2016.11.27
このエッセイは 宗教・哲学・信仰の問題を日本の精神思想史にも触れて分析した大作だが、痴呆症が進んでおり、物事を深く考えることに興味がなくなってきた自分にはかなり難しい内容だった。
「こころ」と「心」の微妙な違いを 生活感に溢れて感ずる「こころ」と、観念世界の中で信じる「心」という二つの太い流れから分析しているのは面白い。
結論部分における、戦後のアメリカ文明の影響で変貌を遂げた「ひとり哲学」の諸問題が現代社会に対する警鐘になっているとの指摘は重要である。日本伝統の「自助努力の姿勢」が無くなり、救済を他に求めるなさけない社会に変わってしまったのは、福祉政策の悪弊か。平等主義が蔓延し「自己愛の個」から、「孤独な個の暴走する姿」が街に溢れている現実は極めて深刻である。
晩年の漱石の「即天去私」になってきた僕には「どうでもいいや」との心境ではあるが。