雁森岳 白神山地の源流部

青森県  雁森岳987m、二ツ森1,086m  2016年3月26日~28日(テント2泊)

(雁森岳)青森110山

(二ツ森)日本の山1,000、秋田県の山

98

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雪の林道終盤の谷向こうに二ツ森が見える。前年も見た景観だが、今年はこれを越えていかねばならない。登りはだいぶきつそうだ。

林道終点から展望台に上がると岩木山が見えている。それは白いピラミッド。天を突くその姿は凛々しく、かつ美しい。昨年登った摩須賀岳、その途中にあるタキガワノボッチやタケガクラノボッチも見えていた。その時の苦労は、今はもう懐かしい思い出。前年と同じ場所にテント設営。

翌朝、急斜面を登り切ると広い緩斜面となり、二ツ森(西峰1,086m)頂上に着く。頂上標識の「二ツ森」の「二」のみ見えている。ガスに囲まれていて視界なし。

東峰1,080mでシールを外し、最初の滑走開始。右雪庇、左潅木の急な細尾根を下った先には最大の難所が待っており、横歩きで慎重に下り、下が広くなっているところで滑走する。広い緩斜面を快調に滑っていて、真っ白で良く見えない段差を飛び越してみると1m弱もある雪庇で、着地しきれず転倒。先の見えない段差には気を付けなければ・・・・・。時々青空。

最低コル773mでシールを貼り、最初の休憩をとる。もう半分来たから、ここからは楽だろう、と思ったのは間違いで、ここからが本番だった。細尾根のピークが7つもあり、高低差も50~100mある。トラバースしにくい地形をしていて、細尾根をほぼ忠実に登り降りした。青空が広がり始め、P6・889m峰への途中で摩須賀岳やタケガクラノボッチを見る。

潅木の立つP5・三町村界峰970mに立つと、雁森岳がすぐ先に見える。岩木川源流部側から見る雁森岳は緩いピークが並んだ穏やかな顔をしていたが、その裏側にすさまじく強烈な姿が隠されていた。

P3・970mからは緩い尾根続きだが、北には岩木川の源流があり、その向こうに岩木山が天を衝く鋭鋒の姿で見えていた。北東方向には青鹿岳や尾太岳。ここまで来ないとみることのできない白神の絶景。真下に見える雪に埋まった谷から岩木川が始まり、曲がりくねって水を集め、津軽平野に流れていく。その彼方に白いピラミッドの岩木山。それらは、悠久の時の流れの中で、訪問者を待っている。

P2・970mに至ると、南側が切れ落ちて岩がむき出しになっているすさまじい景観が現われる。ようやくあと数十メートル先に見えた雁森岳の頂上は南側が絶壁、北側も潅木の急傾斜という細尾根の上にあった。うわっ、こいつはダメかもしれないな、と覚悟したが、幸い雪は切れ目なくつながっていた。

恐る恐る歩いた最後の数十m、細尾根のアップダウンを横歩きで慎重に進み、雁森岳頂上に辿りつく。ついに着いた。青空が広がった狭い頂上に座り、短い時間だったが、白神の絶景に囲まれた至福の時を過ごす。

真下に展開する粕毛川支流の源流部の景観はすさまじい。北には岩木川の源流部があり、雁森岳は、二つの源流部という、究極の自然美に挟まれたきわどい細尾根の上にあった。

細尾根のアップダウンを横歩きで慎重に進み、雁森岳頂上に辿りつく。ついに着いた。青空が広がった狭い頂上に座り、短い時間だったが、白神の絶景に囲まれた至福の時を過ごす。
潅木の立つP5・三町村界峰970mに立つと、雁森岳がすぐ先に見える。岩木川源流部側から見る雁森岳は緩いピークが並んだ穏やかな顔をしていたが、その裏側にすさまじく強烈な姿が隠されていた。
林道終点から展望台に上がると岩木山が見えている。それは白いピラミッド
岩木川源流部と岩木山
粕毛川支流の源流部:秋田県側・粕毛川支流の源流部と874m峰・・・・・・・・・・・・雁森岳頂上付近より。南側絶壁の下の情景。
頂上の手前に巾の狭い切り立った小ピークがあり、これまたすさまじい眺め
P2からの滑走
最終日、除雪終了地点の先で道端にフキノトウを発見。ゲートまでたくさん咲いていて、袋にたくさん採る。春の味。
D1 6:41 林道ゲート発 7:52 シール歩行(最初の橋) 9:02 林道分岐17:05 林道終点(テント設営)・・・・・・・・・・登り9時間53分D2 7:01 テント発 8:22 二ツ森(西峰)1,087m 8:34 ニツ森・東峰1,080m、滑走 9:28 最低コル・773m11:47 三町村界峰・970m12:51 雁森岳987m・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り5時間50分13:08 雁森岳発14:13 三町村界峰、滑走15:29 最低コル、シール⒙:09 二ツ森・東峰⒙:18 ニツ森(西峰)、滑走19:41 テント着・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復(含休憩)12時間40分 D3 7:42 林道終点(テント)発11:04 林道分岐11:18 滑走終了(二つ目の橋)12:13 林道ゲート着・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下り4時間31分

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D1

北海道から帰った翌週、天気予報がはまり白神・雁森岳に向かう。金曜朝にキャベツとマイタケを刻み、荷物を揃えておき、夜のうちに道の駅みねはまに入る。食事をしながらDVDを見ていたが、北海道の疲れがまだ残っていて、いつの間にか寝込んでいた。エンジンを切って寝る。

