今年3月まで,私立の新設薬学部に5年間勤務した際に経験した話である. 試験前になると大勢の学生が質問にやって来る.「熱心でいいじゃないか」と言う人もいるが,実際は問題の先送りに伴う一夜漬けの産物である.過去問の模範解答を訊きにくるケースがほとんどである.
講義の後,その度毎に尋ねてくれたら,こんなに集中することはないと文句を言いたいが,言ったら不親切な先生の烙印を押されるので,思っても言わないこ とにしている.最近はオフィスアワーなどなきに等しいといっても過言ではない.オフィスアワーなしで随時受け付けている教員が居るので,制限すると目立つ 風潮ができてきたということである.
私は,学生のすべての質問についての回答や追加説明をWEB上に公開し,疑問点,知識を皆で共有している.ある日,学生が質問にやって来た.その質問な ら,webに掲載しているよと言ったら,見ていないとのことであった.さっそく私のパソコンを使って見せてやったら,けげんな顔ををしている.いろいろ話 しをしているうちに原因がわかった.学生は文字検索をしないのである.
学生に実際に検索してもらった.その学生は教科ホームページに入らず,Googleの検索を始めた.それも文字検索ではなく,画像検索であった.いきな り,Diela-Alder反応を画像で検索するのである.びっくりしたが,今風と言ってしまえば,そうかもしれない.学生が帰った後,自分でやってみる と私が公開している教材の画像が次々に表示される.画像だけであるから断片的であるが,それを手がかりに前後の説明に行き着けるわけである.
最近,液相画面を指でなぞると本のページをめくるように読めるという機能を持った薄型端末が発売された.伝え聞くところでは結構人気があるようであるが,それで本を読むようになり,勉強するとは思えないが,情報に到達するきっかけにはなりそうである.
(平成22年7月13日)