坂本幸雄 2016.6.12(日)
森さんの「33Qネット」に向けた新たな展開への情熱に敬意を表し「枯れ木も山の賑わい」的な投稿を致します。
われわれ高齢者にとっての最大の関心は、日々の健康維持であります。
文芸春秋6月号に「長寿の秘訣」なる注目記事が掲載されました。
お読みの方も多いとは思いますが、まだお読みでない方がおられたら何らかの参考にはなろうかと、と思い敢えてその要約と感想を投稿いたします。
やや長文ながら興味があればご一読ください。
「長寿の秘訣」(文芸春秋6月号掲載)
・下記記事は、慶応大学医学部の百寿総合研究センター教授の広瀬信義氏が文春に10ページに亘ってその研究成果を12項目に纏めて書かれたものを、圧縮記録したものである。小生自身、百寿者への願望などは望外のこととしても、八十路を迎えた自分の健康維持にはいささかでも参考になろうかとの思いから敢えて要点を記録。成程と納得する教えも多々あった。
1)長生きする食事とは
・「腹八分目までしっかり食べる」、「風邪をひかない」。枯れ食ではなく、肉や鰻などを好む人が多い。70、80歳まではメタボリック症候群などで栄養の取りすぎを注意する必要があるが、それ以降は栄養不足に注意すべし。健康な高齢者がよく食べている。好まれるものに「甘いもの」と「やわらかいもの」が多い。卵料理や乳製品は毎日欠かさない人が多い。
2)タバコは続けて良いか。:この項禁煙の小生には無関係で省略
3)運動
・高齢者には有酸素運動や筋トレが良い。百寿者の8割は寝たっきりで、自立的に日常生活を送っているのは2割、運動できるほど元気な百寿者はごくわずか。
4)長生きする人の性格とは
・以下は生活に関する60の質問に答えていく「Neo-FFI」という調査方法で調べた結果である。人間の性格を下記の5つのタイプに分ける①神経症傾向=不安が強い、細かいことに気がつく。②外向性=社交的、外交的、派手好み。③開放性=創造的、好奇心旺盛。④調和性=思いやり、周りに合わせる依存心が強い。⑤誠実性=意志が強い、几帳面、頑固。
・この調査結果では、男女の違いは多少あっても、女性の百寿者は外向性、開放性、誠実性が高い。男性の場合は開放性が強いという傾向が強い。百儒者には他人への依存性が少なく、飄々としてマイペースのタイプが多い。中でも好奇心旺盛の人が多い。外国の調査では、誠実性の高い方が人生の目標をうまく設定して、社会に溶け込んでいる人が健康で長生きであるという結果が出ている。
5)医者との関わり方
・健康長寿の人は身体の細かい変化に対して早めに病院に行き、医者の言いつけをしっかり守り、薬も決められた通りきっちりと服用し続けるタイプが多い。80歳になったら高齢者医療に詳しい“かかりつけ医”がいる方が望ましい。
6)大病経験の影響
・百寿者の既往歴を調べると、最も多いのが高血圧症で6割の被災率。ついで白内障、骨折。女性は約5割の人が骨折を経験しているが、これは骨粗しょう症との関係が深い。高齢者に多い動脈硬化は、高血圧、糖尿病が原因とされるので、ライフスタイルの見直しも必要。
7)百寿者にとっての良い家族とは
・ケアする家族には大変だが、親身に気遣う人がいると高齢者の幸せ感にも通じ精神的安定感を齎す。在宅で百寿者を介護する家族と、同じく在宅で80代の方を介護している家族との蓄積疲労度(介護負担度)を比較した結果では、意外にも百寿者介護の家族の疲労度の方が低かったのである。この結果で分かったことは、高齢者の認知機能、自立度、更に介護する側の健康状態も介護の疲労度に大きく関わっているということである。調査結果では、長寿者でも明るくおおらかで良好な人間関係を築ける人もいるが、そういう人は大抵頭の回転も速い。その結果から健康長寿の人は、知識量よりも頭の回転や思考力の良さが目立つ人であるといえるのではなかろうか。
8)介護は在宅か施設か。
・我々の調査では、特別養護老人ホームに入居している人は、百歳で約四割、百五歳
