。8合目のすぐ上あたり。
8合目の建物の左側で雪渓1の末端に達し、スキーを担いで歩く。スキーとボードのパーティがいて、雪渓2では彼らが準備をしている間に、先に滑り始める。雪渓2の雪はかなり悪く、石も出ている。それら障害物を避けながらショートターンでゆっくり下降。パーティは元気に滑り降りてきて、追い越していくのもいたが、転倒しているのもいる。この雪ではスピードの出し過ぎは禁物。
もうこのあたりで歩こうかな、と思っていたら、パーティのうち二人がもっと下まで降りて行ったので、そこまで下る。が、石がたくさんあり、上で止めておくべきだったかもしれない。そこは新7合目のあたりで、左のすぐ下に宝永火口。すぐ下に6合目小屋が見えるのだが、雪渓2末端から6合目小屋までの1時間弱はものすごく長く感じた。たくさんの人たちが追い越して行った。
ようやく6合目小屋に着き、ベンチに横になって休む(8回目)。最後は、緩い下りをのんびり歩き、五合目駐車場に到着。16時。侵入禁止ロープを持ち上げ、通るのを手伝ってくれた人がいた。ツアーの人かな。駐車場の付近には、普段着姿の家族連れもいて、駐車場はやはり満車。開いた場所を場所取りするパーティ。白き天空から喧噪の下界へ。
メモ
2013年当時の実態として、登山口に「冬季閉鎖のため通行禁止」の表示があったが、5月下旬の晴天の日、大勢の登山者、スキーヤーが登っていた。
天候や雪の状況、アイゼンやピッケルなどの装備を確かめ、自分の技術で可能と判断して登ることにした。
現在、富士山は世界遺産地域となり、安全確保のためのガイドラインが制定され、冬季登山(10月~6月)の原則禁止、登山計画書の提出を義務付け。
夜明け
朝4時半過ぎに起きるが、周囲ではもう出かけている物音。夜明け前だがまだ明るく、遠くは霞んでいる。
五合目付近から見上げる早朝の富士山
出発した5時半にはちょうど日が射してくる。奥の階段ではなく、皆が通っている正面入口を、閉鎖ロープをくぐっていく。通行止め表示があるが、これだけの人が通るのは自己責任ということなのだろう。
青空と鳥居と八合目
正面に8合目と思われる建物が見えているが、見た目ほど近くはない。最初は岩と砂の九十九折り。六合目小屋に着き、眼下に見えている低い山が愛鷹山であることに気づく。
ガレの登り
宝永火口
東に歩いて行って宝永火口を見て、西に九十九折りの道を登り、残雪を踏んで新七合目の小屋。眼下には駐車場、六合目小屋、九十九折りを登る人たちが大勢見える。九十九折りを東に向かうと、今度は雪渓が見えてくる。そこを登っている人。追いついてきたスキーヤーに道を譲る。宝永火口がはるか眼下となり、八合目に到達。9時前。出発してから2時間半。建物の上の雪の上で最初の休憩。下界には雲が湧き、山々は見えなくなってきていた。
八合目からの登り
周囲には大勢が休憩しており、アイゼンを付けて出発すると、これまた大勢が広い雪斜面を登っている。もう降りてきている人もいる。九合目の建物の上で2回目の休憩。10時。8合目から1時間弱。やがて岩場となり、アイゼンではひどく歩きにくくなるが、あと少しと思って登り続ける。このあたりでもうへばっていて、岩場の登りで体力を使い果たす。
九合目からの登りと雲海
頂上浅間大社奥宮
鳥居をくぐり、「頂上富士館」の広場に入る。
剣ヶ峰
噴火口の縁に出ると、正面に剣ヶ峰が立っている。雪原で3回目の休憩。大勢の人たちが往来しており、日本最高峰を目指す。
剣ヶ峰と噴火口
剣ヶ峰に向かって歩き始めると噴火口の縁に出て、大きな噴火口が見下ろせる。その噴火口の斜面をボードを背負って登っている人がいる。噴火口の斜面にはたくさん滑走トレースがついており、はるか下を登っている人もいる。
馬の背の下の雲海
