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分子軌道計算

       

抗酸化力の予測(フェノール類)(化学,薬学,IT)

スマホでNMR解析(ChemDoodle)(化学,IT)

MOPAC7の実行 (化学,IT)

分子計算屋泣かせの化合物(化学,IT)

パソコン作業の自動化 (IT)

NMRの化学シフトを非経験的MOで予測 (分子計算, PC版)

Windows7 (64-Bit)でGAMESS並列処理(IT, 分子計算)

Avogadroを使ってPM6計算を実行 (Intel Mac) (分子計算,IT)

フリーウエアで非経験的分子軌道計算を実行(Mac)

最近のパソコンの驚くべき能力


分子計算データベース


分子軌道計算によって得られた分子の最適化構造は、三次元座標 (Z-matrixやcartesian) があれば立体構造表示ソフト (Chem3D等)を用いて容易に表示することができる。フリーのソフトとしては、分子軌道計算の入力支援ソフト (Winmostar等) や単結晶X線解析のために作られたソフトが使用できる。原子間距離、角度、二面体角等を調べるにはこれで十分である。したがって、原子数プラスアルファ程度の行数のテキストファイルを保存しておけば十分である。
 しかし、投稿論文の追補データとして公開する場合、閲覧者がMOPACやGaussain等の計算環境を所有しているとは限らない。電子的データを再現するには構造最適化を実施しない計算処理が必要である。そこで、出力ファイルそのものを研究室ホームページで公開することを考えたが、投稿誌の出版社が公開しているような恒久的なデータベース (supporting information) には成り得ない。そこで、Googleのドキュメントを利用することにした。現在、共同研究者のみで共有し、閲覧できる方式をとっているが、投稿データについては整理後、公開するつもりである。

工事中

分子計算について


平成の世になる前は,九州の大学では,九州大学大型計算機センターに出向かないとスムースに計算機を利用することはできなかった.単結晶X線解析を行うには,大型計算機を利用する必要があり,計算機が専門ではない有機化学者は一から勉強する必要があった.苦労して修得した計算機関連の知識を有機化学に生かせないかと思い,いろいろ調べてみると当時CNDO/2という半経験的分子軌道計算を利用して物性研究を行っている物理化学グループがあることを知った.
 早速,物理化学研究室(九大薬学部)の小野先生にお願いしてプログラムをコピーさせてもらった.当時は,すべてカード(1枚のカードに80文字,数百〜数千枚)を読み込ませて計算していたので,データをパンチするためセンターに通う必要があった(マークシートで塗りつぶす代わりに孔を空けていた).
 周辺環状反応の研究をしていたので,有機電子論に代わりにフロンティア軌道論を利用するのは必須であり,HOMO, LUMOの軌道相(軌道のエネルギー準位,係数の大きさ)を知る必要があった.当時は合成化学者が分子軌道計算等をするのは邪道で専門家に頼むのが普通であった.分子軌道計算を自分で実施したいという願望があったため,教授に気付かれない様にX線解析の合間にこっそり勉強し計算を行った.計算結果が投稿論文に載る様になるまでは紆余曲折があったが,それなりの実績を上げることができた.
 分子軌道計算結果は,もっぱらX線解析データと共に反応機構を議論する際に使用してきたが,教授に就任した際に,純粋に計算化学だけの論文を日本薬学会の欧文誌に投稿した.ところが,この種の論文は薬学領域には必要ないということで掲載不可になってしまった.その際,編集委員長から「自分はそうは思わないが・・・・」という手紙をもらった.勧めに応じてTetrahedronに投稿し,掲載された.その後,1998年に分子軌道法,密度汎関数法がノーベル賞を受賞した頃から,分子軌道計算にケチをつけるレフェリーはいなくなった.
 現在は高性能パソコンや並列処理計算機を利用してGUI方式で簡単に分子軌道計算できるようになった.しかし,分子計算用のシステムは導入し計算化学を始めたという話しを聞くわりには計算結果を活用している論文は少ないといっても過言ではない.何のために計算するかを見極めてサーバーやプログラムを購入しないと無駄になってしまう.科研費で購入したがほとんど使用していないという話しをいくつも聞かされている.予算が有効に使用されていない典型的な例かもしれない.


分子軌道法による反応機構の解析


反応機構を明らかにするには,以下のような方法がある.
分子軌道法による解析結果が他の手法と組み合わされて利用されるケースが多い.

1) 生成物の精査による方法:複数の生成物の構造から中間体や遷移状態を類推する方法である.その際,既知の類似反応が大きな手がかりなり,主に有機電子論を用いて議論される.

2) 反応速度論的手法:反応次数,活性化エネルギーやエントロピーを求め,さらには置換基効果や溶媒効果などを含めて,中間体や遷移状態を類推する方法である.その際,アイソトープ効果等も考慮する場合もある.