で約六割、百十歳で約七割。入居の理由は骨折などで自立できなったために入居するケースが多いが、百五歳以上になると「施設に入ったからこそここまで長生きできた」と語る人が多い。
9)老いの仕組みは分かったか。(坂本注:この項重要と思った)
・老いの仕組みを考えるときに、いま「フレイル(虚弱)という状態が注目されている。
高齢者が亡くなったときに死亡診断書に肺炎や心不全と書かれることが多いが、実際はこれらの病気の元はフレイルという病状である。
70歳代までは脳卒中や心筋梗塞で亡くなることがほとんどであるが、85歳を過ぎた頃からは、どこにも目立った病気はないのに全身の機能が徐々に低下して亡くなる人が多くなる。
日本老年医学会はこのように身体機能や認知機能が低下した状態をフレイルと呼ぶよう提唱している。外見的には腰が曲がって杖をつきながらヨロヨロと歩き耳が遠い上に認知症もあるようなで会話も噛み合わない、言わば、動作も全体的にのろいという状態である。
その診断に使われるのが「フリードの定義」である。
「体重減少」「主観的疲労感」「日常生活度の減少」「身体機能の減弱」「筋力(握力)の低下」の5項目にうち3項目当てはまればフレイル状態で、2項目あればプレフレイユ状態である。
われわれの研究では85歳をすぎた頃からは、フレイユのある方は余命が短く、フレイユのない方が長生きするという結果である。
理想的な死に方の「ピンピンコロリ」になるためにはフレイユがあまり進行しない状態が前提となる。
85歳以降はフレイユが進行しないように栄養価の高い食事や筋トレに取り組むことが必要になってくる。
10)百歳の人は幸せか。
・百寿者へ「あと何年生きたいかという質問すると、「あと数年」「オリンピックまで」などの答えが多く、百寿者は幸せ感が高いことが伺える。
1989年にスエーデン大学のラルス・トルンスタイン教授は唱えた「老年的超越」という概念がある。
「それは、超高齢になると物質主義的で合理的な考え方から宇宙的、超越的非合理的な世界観に変わることによって幸せ感が得られるようになる」ということである。
話が長くなるお年寄りにはそれなりの理由がある。
11)百歳の趣味は?,恋は?。
・百寿者の趣味は多彩で、和歌や俳句、書道、三味線、絵画など幅広い。
TVのスポーツ番組も人気がある。
女性はいくつになっても、おしゃれには気を使っている。
何歳になっても異性には興味がある人が多い。
12)長寿遺伝子はあるのか。
・「あそこは長寿の家系だから」と言われることがあるが、沖縄の離島での調査では、百寿者が出た家族とそうでない家族を比較調査したところ、百寿者の家族では、平均年齢到達率、80歳到達率、90歳到達率のいずれも高かったという結果が出た。
長寿には遺伝子があるかどうかの研究も進められているが、まだ解明されていない。
人間110歳を超えるとどうなるか。
実際に調べてみると105歳を超える頃からは栄養状態や貧血が徐々に悪化していく。
先述のフレイユが進んでいる。ところが105歳を超えてもそれらのデータが全く変わらない方がおられる。
このような方が、110歳を超えても生きている。これらの方々を研究することが人間の最長寿命を解明することに繋がることになると思う。
人間の長寿110歳時代もそう遠くないかも知れない。そんな研究を続けたい。(H28.5.12記す)
感想:
・上記の要約文を、まずは、只今の小生の周りの人の中で最も百寿者への可能性を秘めた人物であろうと確信しているメル友の一人:87歳のジム仲間のⅯさんに、その更なる長寿を願って真っ先に送信した。
Ⅿさんとは、かねて自分は特攻隊の生き残りであると自称され(坂本注:終戦を知覧航空隊で迎えられた)、「私の命は、終戦が2,3日遅れたら確実に御国にささげていた筈のものです」と話しておられる方である。
