空木岳 中央アルプス、太田切の沢音

長野県  空木岳2,864m、南駒ヶ岳2,841m  2008年8月9日~12日(テント2泊、小屋1泊)

(空木岳)日本百名山

(南駒ヶ岳)日本二百名山

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駒ヶ根の大きな無料駐車場で観光客といっしょにバスに乗り、檜尾橋で降りると、それまでの観光気分から一瞬にして静寂の世界。時間が止まっている。

点検路を1時間強歩いて取水口に着き、沢登りを開始。大きな岩の上から沢に落下してから腹がすわり、下手な高巻きは止めて正面突破を試みる。滝の岩に手をかけ、シャワーを全身に浴びながら登る。ズブぬれだが安全だ。

ずいぶん気合が入り、写真も撮らずにひたすら歩き続け、梯子ダル沢の滝を見て歓声。やった、これで核心部を抜けた。斜面の上から降ってくる優雅な滝を見ながら休憩。

その後、雨が降ってきて、小降りになったところで、テントを一気に張り、中にもぐりこむ。いやあ、天国、天国。ゆっくり夕食をつくり、ホットウイスキーとお茶をのみ、就寝。狭い谷の空にカシオペア。

二日目、奥の二俣で間違えて左俣(沖空木沢だと思う)に入り、真っ白な花崗岩の急な沢を登る。間近に見える駒峰ヒュッテを見ながら、ハイ松の尾根にテントを張り、ハイ松を枕に就寝。やれやれ。

三日目、ようやく縦走路に出てみると、そこは空木岳頂上のすぐそばだった。空木から見る南駒ヶ岳は「日本百名山」の記載のとおり「胆汁質」のがっしりした姿、南駒から見た空木は花崗岩の白が美しい山であった。

空木岳に戻り、避難小屋まで下って水を汲み、たっぷり食事をとる。一人占めの小屋泊まり。天国、天国。

太田切本谷・沖空木沢の真っ白い花崗岩の滝
南駒ヶ岳・・・・・「胆汁質」のがっしりした姿
太田切本谷・入渓地点付近
ずいぶん気合が入り、写真も撮らずにひたすら歩き続け、梯子ダル沢の滝を見て歓声。やった、これで核心部を抜けた。斜面の上から降ってくる優雅な滝を見ながら休憩。
空木岳頂上
キキョウ
D1 7:44 駒ヶ根バス乗車 8:03 檜尾橋バス下車 9:10 大田切本谷・取水口12:53 梯子ダル沢の滝17:00 テント設営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・檜尾橋から8時間57分D2 6:09 テント発 8:01 焚火跡13;31 尾根取付き19:19 テント設営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・テント発から13時間10分D3 6:46 テント発 8:20 縦走路 8:27 空木岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・テントから1時間52分 8:48 駒峰ヒュッテ 9:29 空木岳(2度目)11:17 赤椰岳12:23 南駒ヶ岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空木岳(2度目)から2時間54分13:30 赤椰岳15:16 空木岳(3度目)・・・・・・・・・・・・・・・・南駒ヶ岳から2時間53分16:50 空木避難小屋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空木岳(3度目)から1時間34分、テント発から休憩込で10時間15分D4 6:30 空木避難小屋発11:20 登山口駐車場着・・・・・・・・・・・・・・・・・下り4時間50分(駒ヶ根駐車場までタクシー)

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(D1)

日本アルプスの夏山縦走(裏銀座、表銀座、白鳳三山、悪沢・赤石、聖・光)の最後となる空木・南駒の縦走は、最初は西から尾根を登って越百を廻るルートを考えていたが、沢ガイドで太田切本谷を辿り、空木に登るルートを知り、こちらに切り替える。沢登りのレベルは中級で、私の技量を越えているが、そのときは諦めればよい。トライすらしなければ後悔するだろう。ということで、一式を車に乗せ、駒ヶ根に向かう。

4年前に木曽駒に登った時に寄った駒ヶ根の大きな無料駐車場に止め、ヘルメットをかぶって出発。観光客といっしょにバスに乗り、檜尾橋で降りる。それまでの観光気分から一瞬にして静寂の世界。時間が止まっている。

車道を少し登った先の点検路入口がある。思ったより急な点検路を登り、1時間強歩いて取水口に着く。点検路は立派で、頑丈な鉄の橋にトンネル多数。太田切本谷が眼下に見えてきたが、まだ距離がある。あまり水が見えない。取水口のある建物の対岸を登る階段があり、それを登ってみるが行き止まり。そこから沢までは急な斜面になっている。その急斜面を下るため、針金が設置されているのだが、このときは気付かず、下まで戻って侵入禁止の橋を渡って取水口の敷地に入り、そこから沢に降った。そこに設置されていた針金を使って取水口のダムを登ったが、さっきの左の急斜面にも針金が下がっているのが見えた。砂の上にザックをおろして最初の休憩。

