Q森 正之 2017.7.13
坂本兄の本稿に将軍綱吉が登場します。
綱吉小説に朝井まかて著の「最悪の将軍」があり、図書館で借りて読みました。
参考までにamazonのカスタマーレビューをご紹介します。
昔、高輪泉岳寺の隣に住んでいたので、忠臣蔵に興味あります。
カスタマーレビュー5件
(1) 2017/1/11 ピロシキ亭
愚鈍でも短慮でもない しかし真面目なだけでは報われぬものが為政というものか。
時代劇では悪役、または馬鹿殿役が定番であった5代将軍綱吉ですが最近は実は良い将軍だったのではないか?のような見直し論がちらほらと陽の目を見ているようです。
作中のズタボロになりながら必死に運命に抗うように将軍職を務めた綱吉とその奥方信子がこの本をきっかけに更に浮かばれることがあれば良いな、としみじみ思わずにはいられません。
綱吉については町人よりも犬を大事にしたという生類憐れみの令と忠臣蔵での浅野即切腹処分によって、なんだかわがままで短絡的な暴君、のような印象が相変わらず多いのではないでしょうか。
でもこれらは殆どが歌舞伎の時代から繰り返しアジテーションされた反日運動ならぬ反綱吉運動の刷り込みようなものらしいです。
井沢元彦氏の逆説の日本史、においては綱吉の為政が褒めちぎられています。
今までの戦国から引き摺られた武家社会の気運、いのちの軽視、弱肉強食の力=権力=正義の発想を大転換し武器:刀を携帯した無法者にいつ切り捨てられても何も出来ない不安と恐怖の世の中から、現在僕らがごく当たり前な感覚で享受できているような安心して女子供が往来を歩ける社会を幕府主導、将軍直々の発令により実現させた。
天災や火災により被災した民を救済するために国策と国費を充てるという発想など、全てこの時代から転換が始まったというものです。
(2)2016/11/27 しょだまさし
確かにあった事実なのかも
読めて良かった、本当にそう思う。 現実そのものは、物語ではない。
徳川綱吉がこの小説通りの人であり人生だったとは考えませんが、だからこそこの作品は本当の物語なのだと思う。
真実であってほしいし、確かにあった事実なのかも、そんな思いでこの世界に読み浸った一時が幸福でした。
(3)2016/11/21 ちゃむ
楽しく読んだ 綱吉ものは基本好き。
スポットの当て方でころころ変わるキャラだから、「あらすじ」は分かっていても「さあ、どこをどう解釈してくれる?」のわくわく感が高い。
期待に違わず。御台所の出番が多いトコに、「おお、これは今まで余りなかったぞ」という目新しさもあり。
桂昌院を「空恐ろしい強運から振り落とされなかった」とするのも、そこの部分には思い至らなかったわ…、と目からウロコ。
「一家で1匹の犬を慈しんで飼う事は可能かもしれないけど、地域犬全部保護する」のは無理がある。
本書の綱吉は「己の理想に向かって邁進する清廉な姿勢の人」だった。
でも正しく理想を理解して実践する梃子がいないとどうにもならんよなあ、という感じでした。 楽しく読みました。
(4)2016/11/19 毒書乾燥文
高き志ゆえに
30年位前だろうか、生類憐みの令は悪法ではなかったという論考を読んだ。
凡そそのころから綱吉およびその政治の見直しが始まったのだろう。
この小説には狂言回し的な役割の余計な(非歴史上の)人物が出てこない。
徳川光圀との対立や柳沢吉保の陰謀もここにはない。
それは「十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯」に近いだろうか。
名君であったがその志が理解されないまま亡くなった綱吉の真実はこのようなものだったのだろう。
参考文献に「犬将軍」(M. ボダルト=ベイリー)や「徳川実紀」がなかったのが不思議ではあった。
(5)2016/10/8 やじうま
「我に邪なし」犬公方・綱吉の信念とは!?
思いもかけず兄家綱の後をうけて将軍となった綱吉は文治主義を掲げ、武辺からの脱却を目指した。
慈愛のこころを持ちながらも市井の人びとには届かず、失意のうちに没した、綱吉の一生を描く。
生類憐みの令によって晩年の評価は低い印象のある綱吉だが、タイトルの「最悪の将軍」とは裏腹に綱吉の真情を掬い上げ、新しい綱吉像を与えてくれた。
周囲には優秀な者ばかりを集め、無能な者を遠ざけ、決してうまく使うなどということはなかった。
優秀な人間にありがちな妥協を許さない性格、と言えるかもしれない。
あるいは、絶対権力者である将軍だからこその寛容性の欠如だろうか。
浅井まかてさんも同様の視点からの至極説得力のある史説、解釈に綱吉と信子、兄弟、祖父母、臣下との親愛を盛り込んで血肉の通った歴史劇に仕上げてくれました。
愚鈍でも短慮でもない、聡明で仁愛に富んだ5代将軍綱吉。
そして律儀で真面目、一生懸命でありながら周囲の理解を得られず、天災、火災に見舞われ民の労苦を自身の責任と感じ涙する綱吉。
いい人なんだけど、報われないんだよなあ。
信子さんでなくても、もっと何とか運や加護をもたらされて報われてほしい。としみじみ思ってしまうのでした。
とって付けたような(失礼)小説的なラストが胸をジーーンとさせます。
類型的でもお決まり的でもいい、このラストで綱吉も、そして読者の僕自身も報われるので、やはりこの本のラストにはこの挿話が必要なのです。
冬の早朝のきりっとした空気の中、余韻を反芻しつつ歩くのが実にすがすがしく読後にぴったりなのでした。
「江戸時代の文化財保護と綱吉の善政」感想…Q坂本幸雄2017.7.13new