「クローン病 完治に近い経過報告」
15歳 女性 2015年10月26日
15歳 女性 2015年10月26日
(お母様の記述)
発病は今から3年前の2012年、娘が小6の春のことでした。私が娘の痩せていく異変に気づき、体重を測り始めたところ、一ヶ月で5キロ減。これは只事ではないと総合病院を受診しました。
検査の結果は、小腸大腸型の中等度のクローン病と診断(生検にて非乾酪性肉芽腫も検出され確定診断)され、そのまま入院となりました。この時の入院は中心静脈から2000cal/日の点滴(IVH)による絶食と、ペンタサ500mg2錠×3回/日の治療を受け、症状は改善、3ヶ月で退院となりました。
退院後は低脂質低残渣食を1日1回(昼弁当)のみ、他はエレンタールボトル300mlを一日4本から5本、経口で、ミヤBM2錠とペンタサ500mg2錠×3/日を守って生活いたしました。
この頃 夫から松本漢方クリニックの漢方治療の話は聞いておりましたが、巷にある多数の「これに効く!」的なものと一緒に受け止めてしまった事と、なにより私が医療人だった為に西洋医学を疑う事がなかったことで、受診には至りませんでした。
退院して9ヶ月後の中学1年の5月、今度は発熱後に痔ろうが発覚(CRP4.
4)。その日の内にドレナージの手術を受け2度目の入院となりました。中学受験のストレスによる再燃だったと思われます。この2度目の入院はIVHとドレナージ2本(早期に1本抜けて娘の痔ろうの程度にはちょっと足りなくなった)でCRPは1.0くらいまでに下がりましたが、そこからなかなか下がりませんでした。
主治医からは、短期間での再燃ということでクローン病の活動性が高いと判断され、痔ろうにはレミケードが良く効くとの事で、レミケードと免疫調節薬への薬の変更を勧められました。何度か治療の説明を伺いましたが、
(1)レミケード投薬前に膿瘍を叩く前処置でステロイドを投与する事。
(2)レミケード投薬後は感染力が弱まるので結核の予防薬も平行して飲み続ける事等々・・・。
こちらから聞くまで話には出てきませんでした。また、レミケード使用に付随する物を一括りとして考えるには一つ一つが重すぎました。小出しに出てくるビックリな現実でした。しまいには、レミケード投与の予後について主治医に伺ったところ 10年後はスタディ中と、なんとも正直な答えに唖然としていたら、「効かなくなったら、ヒュミラもあるし、その後も治験がある。レミケードが嫌なら、抗体の出来ないヒュミラからでもいいよ。」(10代初めの娘に難病だから仕方ない?そんなに沢山の薬を一生飲んで、膵臓や肝臓の機能は大丈夫?駄目なら突然中止して手は無いとか言って、手術とか言われたりするんですよね? 現実にそういう方が居たし・・・。)と、泥沼にはまった様な恐怖と心の叫びは飲み込んで、専門書から薬と治療法とデータ、インターネットから患者さんの情報を調べました。
娘と夜逃げしたい程に主治医と治療法で切羽詰った状況のなかで、 G-キャップ(白血球除去療法・・・人工透析で顆粒球単球を除去・・・膿瘍有り、コントロール出来ていない場合は禁忌)に気づき、痔ろうには効かないと言われましたが、痔ろうに効いた症例を見付けて、ドレナージのやり直しとG-キャップを強く希望し1WEEK2回法で10回施行して頂きました。G-キャップは発病して一年以内の患者に効果が高い事。CRPが1以下である事が適応していた為か、運よく娘の複雑痔ろうにも効き、内口が閉じて単純痔ろうとなりCRPも(-)となって退院することが出来ました。当時高校生の娘さんを持つお母様のブログを見つけ、数回やりとりさせて頂き、実際に松本漢方クリニックへ通院されている方が現実にいることを確認できたので、退院後すぐに松本漢方クリニックを受診させて頂きました。
松本漢方クリニックでは鍼をして頂き、痔ろう用の軟膏2種と漢方薬3種類、お灸に漢方風呂薬を処方して頂きました。便の形状は直ぐに改善され、排膿は変わりませんが、ドレナージしている外口の赤みは直ぐに消えました。ペンタサは1ヶ月の段階を踏んで止めましたが、リバウンドは目立ってありませんでした。(G-キャップの 効果は3ヶ月程あると書かれていて、娘にはこれがうまく働いていたのかもしれません。)
