雨飾山     荒菅沢の滑走

長野県  雨飾山1,963m  2006年4月1日 

日本百名山

22

名山一人旅

私の登る山には名山と呼べない山もあるだろう。だが、登っているときに心ときめくものがあれば、それは私にとって名山だ

❄❄❄❄❄

視界が開けると、息をのむようなフトンビシと荒菅沢の光景が現われた。想像していたのと違い、高低差がものすごくある。

荒菅沢を渡り、左岸尾根を登ってフトンビシの上にある稜線(笹平)に向かうと、正面に雨飾山の頂上が見えてくる。

そして、雨飾山頂上の猫の耳に着く。左耳には頂上標識、右耳には石仏。右耳のほうが少し高そうだ。疲れ切ってたどり着いた石仏のある頂上には、確かに憩(いこい)があった。


かつて深田久弥が登った30mくらいしか離れていない二つの雨飾山の頂上峰、それに深田久弥が北から見た猫の耳は、P2から見た猫の耳とは違うようだ(*)。だが、私にとっては懐かしい猫の耳。

スキーを履いて滑走開始。フトンビシでは尻餅をついてしまったが、いつものリズムを思い出した荒菅沢では快調な滑走、しびれるような開放感。

雨飾山頂上の猫の耳で感じた確かな憩い、そしてしびれるような開放感を味わった荒菅沢の滑走は、一生忘れられない思い出。ただし、こんな新雪の日にフトンビシを滑るべきではなかったと思う。

❄❄❄❄❄

奈落の底を見下ろし

静かに、断崖絶壁の縁から滑り込む

パウダースノーを巻き上げ、アイスバーンに鋭く切り込み

軽やかに、風を切る

(ダウンヒル)

 荒菅沢から見る迫力満点のフトンビシ(布団菱)の岩峰・・・・・この岩峰の手前を左から右に横切り、右側を大きく回り込んで登り、岩峰の裏を右から左に頂上に向かう。帰路で右の谷を滑走。尻餅をついたが、リズムを取り戻してからは快調に滑走。ただし、こんな新雪の日にフトンビシを滑るべきではなかったと思う。
 高妻山から見る夏の雨飾山(2006年4月1日)頂上の右がフトンビシと荒菅沢
 笹平から見る雨飾山頂上(左端がP2)
 雨飾山頂上・・・・・手前が左耳、奥が右耳
雨飾山頂上・・・右耳・石仏と祠(左奥は左耳)
荒菅沢の滑走:フトンビシからの滑走ルート
 前年に登ったP2から見る雨飾山頂上、猫の耳(*)
  6:02 栃ノ樹亭駐車スペース発  8:01 大海川  9:41 中腹ブナ林11:28 荒菅沢右岸尾根(奥ワセ尾根)12:35 荒菅沢左岸尾根14:51 笹平(稜線)15:32 雨飾山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り9時間30分16:04 雨飾山発・滑走開始17:00 大海川出会18:21 栃ノ樹亭駐車スペース着・・・・・・合計12時間19分

==================================

小谷温泉・栃の樹亭前の駐車スペースを6時に出発。他に車数台。林道が除雪されていないので初めからシール・スキー。ずいぶん雪が積もっていてラッセル状態。トレースは全く無い。時間がかかる。青空に雨飾山が映えるが、今日登る北東尾根はずいぶん高く遠い。

林道から大海川沿いを進み、荒菅沢出合の手前で左斜面に取り付く。夏道とほぼ同じルート。中腹のブナ林に出ると、すぐ正面に荒菅沢右岸尾根があり(昨年はこれを登って雨飾山P2まで登ったが、)、今回は乗越す。この乗越の登りは細い枝尾根のラッセルとなり、何度もキックターンを繰り返して登ると雪のかけらがどんどん落ちて筋を作っている。3/4くらい登ったところで後続の人影を発見。中腹ブナ林をP2に向かっている。

荒菅沢右岸尾根に上がって尾根を乗越し、視界が開けると、息を呑むようなフトンビシ(布団菱)と荒菅沢の光景が広がる。想像していたのと全然違い、高低差がものすごくある光景。高度を落とさぬよう荒菅沢を横断して対岸に向かう。フトンビシからの滑降点が見えるが、かなり急。あんなところを滑れるだろうか。

荒菅沢左岸尾根に出ると風が吹いており、雪は締まって歩きやすいが、傾斜は次第に急になり、時間をかけて休みながらの登りとなる。アイゼンに代えようかと思ったが、シール(プラス・スキーアイゼン)のままで登る。稜線手前には雪庇が張り出しており、やや西寄りの雪庇を崩して越える。越えた先は真平な雪原で、少し先に笹平の標識があった。雨飾の頂上丘が正面に見える。

平坦な稜線を雨飾山の頂上に向かうとき、左にフトンビシの入口(落ち口)を二つ過ぎる。こいつは手強そうだ。雨飾山の頂上丘は急なアイスバーン斜面になっていて、スキーを担いでアイゼンで登り、頂上到達。