翌朝は小雪交じり。携帯天気予報は晴時々曇。シールを貼り、ホットレモンを作って出かける。フロントガラスには雨粒だが、青空が見えてきた。うっすらと雪の積もった車道を走って林道ゲート前。昨年は車道にあった雪は今年はなし。工事もやっていないようなので、ゲート脇のスペースに駐車。ザックとスキーを担いで歩き始める。この頃はまだ元気で、この日のうちに二ツ森頂上まで行こうと思っていた。「二ツ森入口まで10.7km」の表示。だが、北海道では雷電まで9kmを登っている。前年にスキーを履いた橋までくるが、まだ先まで除雪されている。薄く雪が積もっているのでここからシールにするが、帰りは雪が消えていて、歩いて下った。気温が上がってきたので上着を脱ぎ、レイングローブにする。しばらく登ると二つ目の橋があり、除雪はそこまで。林道の雪の上を進む。カーブミラーの自分の姿を写してみるが、いまいち。テントを詰めたザックの他にサブザックにゴーグルとネックウォーマーを入れてきたが、どちらも必須だった。

山腹を右に登っていた林道が左に向きを変える地点で最初の休憩。標高321m。小雪がちらつき風が冷たいのでレインウェアを着込む。1時間ほど歩いて二度目の休憩。このあたりからシールに雪がくっつきだす。空が晴れだし、白神岳、向白神岳、真瀬岳が見えてくる。この林道を登っていて、定番の景観。30分ほどで三回目の休憩。小雪が降っており、ザックに座っての休憩だが、10分くらい仮眠していたようだ。スキーがゲタになり、一歩一歩がしんどくなる。中間点付近にある案内標識を過ぎる。前年は雪が高く積もっていた奥の橋。今年は余り積もっていない。山間部への登り。青空が広がり、日が照ってくるが、休憩を頻繁にとるようになる。この日は朝からウォークマンとワイヤレススピーカーを聞きながら歩く。

高度が上がり、日本海が見えてくる。もう夕日のようになっていて美しかったが、もう15時近かった。右ヘアピンカーブのところでショートカット。雪の林道終盤の谷向こうに二ツ森が見える。前年も見た景観だが、今年はこれを越えていかねばならない。登りはだいぶきつそうだ。「白神山地世界遺産」の木柱の立つ広場。ここでもう16時を過ぎていることが分かり、前年と同じところにテントを張ることにする。左ヘアピンカーブのところで二度目のショートカット。林道終点目前で最後の休憩。もうだいぶへたっていた。

林道終点から展望台に上がると岩木山が見えている。昨年よりも晴れていて、見事。それは白いピラミッド。天を突くその姿は凛々しく、かつ美しい。稜線の更に先まで進むと、昨年登った摩須賀岳、その途中にあるタキガワノボッチやタケガクラノボッチも見えていた。その時の苦労は、今はもう懐かしい思い出。前年と同じ場所にテント設営。今回はキャベツ&マイタケにソーセージを4セット。最初の夜は野菜スープにドライフード、カフェオレにコーヒーを飲む。野菜スープを作るのに、ジェットボイルに夏用の食器も持ってきた。間違って夏用ガスバーナーも持ってきてしまったが、食器がもう一つあれば便利と気づく。ウォークマンを鳴らしっぱなし。厚めのマットにダウン上下で防寒体制万全だったが、寒くなかったのは気温が低くなかったためだろう。

D2

翌朝は5時起き。外はガスで風もある。晴れるんだろうか。もっと早く起きるべきだったが、4時間くらいで着くだろうと思っていた。ホットレモンを作り、野菜スープを食べる。テルモスも二つ持ってくるべきだった。軽いザックで出発。今回ピッケルを持ってこなかったのは、単に忘れたため。持ってくるべきだった。ニツ森はガスで全く見えない。風があるので、レインウェアの上下にスキーウェア上を着込み、ネックウォーマーをしていくが、正解だった。一応、夏道にある三町界峰に寄っていく。山頂には二ツ森への案内。晴間も見え、最初はレイングローブだったが、吹雪いてきたのでゴーグルをかけ、スキーグローブをはめる。コルまで滑り降り、そこから二ツ森への登り。急だが、細尾根というほどでもない。左に雪庇、右に潅木斜面の狭い斜面の九十九折り登り。急斜面を登り切ると広い緩斜面となり、登っていくと黒い金具の頭。その先で二ツ森(西峰1,086m)頂上に着く。頂上標識の「二ツ森」の「二」のみ見えている。ガスに囲まれていて視界なし。

夏道のない領域に進む。といっても緩やかな雪尾根を歩いて東峰1,080mに到達。まだ視界なし。ここでシールを外し、最初の滑走開始。東峰の先は急な下りで細尾根となっていて、1060m地点で左斜面に滑り込むが、細尾根はまっすぐ東に続いているのが見えたので、雪庇を越えて斜面に滑り込み、細尾根に戻る。右雪庇、左潅木の急な細尾根を下った先には最大の難所が待っており、左がえぐれた絶壁、右も絶壁。細すぎて滑走できないので横歩きで慎重に下り、下が広くなっているところで滑走する。意外に帰りの登りの時はシールで比較的簡単に登れた。その後は支尾根が複雑に張り出した地形になっていて、何度もGPSを見ながら方角を定める。尾根続きの950m地点の支尾根は間違いで、左(北)のデブリ斜面に滑り込み、北東の支尾根に滑り込む。広い緩斜面を快調に滑っていて、真っ白で良く見えない段差を飛び越してみると1m弱もある雪庇で、着地しきれず転倒。先の見えない段差には気を付けなければ・・・・・。時々青空。