沢登りを開始し、すぐに「腰までの徒渉」に遭遇。深い淵に入らないと進めない地形になっている。その次に「岩の間のロープ」が出現。これもガイドにあったとおりだが、ロープのあぶみに足をかけても登れない。ザックを下ろしてロープをかけ、空身で登ってから引き上げようと思ったが、うまくいかず。マップを取り出し、「流木に足をかけ、岩の割れ目に足をつっこんで無理やり・・・」というのを読み、流木を探してきて立てかけ、割れ目に足を突っ込んでみる。なるほど、足場ができるとてこの要領でなんとか登れる。空身で登った後、大きな岩の上をいったりきたりして、ロープでザックを引き上げる。やれやれ。

さて、次に試練が待っていた。深い淵が行く手をはばみ、高巻きすることにするが、大きな岩の上を歩いていて足を滑らせ、沢に落下。バシャバシャやって水から上がる。やれやれ。左のほおを打ったようだが、メガネは無傷。両ヒザと左腕を少しすりむいた程度。まあ、なんともなくてよかった。しかし、デジカメは反応しない。予備にもってきた三代目を取り出す。(当時はまだタフを持っていなかった)

このあとは腹がすわり、下手な高巻きは止めて、正面突破を試みる。滝の岩に手をかけ、シャワーを全身に浴びながら登る。ズブぬれだが安全だ。水流が強すぎ、まともに頭から水をかぶって登れないときのみ、土手を慎重に高巻く。ずいぶん気合が入り、最初の休憩から3時間、沢に落下してから2時間弱歩き続け、2回目の休憩。早いところ核心部を抜けたい。そこから2時間弱登り続け、梯子ダル沢の滝を見て歓声をあげる。やった、これで核心部を抜けた。斜面の上から降ってくる優雅な滝を見ながら休憩。この間、ほとんど写真を撮っていないのが心残り。しかも、この先にも試練が待っていた。

そこからは少し気楽になって登るが、なるべく上まで行ってテントを張りたい。のんびり滝を写しながら行くが、突然雷が鳴りだし、雨が降ってくる。最初は小雨だったが、だんだん本降りになってくる。こいつは安全なテント場にしないといけない、ということで、沢から離れて岸に上がったりし、時間がかかる。よさそうなテント場を2~3見つけたが、やや沢に近すぎる。そうこうしているうちに空が暗くなり、本降りになる。ヤブの中を歩いてようやく岸から十分はなれたところにスペースを発見。しかし本降りではテントを張れない。ザックを下ろし、ズブ濡れになりながら(もう十分ズブぬれだった)小降りになるのを待つ。なかなか止みそうもないので、沢まで水をくみに行く(こいつは正解)。小降りになったところでザックの中身を空け、テントを一気に張り、ザックのなかみをほおりこみ、外で着替えをしてからテントの中にもぐりこむ。いやあ、天国、天国。ゆっくり夕食をつくり、ホットウイスキーとお茶をのみ、就寝。食事をするとほおの骨が痛い。短パンに半袖では寒くなってきてレインウェアを着込むが、これも雨で濡らしてなくてよかった。なんとも苦労した一日だった。狭い谷の空にカシオペア。

(D2)

太田切本谷の試練は二日目も続いた。木曽殿乗越まで今日は楽だろうと思っていたが、奥の二俣で左俣(沖空木沢だと思う)に入り、「雪渓があるのはおかしい」と思いつつ、懸垂下降、空身の岩登りなどで真っ白な花崗岩の急な沢を登り、ガレ場で登りにくくなったところで尾根に上がる。もう木曽殿乗越の2,450mと同じくらいまで登っていたが、空木岳頂上の真下の位置では縦走路はまだ遠い。間近に見える駒峰ヒュッテを見ながら、ハイ松の尾根にテントを張り(たぶん2,620m付近)、ハイ松を枕に就寝。やれやれ。

(D3)

結局、二日がかりの灌木尾根登りとなり、ようやく縦走路に出てみると、そこは空木岳頂上のすぐそばだった。学生の団体が一組。「こんにちわ」「ごくろうさま」食事をしようと寄った駒峰ヒュッテに水がなかったのには困ったが、おばさんに非常用ボトルを分けてもらい、南駒ヶ岳に向かう。空木から見る南駒ヶ岳は「日本百名山」の記載のとおり「胆汁質」のがっしりした姿、南駒から見た空木は花崗岩の白が美しい山であった。