噴火口の縁を回って剣ヶ峰への最後の登り「馬の背」にかかる。雪がついているので登りやすいが、へばり切っているので辛い登り。上にはスキーとボードの団体さんが登っている。ということは、頂上から滑れるのだろう。もう降りていく人、追い越していく人。徒歩の人の方が圧倒的に多い。登路の左側の手すりの向こうは何もない切れ落ちた空間で、眼下には雲海が広がっている。
噴火口全景
頂上の大きな建物に着き、頂上標識(「日本最高峰、富士山剣ヶ峰」)の脇を通過し、最奥の最高地点に登る。小さなアンテナ・ドームのようなものがあり、噴火口の底と全景が見下ろせる。それに頑丈な観測所の展望台。ここが富士山の最高地点だ。ザックとスキーを下ろす。展望台から降りてきた人に頼んで写真を撮ってもらう。
剣ヶ峰に立つ私
「日本最高峰富士山剣ヶ峰」
最高地点の鉄塔
噴火口への滑走
20分ほど休んでからスキーを履いて滑走開始。スキーとボードのパーティがいて、噴火口に順番に滑り込んでいる。底まで滑るのではなく、頃合いで登り返せ、と言っている。できれば底まで滑り込みたいところだが、こうへばっていては無理。彼らの横を滑り降り、急斜面をトラバースして剣ヶ峰「馬の背」の基部に滑り降り、数十メートルを歩いて噴火口の縁に登り返す。
頂上の案内図
雪渓1の滑走、雲海に向かって滑る
頂上雪原を富士館まで戻り、下りにかかる。案内の頂上マップで地形を確認。大鳥居をくぐって岩場を下る途中で右手にルートを外れ、雪のある最上部のところでザックを下ろして休憩。それにしても大勢の人たちが登ってくる。眼下の雪斜面いっぱいの人たち。その雪斜面のすぐ下は雲がおおい、その背後には青空。下界はたぶん曇なんだろう。頂上は快晴。
滑走2回目。大鳥居の下から雲海に向かって長大な雪渓のダウンヒル。でこぼこがあって滑りにくく、傾斜があり、エッジを利かせにくいのでスピードが出やすい。でこぼこの上を足がしびれながらも滑りまくり、今季最後のスキーを楽しむ。ここは上部の雪渓(雪渓1)で、8合目まで続いている。その途中で休憩6回目。9合目のあたり。人のいないところを選んでショートターン滑走を繰り返す。くたびれて、スキーをつけたままで横になって休む(休憩7回目)。8合目のすぐ上あたり。
雪渓2の滑走、デコボコと小石の障害物滑走
8合目の建物の左側で雪渓1の末端に達し、スキーを担いで歩く。スキーとボードのパーティがいて、雪渓2では彼らが準備をしている間に、先に滑り始める。雪渓2の雪はかなり悪く、石も出ている。それら障害物を避けながらショートターンでゆっくり下降。パーティは元気に滑り降りてきて、追い越していくのもいたが、転倒しているのもいる。この雪ではスピードの出し過ぎは禁物。
眼下の駐車場
滑走終了
もうこのあたりで歩こうかな、と思っていたら、パーティのうち二人がもっと下まで降りて行ったので、そこまで下る。が、石がたくさんあり、上で止めておくべきだったかもしれない。そこは新7合目のあたりで、左のすぐ下に宝永火口。すぐ下に6合目小屋が見えるのだが、雪渓2末端から6合目小屋までの1時間弱はものすごく長く感じた。たくさんの人たちが追い越して行った。
青空と六合目からの下り
ようやく6合目小屋に着き、ベンチに横になって休む(8回目)。
登山口
最後は、緩い下りをのんびり歩き、五合目駐車場に到着。16時。侵入禁止ロープを持ち上げ、通るのを手伝ってくれた人がいた。ツアーの人かな。駐車場の付近には、普段着姿の家族連れもいて、駐車場はやはり満車。開いた場所を場所取りするパーティ。白き天空から喧噪の下界へ。
富士百景
笊ヶ岳から見る初冠雪の富士山(2007年10月20日映像)
空から見る雪化粧の富士山と宝永火口(2012年11月14日映像)
檜洞丸から見る青空と富士山(2004年11月22日映像)
越前岳から見る春の富士山(2007年5月23日映像)
中腹に見える宝永火口の左上の二つの雪渓を滑走