次第に視界が広がりだし、行く手に三つ並んだ地味なピークが見える。最奥の右端が雁森岳のようだ。最後のコブを少し登り返して滑り込んだ最低コルには標高表示773mがあった。シールを貼り、最初の休憩をとる。1本だけもってきたポカリを半分飲む。暖かくなってきていた。ゴーグルをしまい、手袋もレイングローブに替えるが、ウェアとネックウォーマーは替えず。もう半分来たから、ここからは楽だろう、と思ったのは間違いで、ここからが本番だった。細尾根のピークが7つもあり、高低差も50~100mある。トラバースしにくい地形をしていて、細尾根をほぼ忠実に登り降りした。行く手のピークは三つほど見えていたが、その手前にも五つ、合計七つのピークを越えた八つ目が雁森岳だった。最初のP8・820m、次のP7・840mには普通に登れる。高度があがり、背後に二ツ森が巨大に見えている。あれを登り返さねばならないのは憂鬱だ。コル820mに下る頃、青空が広がり始め、次の標高記載のあるP6・889m峰への途中で摩須賀岳やタケガクラノボッチを見る。P6・889m峰へは急坂だったが、まだ雪はシールに着かず、比較的楽に登れる。北に見えるのは赤石川の源流部。

P5・三町村界峰970mへは急坂で、しかも晴れてきたためかシールに雪がついてきて全く登りにくくなる。途中でスキーを外して雪を落とす。急傾斜が終わり、しばらく緩斜面を登り、潅木の立つP5・三町村界峰970mに立つと、雁森岳がすぐ先に見える。岩木川源流部側から見る雁森岳は緩いピークが並んだ穏やかな顔をしていたが、その裏側にすさまじく強烈な姿が隠されていた。穏やかな雁森岳の向こうに見えているのは小岳と藤里駒ヶ岳。左下(北東)には岩木川源流西側があり、正面の大きな半円形は青鹿岳のようだ。次のP4・960mの尾根は三町村界峰までの尾根の南側に並行して少し離れており、急斜面をコル930mまで滑り降りて登り返しとなる。コルからの登り返しは心配したほどでもなく、P4・960mに到達。緩い傾斜の滑走でコル940m。緩い登り返しだが、林が混んでいて視界はいまいち。P3・970mに着くと秋田側の視界が開け、919m峰の東に、まったく目立たない大臼岳と双耳の長場内岳が見える。P3・970mからは緩い尾根続きだが、少し下って振り返り見るP3は北側が雪庇で切れ落ちたすごい姿。北には岩木川の源流があり、その向こうに岩木山が天を衝く鋭鋒の姿で見えていた。北東方向には青鹿岳や尾太岳。ここまで来ないとみることのできない白神の絶景。真下に見える雪に埋まった谷から岩木川が始まり、曲がりくねって水を集め、津軽平野に流れていく。その彼方に白いピラミッドの岩木山。それらは、悠久の時の流れの中で、訪問者を待っている。

P2・970mに至ると、南側が切れ落ちて岩がむき出しになっているすさまじい景観が現われ、北側も灌木の急斜面になっている雪の細尾根の先に、雁森岳の頂上があった。うわっ、こいつはダメかもしれないな、と覚悟したが、幸い雪は切れ目なくつながっていた。南側が切れ落ちた細尾根の少し北側を歩き、いったん横歩きで下り、雁森岳頂上に向かうが、南の眼下には粕毛川支流の源流部が真っ白な岩壁を立てている。こいつはすごい。頂上の手前に巾の狭い切り立った小ピークがあり、これまたすさまじい眺め。その先の雁森岳頂上も三角形の頂点だが、手前の小ピークよりは巾がある。細尾根のアップダウンを横歩きで慎重に進み、雁森岳頂上に辿りつく。GPSで三角点位置にいることを確認し、ザックを下ろし、スキーを外し、腰を下ろす。青空が広がり、能代港と男鹿半島が見えている。ついに着いた。狭い頂上に座り、短い時間だったが、白神の絶景に囲まれた至福の時を過ごす。東の稜線の先に見えている大きな半円形が青鹿岳。南東には白い小岳とひときわ高い藤里駒ヶ岳、東の遠方に見える小さな三角形はたぶん尾太岳。白神山地東端の鋭鋒。南には、ずんぐりした大臼岳、双耳の長場内岳、外れに小さく水沢山。どれも初めて見るアングルの周囲の山々は新鮮かつ穏やかに見えたが、真下に展開する粕毛川支流の源流部の景観はすさまじい。その右岸は山の反面が真っ白な絶壁の874m峰。北には岩木川の源流部があり、雁森岳は、二つの源流部という、究極の自然美に挟まれたきわどい細尾根の上にあった

もう13時になっていたので早々に帰路に着く。往路で6時間だから、復路も6時間位としてテント帰着は19時を過ぎるだろう。P2まで慎重に戻り、そこでシールを外して滑走。潅木の中を滑ってすぐにコルに着くが、スキーを外すと左足が股まで埋まる。南側の雪の底が薄くなっていたのだが、なんとか北側に起き上がり、シールを貼る。歩くのも楽ではなさそうだ。P3からはまっすぐシール滑走、P4からの下りは急だが広めの無木立なのでシールのキックターンで下る。P5・三町村界峰からは二ツ森が見えるが、高く聳えていて、あそこに登り返さねばと思うと憂鬱。再びシールを外して滑走。最初は緩斜面、そして笹の出ている急斜面。行く手眼下に889m峰。P6からの滑走では、朝は堅かった雪がモナカになっていて、大きくターンして下る。P7には放射谷があってトラバースしにくそうなので、シールを貼って登る。P8は頂上南斜面をトラバース。一箇所少し登り返して最低コル。三度目の休憩でテルモスを飲み干し、飲み物がなくなったが、この後少しのどが渇いた。ヘッドランプをザックから出してウェストバッグに入れておく。

