「クローン病の治療について」
匿名希望 61 歳 2016 年 12 月 19 日
匿名希望 61 歳 2016 年 12 月 19 日
1.発症
私が、肛門に異常を感じたのは、定年退職後再雇用され4ヵ月目、2015年7月頃でした。それまでにも、何度か排便時に苦痛を感じて、鮮血が混じったことはありますが、1週間もすれば気にならなくなっていたので、それほど深刻には考えていませんでした。しかし、今回は 1 ヵ月ほど経っても痛みはなくなるどころか、激しくなってきました。総合病院を2箇所ほど回り、詳しく説明してくれる病院で10月22日に切痔の手術をしました。1 ヵ月もすれば痛みもなくなってくると期待していましたが、2ヵ月たっても痛みは和らぐどころか、年が明けても一向に回復の兆しは見られませんでした。
あまりにも長期間痛いので、先生に相談し、超音波探傷検査とCTを実施してもらいました。消化器外科の先生から、リンパ節が腫れていることと、大腸の壁が厚くなっていることを指摘され、今度は消化器内科で4月に大腸の内視鏡検査を受けました。結果、胃は問題なかったのですが、大腸に縦走潰瘍などの典型的なクローン病の症状が見られ、栄養状態も悪く、CRPが7.7という値でした。
クローン病は、比較的若い人に多く発症する病気で、私のように60歳を過ぎて発症する例は少なく、また治療法はあるが、この病気は完治することなく、一生付き合っていかなければならない病気と聞かされました。この痛みが一生続くことへの絶望感で失望してしまいました。
2.西洋医学での治療
難病医療登録の手続をし、4月8日から西洋医学の治療が始まりました。
栄養剤:エレンタール:300cc×3本/日
整腸剤:ミヤBM(毎食後)
下痢止め:フェロベリン錠
免疫抑制剤:ヒュミラ皮下注射を2週間ごとに4本⇒2本⇒1 本
以後2週間ごとに 1 本 。(わずか 1 本40mgで6万円と非常に高いのですが、難病患者には補助があり、助かりました。しかし自分で腹に注射針を刺す皮下注射は気持ちの良いものではありませんでした。)
軟膏:ポステリザン軟膏(痛みが激しいときに塗布しましたが、効いた記憶はありません。)
4月22日にヒュミラを4本注射したとき、劇的に変化があり、注射翌日には下痢が軟便へと変わり、普通便へと移行してきた為、家内ともども回復していくものだと喜びました。しかしこれもつかの間のことで、1ヵ月後ヒュミラが2本⇒1本になった頃再び下痢が始まりました。体重は1ヵ月に1kgずつ減り続け、合計4kg減りました。(8月末には7kg減りました)自分の体からだんだん力が抜けていくのが自分でも解り、衰弱死へと向っていると実感し、不安は募るばかりでした。丁度8月のお盆前が苦しみのピークで、そのときの状況は以下のようでした。
下痢:私の場合、トイレは5~6回/日でしたが、夜には必ず2回~3回トイレに起きる為、十分な睡眠時間がとれず、片道2.5時間の通勤は再雇用とはいえ本当につらかったです。また、出張で福岡県や千葉県へ行ったときなどは、どこにトイレがあるか、それまで持つかが気になり、トイレのある場所をチェックしていました。
体がだるい:出勤時の電車の待ち合わせの20分弱、駅ホームで電車待ちしなければなりませんが、この20分の待ち合わせの間、体がだるく、まるで自分の体がホームに沈んでいくような感じでした。この頃には家でTVを見ているときも、いすに座っているのがつらく、いつも横になっていました。 幸い、リオオリンピックがあったので退屈はしませんでしたが、アスリートが目いっぱい体を使っている姿と、自分の状態のギャップが大きく複雑な気持ちでした。
家内は、横になって眠っている私を見て、まるで骸骨が寝ているようだと感じたようです。JRや私鉄の駅の階段は、13~20段の間で踊り場が設けられておりますが、これを上るのがきつく、駅のホームに上がった頃には肩で息をしている状況でした。
尻の痛み:何よりもつらいのは、痔ろうにより肛門周辺が痛く、歩いたり、電車のいすに座るがつらいことです。電車のシートの硬さにも敏感で、座るときは、まず自分の手を太ももの下に敷き、体重の負荷を手で受けて、少しずつ手を抜いていき、痛みをがまんできる姿勢を探していました。またJRの電車のシートは近鉄電車のシートより硬く、京都駅前後は振動と横揺れが激しく要注意だと感じたのはこの頃です。大股で歩くと痛い為、6割くらいの歩幅で歩き、ピッチも少なく歩いた為、速度が遅くなりました。会社での仕事はデスクワークであったため、パソコンに向うときの姿勢が30分と持たず立ったままでの仕事が出来ないか模索したのもこの頃です。痔ろうにより、下着が汚れる為、女性の生理用品が手放せませんでした。
食欲:空腹感や満腹感がなく、甘い酸い程度の味はわかっても食欲はありません。お茶碗半分のお粥をなかなか食べることが出来ませんでしたし、いつもどこかに口内炎ができていて、食べることが苦痛でした。
関節痛:体重が減ってしばらくすると膝、腰、肩の関節が痛み、総合病院と同時に整骨院へと通いましたが、なかなか痛みがとれませんでした。整形外科で超音波の診察してもらうと、関節の筋が固くなっており、鍵盤損傷も伴っているとのことでした。筋肉が減ると、筋肉や筋が硬くなり関節に痛みが出てくることはよくあるのだそうです。膝、腰は電気治療やマッサージで痛みは和らぎましたが、肩は12月現在も理学治療に通院しています。ヒュミラの皮下注射を2本⇒1本にした頃から下痢が再発した為、再び2本にもどしても何の効果もありませんでした。先生の見解では、抗体が出来ているかもしれないので、血液検査をすれば解るとのことでした。