空木岳に戻り、避難小屋まで下って水を4リットル汲み、たっぷり食事をとる。一人の小屋泊まり。天国、天国。

(D4)

空木避難小屋から東尾根の登山道を下る。尾根上に上がると、青空に宝剣岳と檜尾岳。やがて駐車場に出て、登山口までもう5km弱だったが、タクシーを呼ぶ。散々苦労したので、タクシーに乗ってもバチは当たらないだろう。

D1

1.駒木根の大きな無料駐車場

2.桧尾橋バス停・・・・・それまでの観光気分から一瞬にして静寂の世界。時間が止まっている。

3.取水口・・・・・取水口のある建物の対岸を登る階段があり、その上から沢までは急な斜面になっているが、その急斜面を下るため、針金が設置されている。

このときは気付かず、侵入禁止の橋を渡って取水口の敷地に入り、そこから沢に降り、設置されていた針金を使って取水口のダムを登る。

4.太田切本谷・・・・・入渓地点付近

5.岩の間のロープ・・・・・流木を探してきて立てかけ、割れ目に足を突っ込んでみると足場ができ、てこの要領でなんとか登れる。空身で登った後、大きな岩の上をいったりきたりして、ロープでザックを引き上げる。

6.太田切本谷・・・・・大きな岩の上から沢に落下してから腹がすわり、下手な高巻きは止めて、正面突破を試みる。滝の岩に手をかけ、シャワーを全身に浴びながら登る。ズブぬれだが安全だ。

7.太田切本谷・・・・・この後しばらく写真を撮っていない

8.梯子ダル沢の滝・・・・・この滝を見て歓声をあげる。やった、これで核心部を抜けた。斜面の上から降ってくる優雅な滝を見ながら休憩。

D2

9.太田切本谷・・・・・2日目

10.木曽殿乗越を遠望・・・・・ここに行きたかったのだが、行けず

11.沖空木沢・・・・・奥の二俣で左に入る

12.沖空木沢の滝1

13.沖空木沢の滝2

14.沖空木沢の源頭付近

15.灌木尾根・・・・・ガレ場で登りにくくなったところで尾根に上がる。

16.灌木尾根2・・・・・ハイ松の尾根にテントを張り、ハイ松を枕に就寝。

D3

17.御岳・・・・・3日目の朝

18.木曽駒ヶ岳・・・・・中央奥が木曽駒ヶ岳頂上、その右手前の鋭鋒が宝剣岳

19.檜尾岳

20.空木岳1・・・・・灌木尾根の終盤より

21.空木岳2・・・・・縦走路より、頂上間近

22.空木岳頂上・・・・・学生の団体が一組。

23.駒峰ヒュッテ・・・・・水がなかったのには困ったが、おばさんに非常用ボトルを分けてもらい、南駒ヶ岳に向かう

24.南駒ヶ岳・・・・・空木から見る南駒ヶ岳は「日本百名山」の記載のとおり「胆汁質」の重さをもっていた。

左前のピークは赤椰岳

25.南駒ヶ岳2・・・・・赤椰岳より。ここから見た姿は白い花崗岩が多く、空木と変わらないように見える

26.赤椰岳(あかなぎ)・・・・・頂上の右下がナギで、遠方(南アルプスなど)からはよく目立つ

27.南駒ケ岳頂上標識と空木岳3・・・・・南駒から見た空木は花崗岩の白が美しい山であった。

28.花1: キキョウ・・・・赤椰岳と南駒ヶ岳のコル付近

29.花2: キクザキイチゲ?・・・・・南椰岳と南駒ヶ岳のコル付近

30.空木岳4・・・・・赤椰岳への登山道より

31.空木岳5・・・・・南椰岳への登山口より

32.花3: チングルマ・・・・・空木避難小屋付近

33.空木避難小屋・・・・・空木岳から、避難小屋まで下って水を4リットル汲み、たっぷり食事をとる。一人の小屋泊まり。天国、天国。

34.空木岳6・・・・・空木避難小屋付近より

35.宝剣岳(左鋭鋒)と伊那前岳・・・・・空木岳の東尾根より。木曽駒ヶ岳頂上は宝剣岳の背後で見えていない。

・左: 宝剣岳2,931m

・中央:2,911m峰

・右: 伊那前岳2,884m

36.檜尾岳・・・・・中央に小さく避難小屋が見える

37.赤穂タクシー・・・・・登山口までまだ5km弱の駐車場でタクシーを呼ぶ。

今回は散々苦労したので、タクシーに乗ってもバチは当たらないだろう