二ツ森への登り返し約1.5㎞、高低差300m。最初は緩いが長い登り。デブリのたまった谷を登り、難所の細尾根の下930m地点に出る。スキーの下りでは苦労したが、シールの登りは思ったよりも楽で、まだ明るいうちに細尾根の上970m地点に到達。残り500m、高低差100mを淡々と登る。薄暗くなり、藤里駒ヶ岳を見た頃、細尾根1060m地点を過ぎ、景色の撮影は減る。暗くなったニノ森東峰に着いて四度目の休憩。ヘッドランプを点ける。西峰まではわずかだったが、西峰でシールを外し、もう一度休憩。もうへばっていた。二ノ森からの滑走は冷えて中途半端に堅いモナカ雪に苦しみ、疲れていて細かいジャンプターンができないので、ストップ&ゴーのキックターン滑走となる。ターンして加重しないとブレーキがかからないので、余計な距離を横に滑ってしまう。ようやくコルに着き、休憩。三町界峰まで約400m、高低差45mに40分近くかかっているのは、コルで横になって仮眠したからだと思う。いくらでも寝れそうだった。

コルからテントまでは無限に長く感じたが、テントに着き、シールの雪を落とし、へこんでいたテントの底に雪を足し、テントに入る。疲れていたが下着を着替え、シュラフに入ってとりあえず寝る。夢にまで見たテントの中の睡眠だった。ウォークマンを鳴らしていたが、もうバッテリーが切れかけていた。深夜に起きてトイレに外に出て、夕食。野菜スープを翌朝の分と二杯食べるが、腹の調子が悪くなる。

D3

明るくなってからゆっくり起き、湯を沸かしてホットレモンとカフェオレを作る。外は前日と同じガス。風も冷たいが、ネックウォーマーなし、冬手袋、レインウェア上下の上にスキーウェア上。テントには霜がついて堅く、なかなか収納バッグに入らなかった。重いザックをしょい、シールを貼ったスキーで林道終点広場に下り、ショートカット地点までの緩い登りを歩く。前日の疲れはだいぶとれていた。ショートカット地点に着き、シールを外して滑走開始。ザックが重く、林間急斜面のジャンプターンは怖いが、さりとてキックターンも難しいので、横歩き気味にバックして何度も右に滑り、緩斜面になってからジャンプターンで林道に入る。ビンディングを外して滑り歩き。白神山地木柱のある広場から、沢形に滑り込んでショートカット。ひどいモナカ雪になっていて、右滑り+横歩き戻りで黙々と下る。

林道に合流し、しばらくはスキーが滑る。山間部を抜けて滑り歩きになったあたりで最初の休憩。この後、小雪が降ってきたが、いつの間にか小雪が雨に変わっていて、スキーウェアの上にレインウェアを着込み、タフに持ち替える。林道の雪が部分的に融けて通りにくくなっているところ数ヶ所に遭遇。ようやくトラバース区間から下降区間に至り、そこからは快調に滑る。林道の雪が消えている箇所があったが、GPSで見るとまだ下まで距離があるので、スキーのまま歩く。また雪が現われ、滑る。そして除雪終了地点に到着。下から二つ目の橋。まだ滑れるかもしれないので、スキーを肩に担ぐが、すぐにシートラーゲンに替える。道端にフキノトウを発見。ゲートまでたくさん咲いていて、袋にたくさん採る。春の味。

黙々と歩き、時々フキノトウを取りながら、ついに林道ゲートに到着。ゆっくり片付け、車に乗り込んで出発。八森の湯っこランドに向かう。湯っこランドに着いて、まずトイレにはいって気分爽快になってから、熱い湯につかる。至福のひととき。前日に山の中で夢に見た情景が実現。シャンプーがないので携帯用のを使う。じいさんが一人、後から入ってくる。そういえば去年もいたなあ。おじいさん、元気かい。今年の白神もよかったぜ、と心の中でつぶやく。最近、髪が薄くなってハゲてきたので、洗った髪にヘアクリームをつける。顔と足にスキンクリームを塗るのは、いつものルーチン。風呂からあがり、日本海沿岸を北上していくと、青空に日本海が美しい。何度も海を写す。

白神岳展望所に寄るが、海は快晴なのに山は雲をかぶっていた。山の天気は難しい。マックスバリューに寄って買い物し、道の駅深浦に入り、スーパーボウルの後半を見ながら食事。サシミと天丼とうどん。幸せだ。道の駅を出たときにはもう夕日(少し仮眠をとったかもしれない)。暗い空に白い岩木山。

東奥日報・青森110山には雁森岳について、「登山道はなく、残雪期に雪の上を歩くのが一般的。秋田県側から青秋林道をたどり、6時間かかって県境。雪の上にテントを張り、翌朝、まず二ツ森に登り、そこから県境の尾根を東に進む。尾根は実際には様々な方向に枝分かれしており、場所を確認しながら進んで、テントから4時間で山頂に着く。(09年4月5日)」とあり、私の記録よりもずいぶん早い。林道11㎞は本来、6時間くらいで歩かないといけないのだろう。テントから雁森岳まで6.2㎞を4時間というのも相当に早いと思うが、単に私が遅すぎるだけなのだろう。

D1

林道ゲート・・・・・・・・・・・・ここから林道終点(二ツ森入口)まで約11㎞

北海道から帰った翌週、天気予報がはまり白神・雁森岳に向かう。金曜朝にキャベツとマイタケを刻み、荷物を揃えておき、夜のうちに道の駅みねはまに入る。食事をしながらDVDを見ていたが、北海道の疲れがまだ残っていて、いつの間にか寝込んでいた。エンジンを切って寝る。