がしかし、Ⅿさんから即日返信頂いたそのメールを読んで、あの戦争で特攻隊員として自らの命を危機に晒した経験を持つMさんは、毎日のジム通いで自分の健康維持には人一倍気を付けておられるなかで、自分の寿命に関しては、実に淡々として自然体で臨んでおられることに感銘を受けたのである。
そういえば、Ⅿさんと話をしても「自分はよくぞ助かった」とか「やれやれですわ」といった言葉などは聴いたことがなく、「特攻で亡くなった戦友に申し訳ない」という気持ちだけが伝わってくるのである。
・『坂本 様 何時も、有難うございます。長生きするには?とか、どうしたら長生き出来るか?とか、考えた事も無く、この歳まで来てしまいました(笑)。
私達の年齢の男は、一度落とした命、今生きて居るのが不思議な位の命なんです。
それが、さほど大きな病気もせず、米寿を迎えるなんて、神様のイタズラなんでしょうね。
人間も長生きすると、だんだん慾が無くなって来ますね。
これから先は、ケアする家族に余り迷惑かけない様、「ピンピンコロリ」 と、逝きたいと願うのみです。
今は、コナミ通い(注:二人共通のスポーツジム)が、唯一の楽しみ!もう、何カ月?年?通えるか?解りませんが、行きつく所まで、よろしくお願い申し上げます。(メール原文)』
・最近老生は、中野信子さんの「脳内麻薬」という本を読んだ。
この本は、脳の中の神経伝達物質と人間の感情や健康との関係を解説した本であるが、それによると「他人との良き結びつき」や「幸福感」を感じるときには、脳内にはドーパミンやセロトニンなどが多く分泌され、それが健康の維持などにも役だっているのだそうである。
結局、長寿には上記のような様々な要素があるにしても、自らの長寿維持には、自分の心の中に如何に幸せ感や充実感を保つかが重要であるように思う。
が、そのためには、自らが、日々の生活でどんなリズムを刻むかという、“セルフ・コントロール・マインド”が大切なのではなかろうか、と感じた次第である。
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Shimojo Goichi(返信欄より転載)
22:34 昨日
坂本さんの 文春6月号記載の「長寿の秘訣」紹介を有難く読みながら、思い出しました。
10年ぐらい前だったか、小生の友人が、これから長生きするためには、先ず 「怒るな、転ぶな、風邪ひくな」 だよと言った言葉です。 これからは、この言葉に加え、坂本さんの言わんとする趣旨、とくに末尾の中野信子著[脳内麻薬」の読後感を念頭に日々を送ろうと思った次第です。
小生の場合、父親は満88歳、母親は満104歳の生涯を遂げているので、旨く行けば、後十年、うまく行けば後二十年の長命もありそうだと勝手に思っています。 そう思うと気分が和らぎます。
この気持ちで、そろそろゆっくりと終活計画(身辺整理と翻訳・執筆)を実行に移そうかと考えております。
下條 剛一 (2016.6.12.)
返信
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下條さん
ご無沙汰いたしております。
今回リリースされた「33Qネット」上の拙稿「長寿の秘訣」対し、早速に当サイトに適切かつタイムリーな感想を書きこんで頂き感謝致します。
そういえば、昨年2月、小生が旅行中不注意で膝を骨折して1ヶ月以上も入院した際に、病院に持ち込んだipadで何人かの友人・知人の皆さんとメール交信致しましたが、その折にも、貴兄から「怒るな、転ぶな、風邪ひくな」との注意喚起のメールを頂き、「日にち薬」入院で退屈な小生を励ましていただいたことを思い出しました。
これからの我々の八十路は将に魔魔・怪我魔との闘いであり、少しでも油断するものならば、その妖怪の如き魑魅魍魎に襲い掛からられ大変な苦痛を強いられる危険に充ちていますね。お互いに貴兄の忠言「怒るな、転ぶな、風邪ひくな」でこの八十路を乗り切りましょう。
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