そこは前年に見た猫の耳の上で、右耳に石仏と祠が並んでおり、左耳に標識がある。左耳にザックを下ろし、その先まで歩いて南東の(前年に登った)P2を眺める。かなり低く見える。今度は右耳に行って石仏を拝む。右耳から見ると左耳より右耳の方が少し高そうだ。そして最後のコーヒーをテルモスから飲む。時間をかけ、疲れ切ってたどり着いた石仏のある頂上には、確かに憩(いこい)があった。


かつて深田久弥が登った30mくらいしか離れていない二つの雨飾山の頂上峰、それに深田久弥が北から見た猫の耳は、P2から見た猫の耳とは違うようだ(*)。だが、私にとっては懐かしい猫の耳。

スキーを履いて滑走開始し、頂上のアイスバーンを慎重に下る。フトンビシの最初の入口を過ぎ、比較的易しそうな二つ目の入口に滑り込む。このフトンビシ急斜面の滑走は雪が柔らかく、弱気になりすぎたためか、何度目かのターンで尻餅をついてしまい、20~30mくらいずり落ちる。立ちあがって滑れそうだったが無理はせず、両足を踏ん張ってバランスを取り、倒れないようにして止まる。

なんたる弱気!いつもの滑りを思いだせ!前傾のジャンプターンでリズムをとり、荒菅沢を下ると、快調な滑走、しびれるような解放感。雪斜面をウサギが走る。休止して、背後に見上げるフトンビシは夕日に黒々としていた。大海川に出会い、少し下ると、朝登ってきた箇所に出た。別パーティが来て太くなったトレースを発見。シールとスキーでゆっくり戻ると、栃ノ樹亭には明かり。

疲れ切ってたどりついた雨飾山頂上の二つの耳で感じた確かな憩い、そして、しびれるような開放感を味わった荒菅沢の滑走は、一生忘れられない思い出。フトンビシで尻もちをついてしまったのは教訓で、こんな新雪の日に滑るべきではなかったと思う。

栃ノ樹亭

小谷温泉・栃の樹亭前の駐車スペースを6時に出発。他に車数台。林道が除雪されていないので初めからシール・スキー。

栃ノ樹亭から見る雨飾山

ずいぶん雪が積もっていてラッセル状態。トレースは全く無い。時間がかかる。

雪の林道から見る雨飾山

青空に雨飾山が映えるが、今日登る北東尾根はずいぶん高く遠い。

頂上右手前の白ピークがP1、荒菅沢はその右奥(見えていない)

大海川のシール歩行

林道から大海川沿いを進み、荒菅沢出合の手前で左斜面に取り付く。夏道とほぼ同じルート。

雪原に上がる

中腹のブナ林に出ると、すぐ正面に荒菅沢右岸尾根があり(昨年はこれを登って雨飾山P2まで登ったが、)、今回は乗越す。この乗越の登りは細い枝尾根のラッセルとなり、何度もキックターンを繰り返して登ると雪のかけらがどんどん落ちて筋を作っている。3/4くらい登ったところで後続の人影を発見。中腹ブナ林をP2に向かっている。

フトンビシと荒菅沢

荒菅沢

荒菅沢の横断

荒菅沢右岸尾根に上がって尾根を乗越し、視界が開けると、息を呑むようなフトンビシ(布団菱)と荒菅沢の光景が広がる。想像していたのと全然違い、高低差がものすごくある光景。高度を落とさぬよう荒菅沢を横断して対岸に向かう。フトンビシからの滑降点が見えるが、かなり急。あんなところを滑れるだろうか。

荒菅沢左岸

荒菅沢左岸尾根上部

荒菅沢左岸尾根に出ると風が吹いており、雪は締まって歩きやすいが、傾斜は次第に急になり、時間をかけて休みながらの登りとなる。アイゼンに代えようかと思ったが、シール(プラス・スキーアイゼン)のままで登る。稜線手前には雪庇が張り出しており、やや西寄りの雪庇を崩して越える。越えた先は真平な雪原で、少し先に笹平の標識があった。雨飾の頂上丘が正面に見える。

笹平の標識

笹平(稜線)から見る雨飾山

雨飾の頂上丘が正面に見える。

(これは復路のときの写真で、滑走トレースが見える)

笹平から東の情景:焼山、金山、天狗原山

焼山

金山と天狗原山

(荒菅沢滑走時)

雨飾山の頂上丘

平坦な稜線を雨飾山の頂上に向かうとき、左にフトンビシの入口(落ち口)を二つ過ぎる。こいつは手強そうだ。雨飾山の頂上丘は急なアイスバーン斜面になっていて、スキーを担いでアイゼンで登り、頂上到達。

雨飾山頂上・・・左耳の頂上標識(奥は右耳)