二ツ森まで10.7km標示

翌朝は小雪交じり。携帯天気予報は晴時々曇。シールを貼り、ホットレモンを作って出かける。フロントガラスには雨粒だが、青空が見えてきた。うっすらと雪の積もった車道を走って林道ゲート前。昨年は車道にあった雪は今年はなし。工事もやっていないようなので、ゲート脇のスペースに駐車。ザックとスキーを担いで歩き始める。この頃はまだ元気で、この日のうちに二ツ森頂上まで行こうと思っていた。「二ツ森入口まで10.7km」の表示。だが、北海道では雷電まで9kmを登っている。前年にスキーを履いた橋までくるが、まだ先まで除雪されている。薄く雪が積もっているのでここからシールにするが、帰りは雪が消えていて、歩いて下った。気温が上がってきたので上着を脱ぎ、レイングローブにする。しばらく登ると二つ目の橋があり、除雪はそこまで。林道の雪の上を進む。カーブミラーの自分の姿を写してみるが、いまいち。テントを詰めたザックの他にサブザックにゴーグルとネックウォーマーを入れてきたが、どちらも必須だった。

最初の橋・・・・往路ではここからシールで登る。復路では雪が解けていて、この先にある二つ目の橋で滑走終了し、歩く

雪の林道

山腹を右に登っていた林道が左に向きを変える地点で最初の休憩。標高321m。小雪がちらつき風が冷たいのでレインウェアを着込む。1時間ほど歩いて二度目の休憩。このあたりからシールに雪がくっつきだす。空が晴れだし、白神岳、向白神岳、真瀬岳が見えてくる。この林道を登っていて、定番の景観。30分ほどで三回目の休憩。小雪が降っており、ザックに座っての休憩だが、10分くらい仮眠していたようだ。スキーがゲタになり、一歩一歩がしんどくなる。中間点付近にある案内標識を過ぎる。前年は雪が高く積もっていた奥の橋。今年は余り積もっていない。山間部への登り。青空が広がり、日が照ってくるが、休憩を頻繁にとるようになる。この日は朝からウォークマンとワイヤレススピーカーを聞きながら歩く。

真瀬岳

最後の橋

白神岳

白神岳と玄関岳

林道と青空と雲

向白神岳と真瀬岳・・・・・・林道から見る向白神岳(中央奥)と真瀬岳(右ピーク)

日本海

高度が上がり、日本海が見えてくる。もう夕日のようになっていて美しかったが、もう15時近かった。右ヘアピンカーブのところでショートカット。雪の林道終盤の谷向こうに二ツ森が見える。前年も見た景観だが、今年はこれを越えていかねばならない。登りはだいぶきつそうだ。「白神山地世界遺産」の木柱の立つ広場。ここでもう16時を過ぎていることが分かり、前年と同じところにテントを張ることにする。左ヘアピンカーブのところで二度目のショートカット。林道終点目前で最後の休憩。もうだいぶへたっていた。

二ツ森・・・・・・・・・・・・林道終点手前より。中央左奥が頂上(西峰)。東峰はその奥で見えていない。

三町界峰945mと二ツ森

白神山地木標

泊岳

林道終点

林道終点から展望台に上がると岩木山が見えている。昨年よりも晴れていて、見事。それは白いピラミッド。天を突くその姿は凛々しく、かつ美しい。稜線の更に先まで進むと、昨年登った摩須賀岳、その途中にあるタキガワノボッチやタケガクラノボッチも見えていた。その時の苦労は、今はもう懐かしい思い出。前年と同じ場所にテント設営。今回はキャベツ&マイタケにソーセージを4セット。最初の夜は野菜スープにドライフード、カフェオレにコーヒーを飲む。野菜スープを作るのに、ジェットボイルに夏用の食器も持ってきた。間違って夏用ガスバーナーも持ってきてしまったが、食器がもう一つあれば便利と気づく。ウォークマンを鳴らしっぱなし。厚めのマットにダウン上下で防寒体制万全だったが、寒くなかったのは気温が低くなかったためだろう。

林道終点にある展望台・・・・・・・・・・・・この下にテント設営

岩木山

ここから見る岩木山は白いピラミッド。天を突くその姿は凛々しく、かつ美しい。

岩木山と二ツ森

摩須賀岳

タケガクラノボッチ・・・・・・・・・・・・中央奥の平らな山。摩須賀岳への途中にある。林道終点展望台付近より

タキガワノボッチ・・・・・・・・・・・・中央左ピークが最高点。摩須賀岳へは、この最高点を通らず、中央斜面から右の斜面を越えていく。林道終点展望台付近より。

夕日

D2

三町界峰945m

翌朝は5時起き。外はガスで風もある。晴れるんだろうか。もっと早く起きるべきだったが、4時間くらいで着くだろうと思っていた。ホットレモンを作り、野菜スープを食べる。テルモスも二つ持ってくるべきだった。軽いザックで出発。今回ピッケルを持ってこなかったのは、単に忘れたため。持ってくるべきだった。ニツ森はガスで全く見えない。風があるので、レインウェアの上下にスキーウェア上を着込み、ネックウォーマーをしていくが、正解だった。一応、夏道にある三町界峰に寄っていく。山頂には二ツ森への案内。晴間も見え、最初はレイングローブだったが、吹雪いてきたのでゴーグルをかけ、スキーグローブをはめる。コルまで滑り降り、そこから二ツ森への登り。急だが、細尾根というほどでもない。左に雪庇、右に潅木斜面の狭い斜面の九十九折り登り。急斜面を登り切ると広い緩斜面となり、登っていくと黒い金具の頭。その先で二ノ森(西峰1,086m)頂上に着く。頂上標識の「二ツ森」の「二」のみ見えている。ガスに囲まれていて視界なし。