余談ですが、クローン病の診断と治療の本には「ペンタサについて臨床的症状が改善を認めている症例は多数あり、効果が期待出来ると思われるが、ペンタサには寛解導入、維持療法とも、有効性は確認出来なかった。その効果には疑問の点がある。」と書かれています。免疫学の先生の出されている本にも、「急性期の一定の期間、薬を使用するのもやむをえないが、早い段階で服用を止めないと難治化する。ステロイドを使用している場合でも、服用中止後は半年から1年位の間に何度かリバウンドを繰り返すが、治癒反応ですから心配いりません。免疫力が高くなれば治癒に向かいます。希望を持ちましょう。」と書かれていました。服用中止からは 松本先生と同じデスネ。
実際、寛解期の初回退院から2回目入院までの9ヶ月、娘が飲み続けたペンタサは確かに寛解維持の助けにはならなかった様です。しかし、今考えてみれば、初回入院時小児だからとIVHを中心に治療して下さった事にとても感謝しています。最近は初発からレミケードを使用する病院が増えているようです。
次に来た試練は、便の形状が固形に変わった事で、一年以上エレンタールと低残渣食で酷使されてこなかった肛門は裂肛となり、便器が赤くなる程出血をみました。頼りないネコちゃん程の細い便でしたのに、肛門は耐えられなかった様です。ステロイドが入っていない軟膏を排便毎に次の排便をカバーする為に入れました。2週間程のスパンで出血が消えては、軟膏中止をトライ、の繰り返しが2、3ヶ月程続きました。(裂肛もこれまた厄介で繰り返すうちに傷が瘢痕治癒し肛門が狭窄してしまうらしいです。狭窄も怖い。)
自然のバランスは一度崩れると思いもしない事が起きてきます。肛門病変のオンパレードになりました。しかし、進む道は自然に戻すのみです。漢方治療を始めて、3ヶ月が過ぎた頃(G-キャップの効果も消えた頃)、裂肛の出血も暫く見なくなって、もう大丈夫とちょっと過信していた年末年始。食事を急に普通にしてしまったところ・・・少し痔ろうに硬結を認め、便潜血が+になって再燃の気配が出てしまいました。(これがリバウンドだったのかもしれませんが・・・)
やはり体調のペースはそれぞれと感じ、慎重にする事にしました。あれから2年、毎日漢方薬を飲み、鍼は1週間に一度程近くの治療院で行っています。お灸は1年間位続けました。娘の腸は2年前にリセットされ、赤ちゃんに戻ったと考えることにして、ダメな物は暫くして再度試す等、食事は2年かけて徐々に進めてきました。エレンタールも徐々に減らしていきました。(二年は長いと思われますか?心配ありません。本当に自然な生活の中ですから、あっという間でした。)今はお蔭様で、揚げ物は控えていますが、それ以外は焼肉・カレー・ピザ・ラーメン・ケーキ・アイス・チョコレート・スタバのフラペチーノ(自慢にはなりませんがLサイズ)を家族や友達と普通に食べています。(将来、うどん屋さんでしかデート出来ない・・厳しいな・・と、笑い話でなく切実に心配したものです。)痔ろうについては、クローン病の合併症に違いないのですが、こちらの治癒は別物と考えた方がいい様です。(広がっていかなければ慌てず、かなり気長に待った方がいい様に思います。)
娘の痔ろうは複雑から単純痔ろうになったとはいえ、高位にある深く大きい物でした。近くの大きい肛門科の病院で良い状態の時に3本から2本へ減らしてみた事もありますが、排膿がうまくいかなくなり、重力に従い膣の方向に向かって拡大してしまいました。炎症が波及すると、膣ろうに至るのは早く、膣ろうはそれこそ閉鎖しづらくなる事も学びましたので、娘にはしっかりとしたドレナージが必要と判断。1年半前からクローン病の痔ろうの症例数の多い外科で3本の太いドレーンにやり直し、3ヶ月から6ヶ月に一度、ドレーンの入れ替えと共に排膿の邪魔になる不良肉芽を掻爬して少しずつ小さくしています。
これも余談ですが、痔ろうはレミケード使用者と未使用者の3年半後の閉鎖率には違いがなかったとのデータもありました。