8月12日の診察で、ヒュミラに加えてイムラン錠が処方され、これも飲む免疫抑制との説明を受けましたが、症状がよくならない場合は・ヒュミラに抗体が出来ているかもしれないので調べる。
・次の薬として、レミケードを検討する。
そのためには、医大に入院が必要とのことでした。テレビやネットの情報から
・レミケードには少ないながらも悪性リンパ腫の副作用の報告がある
・その先はステロイドとの併用
・それでも改善が見られないときは血液中の白血球の顆粒球の除去
・更にひどくなれば大腸の摘出
という道筋になるのだろうと予測は出来ました。健康な人の腸内細菌を、治療中の患者の大腸に移植する便移植という方法もあるようですが、この治療方法も臨床試験段階で、費用もずいぶんかかるようでした。それでも、実姉には「最後は協力してもらうかもしれない。」と打診おきました。西洋医学では薬を変えても、どれも免疫を抑制する薬です。これでは免疫力によって増殖が抑えられている病原性の低い常在細菌が増殖し病気を起こすこのではないか?という心配がつきまとい、先生からは完治しない病気であることを宣言されていたので、本当に憂鬱でした。
3.松本漢方クリニックへ通院
私が松本漢方クリニックを知ったのは、7月半ばだったと思います。何気なくネットに「クローン病 完治」と入力すると出てきましたが、当初はあまり気に留めてはいませんでした。当時の病状のしんどさと、漢方と鍼灸で治るということのギャップに疑いを持っていたのです。 ただ、完治という言葉がひっかかり、何度かホームページを見ているうちに、大きな勘違いをしていることに気付きました。病気を治すのは自分の免疫であり、漢方や鍼灸は免疫を上げるということでした。このことは、免疫抑制一本やりの西洋医学に疑問を感じていた自分には、これこそが本来の治療ではないかと思いました。まだステロイドを使用してない今なら、リバウンドも少ないかもしれないし、ここで漢方を中心とした免疫活性化の治療をせずに、西洋医学の治療を続ければ、先に想像したように行き着くところ、大腸摘出につながり、一生後悔しそうな気がしましたので、家内とも相談し、とにかく一度診察を受けて、それから考えても決して遅くはないと判断しました。
忘れもしない8月19日。松本漢方クリニックで診察を受けました。診察室から聞こえてくる先生の声には少しびっくりしましたが、これも患者が治療方法を理解することが大事であることを一生懸命説明してくれていると感じたので、何の不思議もありませんでした。松本理論を完璧に理解するのは難しいと思いましたが、人間が本来持っている免疫に勝る薬はなく、免疫を上げることこそが完治に繋がるという理論は、私の腑に落ちました。これについて一度も疑問を持つことはありませんでした。
松本漢方クリニックの治療を始めてから、4日目には下痢が軟便に変わり、3回目の通院の帰りには、少し食欲も戻ってきていましたので、外食をしました。握り寿司を食べたときの味には、本当に涙が出そうなくらいおいしく、回復しつつあること実感しました。そして今考えると、松本漢方クリニックからの帰りには、体調が戻ったらあれがしたい、これがしたいと考えていたのは、鍼灸の効果ではなかったかとも思います。
総合病院では上がる一方だったCRP定量値も、1ヵ月で1.0以下の値を示し、それ以外の数値も以下のようになりました。
終わりに
最近、病気に対する感心が高まり、医療関連のドラマなどが放映されています。我が家のビデオデッキにも、潰瘍性大腸炎やクローン病などの大腸関連の西洋医学の治療についての特集番組が、何件か入っています。どれも、病気の原因ははっきりわからず、完治しない病気であることを前提にした免疫抑制剤とステロイド中心の治療法ばかりです。最後はいかにして病気と共存できる状態に持込むかという内容です。健康な人から見れば、なんのことはない内容ですが、病気を体験中(済?)の人間から言わせると、こんな残酷な宣告はありません。私の場合60歳を過ぎての発症でしたが、多くの人は、若くして発症して、苦痛が30年~50年も続くのです。食べる楽しみも少なく、出かけるときは出先の施設を気にしなければなりませんし、恐らくスポーツを楽しむことにも制限があるでしょう。こんな苦痛から開放してくれる療法があるのに、なぜ世間は注目しないのでしょうか?患者が多く、投資回収のしやすい疾病の研究は進んでも、患者の少ない難病は、研究開発費が回収できないから進まないのでしょうか?医療というのは商売などと違って、儲けるためにあるのではないはずです。ましてや投資をしなくても、現に完治できる病院があるのに、なぜ注目しないのでしょうか?私の場合、ステロイドを使用前だったからか、大きなリバウンドもなく約4ヵ月で発症前とほぼ変わらない状態になっています。重くて振ることさえ出来ずにあきらめていたゴルフも、10月頃から素振りが出来るようになりました。もしあのまま、総合病院で治療を続けていれば、今頃第2、第3の治療薬でも痛みが引かず、ガリガリの体で悶々としているのではないかと思うとぞっとします。松本先生から「完治」という言葉を聞いても、お灸や発芽玄米は出来る範囲で続けていこうと思っています。
最後に、今も漢方薬を煎じたり、発芽玄米をペースト状にし、お灸で応援してくれた家内と治療にあたってくれた松本漢方クリニックの皆さんにお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。