二ツ森への登り・・・・・・・・・・・・次第に広く傾斜も緩くなっていく

二ツ森(西峰1,086m)頂上・・・・・・・・・・・・頂上標識の「二ツ森」の「二」のみ見えている

二ツ森・東峰1,080mc頂上

夏道のない領域に進む。といっても緩やかな雪尾根を歩いて東峰1,080mに到達。まだ視界なし。ここでシールを外し、最初の滑走開始。東峰の先は急な下りで細尾根となっていて、1060m地点で左斜面に滑り込むが、細尾根はまっすぐ東に続いているのが見えたので、雪庇を越えて斜面に滑り込み、細尾根に戻る。右雪庇、左潅木の急な細尾根を下った先には最大の難所が待っており、左がえぐれた絶壁、右も絶壁。細すぎて滑走できないので横歩きで慎重に下り、下が広くなっているところで滑走する。意外に帰りの登りの時はシールで比較的簡単に登れた。その後は支尾根が複雑に張り出した地形になっていて、何度もGPSを見ながら方角を定める。尾根続きの950m地点の支尾根は間違いで、左(北)のデブリ斜面に滑り込み、北東の支尾根に滑り込む。広い緩斜面を快調に滑っていて、真っ白で良く見えない段差を飛び越してみると1m弱もある雪庇で、着地しきれず転倒。先の見えない段差には気を付けなければ・・・・・。時々青空。

二ツ森・東峰からの滑走

二ツ森・東峰からの滑走

細尾根の下降

二ツ森・東峰からの滑走・・・・・・・・下部は支尾根が入り組んだ複雑な地形をしており、GPSで方角を確認しながら下る

最低コル773m

次第に視界が広がりだし、行く手に三つ並んだ地味なピークが見える。最奥の右端が雁森岳のようだ。最後のコブを少し登り返して滑り込んだ最低コルには標高表示773mがあった。シールを貼り、最初の休憩をとる。1本だけもってきたポカリを半分飲む。暖かくなってきていた。ゴーグルをしまい、手袋もレイングローブに替えるが、ウェアとネックウォーマーは替えず。もう半分来たから、ここからは楽だろう、と思ったのは間違いで、ここからが本番だった。細尾根のピークが7つもあり、高低差も50~100mある。トラバースしにくい地形をしていて、細尾根をほぼ忠実に登り降りした。行く手のピークは三つほど見えていたが、その手前にも五つ、合計七つのピークを越えた八つ目が雁森岳だった。最初のP8・820m、次のP7・840mには普通に登れる。高度があがり、背後に二ツ森が巨大に見えている。あれを登り返さねばならないのは憂鬱だ。コル820mに下る頃、青空が広がり始め、次の標高記載のあるP6・889m峰への途中で摩須賀岳やタケガクラノボッチを見る。P6・889m峰へは急坂だったが、まだ雪はシールに着かず、比較的楽に登れる。北に見えるのは赤石川の源流部。

P5・三町村界峰970m・・・・・・・・・・・・鰺ヶ沢町、西目屋村、藤里町の三町村の境界にある。P6・889m峰付近より

タケガクラノボッチ

白神岳、タケガクラ、摩須賀岳、向白神岳、太夫峰

摩須賀岳・・・・・・・・・・・・三町村界峰付近より

男鹿半島

三町村界峰970m

水沢山

泊岳、二ツ森

二ツ森・南峰1,070mと東峰1,080m・・・・・・・・・・・・二ツ森東峰の右手前に見える細尾根がルート。二ツ森・西峰1,087mは東峰の裏になっていて見えていない。

雁森岳・・・・・・・・・・・・三町村界峰より。右ピークがP2、左奥の白いピークが小岳、その右奥が藤里駒ヶ岳

P5・三町村界峰970mへは急坂で、しかも晴れてきたためかシールに雪がついてきて全く登りにくくなる。途中でスキーを外して雪を落とす。急傾斜が終わり、しばらく緩斜面を登り、潅木の立つ三町村界峰970mに立つと、雁森岳がすぐ先に見える。岩木川源流部側から見る雁森岳は緩いピークが並んだ穏やかな顔をしていたが、その裏側にすさまじく強烈な姿が隠されていた。穏やかな雁森岳の向こうに見えているのは小岳と藤里駒ヶ岳。左下(北東)には岩木川源流西側があり、正面の大きな半円形は青鹿岳のようだ。次のP4・960mの尾根は三町村界峰までの尾根の南側に並行して少し離れており、急斜面をコル930mまで滑り降りて登り返しとなる。コルからの登り返しは心配したほどでもなく、P4・960mに到達。緩い傾斜の滑走でコル940m。緩い登り返しだが、林が混んでいて視界はいまいち。P3・970mに着くと秋田側の視界が開け、919m峰の東に、まったく目立たない大臼岳と双耳の長場内岳が見える。P3・970mからは緩い尾根続きだが、少し下って振り返り見るP3は北側が雪庇で切れ落ちたすごい姿。北には岩木川の源流があり、その向こうに岩木山が天を衝く鋭鋒の姿で見えていた。北東方向には青鹿岳や尾太岳。ここまで来ないとみることのできない白神の絶景。真下に見える雪に埋まった谷から岩木川が始まり、曲がりくねって水を集め、津軽平野に流れていく。その彼方に白いピラミッドの岩木山。それらは、悠久の時の流れの中で、訪問者を待っている。