3) 分子軌道法;定性的には,周辺環状反応等の領域では福井博士のフロンティア軌道論やウッドワードーホフマン則が電子論に代わる理論として受け入れられている.パソコンの普及により,HOMO, LUMOの軌道相が容易に計算でき,さらにはGUIで視覚的に捉えることができる様になり急速に普及している.定量的には,構造最適化を含めた分子軌道計算により,中間体,遷移状態の構造や反応障壁,反応経路等を直接求める計算方法が開発され,計算機の小型化,高性能化により実験室の片隅で反応シュミレーションが可能になった.1998年度のノーベル賞を受賞した密度汎関数法は小さな計算機資源で実行できるため大型のコンピュータセンターを持たない小規模大学の研究者の間で注目を集めている.さらに最近では,力場計算が主流であった生体高分子にまで半経験的分子軌道計算を適用する動きが台頭しはじめている.


計算化学に関する質問

薬学6年制コアカリキュラムにおいては,有機化学の講義は1年次から4年次まで必修として開講される. ところが, 毎年教員の間で, 話題になるのは学生の知識集積度の低迷である. 各試験が終わるとリセットされてしまう現実をどうするかである.
  前年度後期試験における芳香族性の問題は, ほとんど Huckel法で考えることができる化合物を出題したが, 理屈抜きで暗記しているため, 過去問以外の化合物は答えられない学生が見られた.
  しかし, このことは学生に限ったことではなさそうである.  ある国立大学の有機化学の先生から問い合わせのメールが来た. 問い合わせの内容は, pyridine N-oxide (PyN+-O-) の取り扱い (電荷の指定) に関するものであった. 窒素はプラス, 酸素はマイナスに荷電している形で描かれる. 分子軌道計算する際は, 荷電状態に応じて, charge=1 とか charge=-1 のように指定する. 当然のことながら, charge=2 の場合もあり得る. 中性分子は, charge=0 であり, 指定する必要がない
  質問者の先生は, charge=1 と charge=-1 を2個指定したということであった. 電荷の指定は要らないという返事をしたが, 計算結果については確認しなかった. 分子の取り扱いもさることながら,計算機処理の考え方にも問題がある. 計算プログラムの中味を理解する必要はないが, 同一の変数に2回数値を代入したら, 前のデータは上書きされることも理解していないということになる.
  最近は、”素人でも簡単に分子軌道計算できます”と言って, 高価なGUI支援による分子軌道計算プログラムが数十万円で売られている. しかし, 購入したものの, 研究に活用し, その成果を投稿論文として公表している人は少ない. そのためには, 計算結果を第三者的に検証できる能力が必要であることは言うまでもない.

[一言] 計算化学を含む論文審査の場合, レフェリーの選択はきわめて重要である. 計算の経験はないが, 耳学で物知りの学者に審査されると先入観が優先し悲劇である. コストパフォーマンスを考えてくれない. HOMOエネルギーの概略値を知りたい程度なのに半経験的手法は当てにならないと高度の計算を要求する.また,かなり偉い先生が ab initioではある種の物性値が計算できないと言っていた。 実際は、 専門家に依頼した計算結果(リスト)上、 表示されていないだけであった。

最近のパソコンの能力

分子間のedge-to-face相互作用をもっと簡単に計算できないかと常日頃思っていた。
Allyl methyl dithiocarbonateとphencyclone付加体の結晶構造に於いて、興味深い分子間edge-to-face相互作用を見いだし、2000年にTetrahedronに投稿した。
 その際、PM3による再現を試みた。しかし、満足のいく結果は得られなかったが、半経験的分子軌道計算の限界を知る上で必要と思い、論文に付記した。そ れから9年が経った。MOPAC2009が開発され、アカデミックユースはフリーということで、使用してみた。当研究室の硫黄化合物の転移反応に於いて は.反応障壁(生成熱の差)において問題があるが、edge-to-face相互作用の再現は見事である。早速、自宅のWindows環境で計算を試み た。構造最適化の過程で、くずれることもなくダイマーX線構造を再現することができた。また、edge-to-face相互作用は1.0 kcal/mol程度といわれているが、1.23 kcal/molであり、非経験的手法に近い。

128原子、189サイクルに要する時間は下記の通りである。
1)Pentium IV 3GHz          11 min 23 sec
2)Core2 duo (mac mini) 2GHz     6 min 37 sec
3)Dell Precision 2.66 GHz       4 min 59 sec

分子内相互作用についても既知の物質について計算を行ったが、満足いく結果であった。そんなに遠い昔ではないSUNワークステーションの時代がなつかしい。
実験室の片隅で、分子軌道計算が迅速に実行できる時代がついに到来したことを実感する結果である。後は、どのように使うかである。ネタは化学現象であるので、日頃勉強しておかないと計算するためのアイデアが枯渇する。

2009/10/11


GAUSSIANの計算に使用しているサーバ

並列処理計算機

半経験的分子軌道計算はパソコンを使用