P大島 昌二 2017.8.5
7月の支部山歩会は久しぶりで一泊旅行でした。
参加者は9名、7月27日(金)に立川駅発7時53分、あずさ3号で白馬駅へ向かった。
勇躍と言いたいところだが「天はわれに味方せず」天気予報によれば27,28日ともに曇り後雨、降水確率も結構高い。
高山の麓での雨中散策は夏とはいえご苦労なことに思われた。ところが発車後1時間も経たないうちに車窓に日が射してきた。これならと一縷の希望が湧いてきたがもちろん楽観は許されない。ところがどうしたことだろうと思わずにはいられない。雨具を着こんだり傘を取り出したりしたのは翌日の行程の最後、標高2,000m近辺の栂池自然園の見学も終りに近くなってからという上々の天の配剤だった。
車中3時間半、白馬駅着は11時27分、そこからタクシーで次の駅、信濃森上駅付近へ。
今日はここを起点として、まず大糸線の東方を流れる姫川を渡って青鬼(アオニ)集落へ向かい、またそこへ戻ってから千国街道を歩いて栂池高原ホテルに向う。
青鬼集落までは舗装された車道であるが山中の急坂で夜道はタクシーも敬遠するという。集落は12所帯ほど、冬季は2所帯を残してあとは下界に避難して暮らすという。
集落のとっかかりに駐車場があって集落への訪客はここで車を降りる。集落の中心には無人のビジター用の休憩所があって畳敷きの大部屋では弁当も使える。不思議なことにはこの青鬼は15万分の1の観光地図に載っていない。かろうじてグーグル地図に「青鬼集落」と出ていた。地番は白馬村北城である。ちょうど昼時とあって休憩所は賑わっており戸外で弁当を使っている人も少なからずいたから知る人とぞ知る秘境ということであろう。標高は760m、「涼しいところへ行って」とうらやむ人もいたが湿度が高く蒸し暑い。隅に重ねてあるテーブルを引き出して腹ごしらえをしてから見学を始めた。車でだいぶ登ってきた印象からすれば集落の背後にある棚田は思ったよりも広い。村人の姿はほとんど見当らず僅かばかりの情報はタクシーの運転手からの耳学問である。再び信濃森上へ戻ってから塩の道、千国街道(糸魚川街道)を歩き始めた。蒸し暑いが幸い天気は崩れない。後は夕立が来ないことを祈るばかりだ。
栂池から南小谷(ミナミオタリ)までの千国街道はこの会で2011年5月に歩いている。同じグループでと言えないのは人数は7人だが同じ顔は世話人の飯塚さんと私の2名だけ。6年前は上から3番目だった私は今回は2番目である。あの時は2日目に同じ栂池高原ホテルから歩いたのであった。今回はほとんどが舗装道路であったのに比して高所であるだけにあの時は心地よい土の道であった。予報はあてにならないと運転手に言われていたがその日は予報通り快晴、しばらくは杓子、白馬鑓、鹿島槍が上方に白く輝いていた。立ち寄った牛方宿では管理人から千国、栂池の来し方の話を聞いた。
スキー場が出来るまで栂池の住居は僅か3軒であったというから現在の青鬼のようなものであったろうか。ほかにも税関として機能し、塩と穀類のみ現物で徴収したという千国本陣の跡は資料館になっていた。
今回の立ち寄り先については一部を添付写真で示した。
翌日の栂池自然園は広大なばかりでなくその緑の豊かさも想像以上であった。これまで尾瀬を始め幾つかの湿原を訪れているがこれほど一カ所で高山植物に集中してお目にかかれる所は思い当たらない。もっとも今年は雪が多かったために春と夏が短い期間に集中して花々が一斉に開き、われわれはちょうどよい時期にそこに居合わせたということでもある。きれいな花々の写真も撮れたしこれだけで満足してよいのだが雨に妨げられて最後の浮島や展望湿原に行けなかったのは残念だった。それに同行の諸兄には白馬岳に連なる山々の雄姿を見てもらいたかった(3750参照)。栂池の地名はこの地方に多いオオシラビソを当地では栂(ツガ)というところから来ているという。オオシラビソは別名アオモリトドマツであるがツガはまた別種である。
写真説明
7179 青鬼集落を駐車場から。屋根はかつては茅葺きであった。
7183 棚田の先には後立山連峰。右手下に長野オリンピックのジャンプ台が見える。この辺りで写生をしている人が多かった。
7196 岩岳の民宿通り。水路に沿って青いアジサイの花盛り。並木のようにどこまでも続いている。
7202 千国街道の標識。このような道はあまりない。多くは平凡な舗装道路を歩いた。
7205 方形の芝生の庭の周囲を関東百観音の像が取り巻いている。今回はほかにもう一カ所あった。
7210 庚申塔。これも観音の石仏と並んで江戸期以来の信仰の姿を留めるものである。
7218 糸魚川から日本海に注ぐ姫川沿いのこの辺りでは千国街道は糸魚川街道とも呼ばれた。
7246 2日目は6時半に朝食を摂り7時を回った頃にはゴンドラ、ロープウエイを乗り継いで栂池自然園へ向う。ゴンドラで上に行くにつれて深い霧の中に入る。
7250 ロープウエイを降りたあたりのサルオガセ。清浄な空気と水が生育の必要条件という。空中からはオオシラビソの紫色の球果もよく見えた。
7272 栂池自然園の池塘とワタスゲ。
7283 豪雪地帯の証の風穴。冷たい風が吹いている。
7301 ベニバナイチゴ。
7319 自然園の一角。この先、楠川(くすかわ)を越えて登り坂になる。
7322 楠川の渓流。この先に浮島湿原、展望湿原があるがあいにく雨が降り出したので割愛して回れ右をした。
7265 この狭い一隅にチングルマ、タテヤマリンドウ、モウセンゴケなどが群生している。
7276 キヌガサソウ。
7315 ニッコウキスゲの群生地域。
7260 クルマユリ、ヒオウギアヤメ、シナノキンバイ。
7264 オタカラコウ(雄宝香)
7327 最後の仕上げはホテルに戻って温泉浴。これで疲労の回復も早い。テラスに出て帰りの車を待つ。
3750 2011年5月15日。快晴の下、栂池から南小谷へ向かった。
誤りなどに気づかれた方はお知らせください。 大島昌二
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感想 Q森 正之 2017.8.5
今月も、国立国分寺支部山歩会の丁寧な写真つき紀行文、1泊2日の旅の疲れも癒えぬ間に、本当に有難うございます。白馬に思い出のある方は多いと思います。[7327]満足の笑顔の写真。山歩会の皆さまによろしく。