藤里駒ヶ岳

小岳

岩木川源流部西側と青鹿岳

三町村界峰、青鹿岳、雁森岳

P4から岩木川源流東側、岩木山、青鹿岳

尾太岳

青鹿岳、尾太岳、小岳、藤里駒ヶ岳、、雁森岳、P3、P4

P4への登り

P4

P4、岩木山、青鹿岳、雁森岳、P3

雁森岳

P3頂上

P2・970mに至ると、南側が切れ落ちて岩がむき出しになっているすさまじい景観が現われ、北側も灌木の急斜面になっている雪の細尾根の先に、雁森岳の頂上があった。うわっ、こいつはダメかもしれないな、と覚悟したが、幸い雪は切れ目なくつながっていた。南側が切れ落ちた細尾根の少し北側を歩き、いったん横歩きで下り、雁森岳頂上に向かうが、南の眼下には粕毛川支流の源流部が真っ白な岩壁を立てている。こいつはすごい。頂上の手前に巾の狭い切り立った小ピークがあり、これまたすさまじい眺め。その先の雁森岳頂上も三角形の頂点だが、手前の小ピークよりは巾がある。細尾根のアップダウンを横歩きで慎重に進み、雁森岳頂上に辿りつく。GPSで三角点位置にいることを確認し、ザックを下ろし、スキーを外し、腰を下ろす。青空が広がり、能代港と男鹿半島が見えている。ついに着いた。狭い頂上に座り、短い時間だったが、白神の絶景に囲まれた至福の時を過ごす。東の稜線の先に見えている大きな半円形が青鹿岳。南東には白い小岳とひときわ高い藤里駒ヶ岳、東の遠方に見える小さな三角形はたぶん尾太岳。白神山地東端の鋭鋒。南には、ずんぐりした大臼岳、双耳の長場内岳、はずれに小さく水沢山。どれも初めて見るアングルの周囲の山々は新鮮かつ穏やかに見えたが、真下に展開する粕毛川支流の源流部の景観はすさまじい。その右岸は山の反面が真っ白な絶壁の874m峰。北には岩木川の源流部があり、雁森岳は、二つの源流部という、究極の自然美に挟まれたきわどい細尾根の上にあった

P3から雁森岳

長場内岳と大臼岳

・長場内岳:奥の双耳峰の右ピーク

・大臼山:長場内岳の手前の平らなピーク

P3・970mに着くと秋田側の視界が開け、919m峰の東に、まったく目立たない大臼岳と双耳の長場内岳が見える。P3・970mからは緩い尾根続きだが、少し下って振り返り見るP3は北側が雪庇で切れ落ちたすごい姿。

岩木川源流部と岩木山

その北に岩木川源流部の南端と岩木山が見えている。雁森岳頂上稜線から見る岩木山と岩木川源流部。ここまで来ないとみることのできない白神の絶景。

真下に見える雪に埋まった谷から岩木川が始まり、曲がりくねって水を集め、津軽平野に流れていく。その彼方に白いピラミッドの岩木山。それらは、悠久の時の流れの中で、訪問者を待っている。

天を突く岩木山

P3の北側

P2

二ツ森、P3.三町村界峰、、岩木山、青鹿岳、P2

雁森岳細尾根と頂上

P2から見る雁森岳頂上・・・・・・・・・・・・南側が絶壁、北側も潅木の急傾斜という細尾根の先、中央奥に灌木に隠れているのが雁森岳頂上。この威容は忘れられない。

横歩き

粕毛川支流の源流部

秋田県側・粕毛川支流の源流部と874m峰・・・・・・・・・・・・雁森岳頂上付近より。南側絶壁の下の情景。

雁森岳・頂上手前ピーク

雁森岳頂上(左奥)手前にあるピーク

・・・・・・・・・・・・左の背中側を慎重に越える

粕毛川支流の源流部と雁森岳頂上尾根・・・・・頂上手前ピーク手前より

粕毛川支流の源流部と雁森岳頂上尾根・・・・・頂上直前より

雁森岳・頂上部

雁森岳頂上

雁森岳頂上・・・・・・・・・・・・狭い頂上に座り、短い時間だったが、白神の絶景に囲まれた至福の時を過ごす。

小岳と藤里駒ヶ岳

小岳(左)と藤里駒ヶ岳・・・・・・・・・・・・雁森岳頂上付近より

青鹿岳

雁森岳頂上から四周

P2からの滑走

もう13時になっていたので早々に帰路に着く。往路で6時間だから、復路も6時間位としてテント帰着は19時を過ぎるだろう。P2まで慎重に戻り、そこでシールを外して滑走。潅木の中を滑ってすぐにコルに着くが、スキーを外すと左足が股まで埋まる。南側の雪の底が薄くなっていたのだが、なんとか北側に起き上がり、シールを貼る。歩くのも楽ではなさそうだ。P3からはまっすぐシール滑走、P4からの下りは急だが広めの無木立なのでシールのキックターンで下る。P5・三町村界峰からは二ツ森が見えるが、高く聳えていて、あそこに登り返さねばと思うと憂鬱。再びシールを外して滑走。最初は緩斜面、そして笹の出ている急斜面。行く手眼下に889m峰。P6からの滑走では、朝は堅かった雪がモナカになっていて、大きくターンして下る。P7には放射谷があってトラバースしにくそうなので、シールを貼って登る。P8は頂上南斜面をトラバース。一箇所少し登り返して最低コル。三度目の休憩でテルモスを飲み干し、飲み物がなくなったが、この後少しのどが渇いた。ヘッドランプをザックから出してウェストバッグに入れておく。