そこは前年に見た猫の耳の上で、右耳に石仏と祠が並んでおり、左耳に標識がある。左耳にザックを下ろし、その先まで歩いて南東の(前年に登った)P2を眺める。かなり低く見える。今度は右耳に行って石仏を拝む。右耳から見ると左耳より右耳の方が少し高そうだ。そして最後のコーヒーをテルモスから飲む。時間をかけ、疲れ切ってたどり着いた石仏のある頂上には、確かに憩(いこい)があった。

P2から見る雨飾山頂上の猫の耳(2005年4月)

雨飾山頂上・・・右耳・石仏と祠(左奥は左耳)

頂上から北の情景:鬼ヶ面山、鋸岳、阿弥陀山、鉢山

鋸岳、阿弥陀山、鉢山

鬼ヶ面山

頂上から南東の情景: 雨飾山P2

北峰の先まで歩いて向かいのP2を眺める。かなり低く見える。

 頂上から東の情景:右下に雨飾山P2、中央:焼山、金山、天狗原山、その左:昼闇山

頂上から南の情景

大渚山に続く稜線

大渚山

頂上から見るフトンビシ入口

スキーを履いて滑走開始し、頂上のアイスバーンを慎重に下る。フトンビシの最初の入口を過ぎ、比較的易しそうな二つ目の入口に滑り込む。このフトンビシ急斜面の滑走は雪が柔らかく、弱気になりすぎたためか、何度目かのターンで尻餅をついてしまい、20~30mくらいずり落ちる。立ちあがって滑れそうだったが無理はせず、両足を踏ん張ってバランスを取り、倒れないようにして止まる。

滑走直前のフトンビシ入口

滑走直後のフトンビシ(中央左)

荒菅沢を下るとき、見上げるフトンビシは夕日に黒々としていた

なんたる弱気!いつもの滑りを思いだせ!前傾のジャンプターンでリズムをとり、荒菅沢を下ると、快調な滑走、しびれるような解放感。雪斜面をウサギが走る。休止して、背後に見上げるフトンビシは夕日に黒々としていた。大海川に出会い、少し下ると、朝登ってきた箇所に出た。別パーティが来て太くなったトレースを発見。シールとスキーでゆっくり戻ると、栃ノ木亭には明かり。

荒菅沢の滑走

フトンビシからの滑走ルート

大海川出合

大海川に出会い、少し下ると、朝登ってきた箇所に出た。別パーティが来て太くなったトレースを発見。シールとスキーでゆっくり戻ると、栃ノ木亭には明かり。

栃ノ樹亭の明かり

疲れ切ってたどりついた雨飾山頂上の二つの耳で感じた確かな憩い、そして、しびれるような開放感を味わった荒菅沢の滑走は、一生忘れられない思い出。フトンビシで尻もちをついてしまったのは教訓で、こんな新雪の日に滑るべきではなかったと思う。

(*)雨飾山の三つの猫の耳

一つ目の耳(左耳は笹平峰、右耳は雨飾山頂上)→誤りだと思う

一つ目の猫の耳は「日本百名山」と「深田久弥の山がたり」に出てくる北側から仰ぎ見た猫の耳で、これは「深田久弥の山がたり」に載せられた写真によれば、右耳は雨飾山頂上、左耳は笹平1,894mと思われる。→たぶんこの写真は誤りだと思う

「翌日、あざやかに晴れた。雨飾山はその広い肩の上に二つの耳を立てて、相変わらず気高く美しかった。・・・・二つのピークが睦まじげに寄り添ってすっきりと青空に立っていた。」(「深田久弥の山がたり」p42、雨飾山)「北側から仰いだ雨飾山はよかった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に、猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた。」(「日本百名山」p142、雨飾山)

「梶山新湯から鋸岳へ至る稜線(北方)から見る雨飾山の二つの耳」の写真。(「深田久弥の山がたり」p42、雨飾山)

二つ目の猫の耳(奥が祠のある最高点峰、手前が三角点峰)

二つ目の猫の耳は「日本百名山」で雨飾山の頂上に立った深田久弥が歩いた30mほど離れた猫の耳で、これは三角点峰と最高点峰(祠のある峰)と思われる。因みに、一つ目の猫の耳は600mくらい離れているので、二つ目の耳ではあり得ない。

「一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、三十米ほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかった、その二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった。」(「日本百名山」p144、雨飾山)

三つ目の猫の耳(左耳は雨飾山頂上、右耳は南東峰)・・・・・これは深田久弥の見た猫の耳ではない

三つ目の猫の耳は私がP2から見た冒頭の写真で、地形図と比較参照すると、これは二つ目の耳(最高点峰と三角点峰)ではなく、左耳は三角点峰、右耳は南東峰1,950m?(三角点峰の南東に突き出た峰)のようである。


コメントはこちらに:kawabe.goro@meizan-hitoritabi.com