33Q坂本幸雄論文感想 33P戸松孝夫 2016.12.30(金)
今月の話題.「グローバリゼーション、民主主義、国家主権の関係」を読んで
トランプ大統領の登場が決まったのは今年の11月19日。その丁度27年前にベルリンの壁が壊され、東西冷戦が消え去り世界的なGlobalizationが始まったのに、今や新たなる壁が世界各地で築かれ始めているとの事実をどう考えるべきか、本エッセイが投げかけている問題は重要だ。この時代に生きて、時代の早い変化を自分の目で観て、激しい歴史の流れを肌で感じることができたことは、或る意味では我々の世代は幸せだったのではなかろうか。
近未来に予想される世界の動きを分析している著名な学者の論文やメディアの記事を個人的にきちんと整理し、メモにとっている著者の態度には感心させられる。今後我々が生きている間に、世界が、日本が、実際に変化する結果と、現時点で学者・メディアが書いている予測記事とを比べてみようとの著者の遊び感覚も面白い。
<次の世界リセッションは中国の「債務爆弾」の破裂であろう>という雑誌「選択」の興味深い記事が紹介されている。
「民間部門の債務のGDP比」といった経済的指標の数値のことについては僕は全く不勉強だが、中国人の47%までが、5年以内に移住したいと答えているという某銀行の調査数値は見逃し難い。本エッセイの後半部分で詳述されているような、仲間(自分の部族)さえ安泰であればお国はどうなっても構わないという中国人の伝統的思想からも、一般大衆には国家を頼りにして生きていくナショナリズムは中国には生まれなかったのだろう。
フイリッピンやベトナムからの労働者が中国の国民の雇用を奪ったようなことはなく、経済発展に伴って必要な労働者は中国奥地の国内の低開発地域からの労働移転という国内問題の形での対処方法でケリがついているという。この事例からも、中国は欧米先進諸国とは大いに異なる“異形の国”との決めつけは判り易い。
一方 習近平は、アシア太平洋経済協力会議の席上、中国は、グローバル市場を必要とするすべての国に支援する用意があると豪語し、危機に瀕するグローバリゼーションの救世主を買って出たようだが、上記のような中国人の部族優先主義に加え、市場経済への転換が遅れ、国営企業に様々な問題をかかえる中国に、国際的救世主の役割を期待するのは無理だろう。
目下の世界的課題として21世紀経済の一大テーマ「第4次産業革命」と「それを推進する数百万の企業の存在」という問題に対し、本エッセイで著者が前向きに取り組んでいる点は高く評価したい。
世界各地に第2,第3のシリコンバレーが誕生している流れの中では、技術革新が世界で停滞することはない筈との期待、更に世界経済フオーラムが「イノベーション能力」を指数化して世界の国々の順列を発表しているといった事実等は、今後の世界が向かう目標の現実性を示唆しているように思われる。
・今後3~4年の間に、技術革新が加速度的に進む。第4次産業革命の大波を起こして偏狭な国家主義・保護主義を呑み込み、これまでとは理想も方向性も異なる新しいグローバル化が始まるだろう
との著者の希望的観測が的中することを願いたい。
2006年以降「政治権利を失った」国の数が「政治権利を手にした」国の数を毎年、上回っているとのことだが、ここでいう「政治利権」の意味がよく判らない。最近世界で起きた社会的騒乱は2010年を境に毎年14件から22件に増加したとかの国際NGOフリーダム・ハウスの警告は、このエッセイの主題たる「グローバリゼーション」「民主主義、国家主権の関係」「第4次産業革命」とは直接的な関係がない文明度が極めて低い小国(僕らの業界では「土人の国」と呼んでいたが)の話であり、今文明国でSeriousな問題になっているGlobalizationとの関係が出てくるのは未だ一世紀先のことではなかろうか。
――こんなことを活字にすると、建前を大事に生きている人たちから袋叩きにされそうだが――
以上
(2016年12月30日 戸松孝夫 記)
戸松さん ← 坂本
今回の小生のエッセイに対して、拙文を丁寧に読み込んだ上で、小生の思い到らなかった論旨をカバーし、更に小生の拙い思考を深化させるようなコメントまで頂き感謝します。
そもそも小生が「33Qネット」に投稿を重ねているのは、高齢化を迎えている我らクラス仲間の「身体不自由、されどパソコンでの情報相互交流は自由自在」という、蓋然性の高い近未来に備えて、できれば互いに元気なうちに、「ネット交流サイトの活用で“やまびこ効果”に充ちた情報交流の道程をルーテイン化しておきたい」との希望からであります。
戸松さんとは、大学時代お互いに面識もなく、しかも、お互いに知己の間柄になったのは、貴兄が退職後関西に移り住むようになってからの高齢期からでありましたね。しかし、いつも拙文に対しては、今回と同じように、適時適切なコメントを戴くうちに、個人的な旅行の動静などすらも逐一報告し合うほどになっていますね。
我らPとQのクラスには、森さんご尽力の「33Qネット」という、お互いが勝手気儘に活用できる情報交流の場があります。そんな落書き帖の如き交流サイトを活用するには、「そこに何か書こう!との意欲」こそが大切です。来年も何とかお互いにそんな意欲を持続できれば、と願っております。よい新年を迎えてください。(坂本幸雄 H28.12.31記)
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