P3からのシール滑走

P4からの滑走

P5・三町村界峰970mからの滑走

P6・889mからの滑走・・・・・・・・・・・・シールを外しての滑走だが、雪がモナカ気味でひっかかり、滑りにくい

コル820m、シール

P7・840mからの滑走

デブリの谷

二ツ森への登り返し約1.5㎞、高低差300m。最初は緩いが長い登り。デブリのたまった谷を登り、難所の細尾根の下930m地点に出る。スキーの下りでは苦労したが、シールの登りは思ったよりも楽で、まだ明るいうちに細尾根の上970m地点に到達。残り500m、高低差100mを淡々と登る。薄暗くなり、藤里駒ヶ岳を見た頃、細尾根1060m地点を過ぎ、景色の撮影は減る。暗くなったニノ森東峰に着いて四度目の休憩。ヘッドランプを点ける。西峰まではわずかだったが、西峰でシールを外し、もう一度休憩。もうへばっていた。二ノ森からの滑走は冷えて中途半端に堅いモナカ雪に苦しみ、疲れていて細かいジャンプターンができないので、ストップ&ゴーのキックターン滑走となる。ターンして加重しないとブレーキがかからないので、余計な距離を横に滑ってしまう。ようやくコルに着き、休憩。三町界峰まで約400m、高低差45mに40分近くかかっているのは、コルで横になって仮眠したからだと思う。いくらでも寝れそうだった。

二ツ峰への登り返しし・・・・・・・・・・・・下部複雑地形か細尾根に上がる付近

P6・889m・・・・・・・・・・・・二ツ森への登り返し、細尾根に上がる付近より

細尾根の登り

夕闇の滑走

コルからテントまでは無限に長く感じたが、テントに着き、シールの雪を落とし、へこんでいたテントの底に雪を足し、テントに入る。疲れていたが下着を着替え、シュラフに入ってとりあえず寝る。夢にまで見たテントの中の睡眠だった。ウォークマンを鳴らしていたが、もうバッテリーが切れかけていた。深夜に起きてトイレに外に出て、夕食。野菜スープを翌朝の分と二杯食べるが、腹の調子が悪くなる。

D3

霧の林道終点

明るくなってからゆっくり起き、湯を沸かしてホットレモンとカフェオレを作る。外は前日と同じガス。風も冷たいが、ネックウォーマーなし、冬手袋、レインウェア上下の上にスキーウェア上。テントには霜がついて堅く、なかなか収納バッグに入らなかった。重いザックをしょい、シールを貼ったスキーで林道終点広場に下り、ショートカット地点までの緩い登りを歩く。前日の疲れはだいぶとれていた。ショートカット地点に着き、シールを外して滑走開始。ザックが重く、林間急斜面のジャンプターンは怖いが、さりとてキックターンも難しいので、横歩き気味にバックして何度も右に滑り、緩斜面になってからジャンプターンで林道に入る。ビンディングを外して滑り歩き。白神山地木柱のある広場から、沢形に滑り込んでショートカット。ひどいモナカ雪になっていて、右滑り+横歩き戻りで黙々と下る。

おくのだいばし

林道に合流し、しばらくはスキーが滑る。山間部を抜けて滑り歩きになったあたりで最初の休憩。この後、小雪が降ってきたが、いつの間にか小雪が雨に変わっていて、スキーウェアの上にレインウェアを着込み、タフに持ち替える。林道の雪が部分的に融けて通りにくくなっているところ数ヶ所に遭遇。ようやくトラバース区間から下降区間に至り、そこからは快調に滑る。林道の雪が消えている箇所があったが、GPSで見るとまだ下まで距離があるので、スキーのまま歩く。また雪が現われ、滑る。そして除雪終了地点に到着。下から二つ目の橋。まだ滑れるかもしれないので、スキーを肩に担ぐが、すぐにシートラーゲンに替える。道端にフキノトウを発見。ゲートまでたくさん咲いていて、袋にたくさん採る。

フキノトウ

黙々と歩き、時々フキノトウを取りながら、ついに林道ゲートに到着。ゆっくり片付け、車に乗り込んで出発。八森の湯っこランドに向かう。湯っこランドに着いて、まずトイレにはいって気分爽快になってから、熱い湯につかる。至福のひととき。前日に山の中で夢に見た情景が実現。シャンプーがないので携帯用のを使う。じいさんが一人、後から入ってくる。そういえば去年もいたなあ。おじいさん、元気かい。今年の白神もよかったぜ、と心の中でつぶやく。最近、髪が薄くなってハゲてきたので、洗った髪にヘアクリームをつける。顔と足にスキンクリームを塗るのは、いつものルーチン。風呂からあがり、日本海沿岸を北上していくと、青空に日本海が美しい。何度も海を写す。

下山後の日本海(八森付近)・・・・・・・・・・・・最終日の下山後、山は雲をかぶっていたが、海の上は晴れて美しかった

白神岳展望所に寄るが、海は快晴なのに山は雲をかぶっていた。山の天気は難しい。マックスバリューに寄って買い物し、道の駅深浦に入り、スーパーボウルの後半を見ながら食事。サシミと天丼とうどん。幸せだ。道の駅を出たときにはもう夕日(少し仮眠をとったかもしれない)。暗い空に白い岩木山。

下山後の日本海・・・・・・・・・・・・深浦付近

東奥日報・青森110山には雁森岳について、「登山道はなく、残雪期に雪の上を歩くのが一般的。秋田県側から青秋林道をたどり、6時間かかって県境。雪の上にテントを張り、翌朝、まず二ツ森に登り、そこから県境の尾根を東に進む。尾根は実際には様々な方向に枝分かれしており、場所を確認しながら進んで、テントから4時間で山頂に着く。(09年4月5日)」とあり、私の記録よりもずいぶん早い。林道11㎞は本来、6時間くらいで歩かないといけないのだろう。テントから雁森岳まで6.2㎞を4時間というのも相当に早いと思うが、単に私が遅すぎるだけなのだろう。

下山後の夕日・・・・・・・・・・・・深浦付近