先日、娘がMRI等久々に検査した結果、外科の先生によると「裂肛も消えて、良好で腸の広がりも良く柔らかい。クローン病の症状は終息傾向にある様で、痔ろうも外口近くの浅いところのみになってきている。今回 ドレーンは1本抜いてみた。残りあと2本も1年位で取れるのではないか。」と言ってもらえました。排膿も僅かになってきています。漢方風呂にきちんと入っていれば、もう少し早く治っていたかもしれません。正直、日々忙しく入れても長く入らないので、滞ってしまいました。松本先生ここはお許し下さい(笑)
入院中に知り合った10代のお子さん達の中には短期間にお薬が進んだ方や潰瘍性大腸炎においては大腸摘出になった方が数人もいらっしゃいました。あまり進んでない安定した方数人に松本漢方クリニックで治療をしている話をお伝えしてみましたが、漢方治療の事は知っていても薬を長期に服用されている方はなかなか決断が難しいようです。娘の経験上、悪くなって入院してからでは、選択の余地が少なくなり、それは突然やってきます。選択の余地の有るうちに情報を収集し、考えて行動する事はとても大切であったと反省しております。娘も2年前に再燃していなかったら、危機感もなくペンタサを飲ませ続け、自らの免疫に蓋をさせて、血液検査には出ない程度でも少しずつ病状を進ませ、低残渣低脂肪食で動かさない腸(腸は筋肉です)は薄くなり、硬くなっていたかもしれません。実際、大腸摘出手術を受けた子供達の腸はペラペラだった(ペラペラで穴が開きそうだったから、摘出して良かったと思う)と言っておられました。失礼にも、食べなかったからペラペラになったのでは?と悲しくも考えてしまいました。地元の主治医はレミケードを断りG-キャップをお願いした時、「小腸に狭窄や穿孔等々の合併症が出来てからでは大変。娘が可哀想だ」とおっしゃいました。親として重い責任を感じつつの決断でしたが、あれが娘の人生の大きな分かれ道でした。初回入院中、漢方の質問を主治医にしたところ、「そんな事を前にも言った人が居たが受診しなくなった。」と、残念そうにおっしゃってました。その時は、親の独断で治療を止めた子供を私も心配に思いましたが、今思えば、そのお子さんは現在普通に元気に暮らして居るのかもしれません。(違う治療を選ばれて、良くなった人が、あえて前の病院に報告に来るなんてあまり考えられないからです。)また余談ですが(私が大学を卒業した当時、C型肝炎は、nonAnonBと呼ばれて、AでもBでも無い肝炎として治らないと学びました。あれからうん十年、今では治る方が多くなりました。)「一生治らない」と誰が決めたかわからないが、誰かが決めたクローン病の定義。この定義を大多数の方が最初に聞かされ、信じて、治ることを諦めています。肝炎の様に10年20年後に、今この常識になっている定義は変わってくれているかもしれませんが、現患者の病状は、10年後には変わってしまっています。クローン病は本当に人それぞれの症状で・・・治療の選択に深く悩まれている方、治療を切り替えて厳しい戦いを乗り越えていらっしゃる方、情報を少しでも知りたい方、沢山いらっしゃると思います。別の治療法で乗り越えて、元気に暮らしているクローン患者が結構居て、マユツバで無く、立派な治療法が選択肢に有る事をもっと知って頂きたいと思いました。診断を受けて3年、ペンタサを止めて2年が過ぎました。松本漢方クリニックが遠方である為、月に一回は今も入院していた病院へ検診に行っています。CRP(-)、便潜血(-)、リンパ球40%前後。その病院でも特定疾患は18歳で外されてしまうだろう。と言われました。クラススイッチはニキビ有り、便はネコちゃんのウンチからワンちゃんのウンチの太さになりました。中堅の進学校に通い、親に成績を叱咤激励され(これは本当にいけないとわかっています。)普通のストレスを持ちつつも、お蔭様で普通に元気です。経過報告にしては、申し訳ない位長くなりましたが、娘の記録と調べた本のデータを元に、当時のことを正確に書きました。ここまで治療して下さった、松本大先生、若先生をはじめ、手記やブログを書いて漢方治療の現状を示して下さった方々(ちゃまはらさん、タニクちゃんさん、ノロコさん、うらっきーさん、Naokiさん他)この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。私と娘のこの3年も、どなたかの参考になり、一人でも多くの方が普通の生活に戻れる事を願っております。