熊本市内で内科,小児科の医院をしている親戚の話である.
かなり前に, 医薬分業に踏み切ったが, 2年と続かなかった. 医薬分業を持ちかけた調剤薬局経営者はビジネスとして成り立つと思ったようであるが, 従来型医療に慣れた患者の心は読めなかったようである.
多くの患者さんが, それまで医院でもらっていた薬を, すこし離れたところに開局した調剤薬局へ行って薬剤師からもらうことになったのは, 健康保険システム上そのような手続になったと思ったようである.ところが,実際は不完全医薬分業であることに気付くと, そのデメリットばかりが目に付くようになったようである. 特に高齢者にとっては, 面倒な二度手間であり, 支払う薬代も高くなり,何もよいことはないと言っていることが間接的に伝わって来たとのことである.
服薬指導, 重複投与のチェック等を含めた医薬分業の必要性を熱っぽく説いても, 狭い地域社会で構築されてきた医者ー患者の信頼関係を解消してまで調剤薬局(薬剤師)が入り込む隙間はないようである.
我が国においては, 昔から医師が診断し, 薬を調合し, 患者に渡してきた. 患者は医師が危険なものをくれるとは思っていない.
医薬分業が叫ばれるようになって久しいが, 問題も多い. ある医薬分業先進県の薬剤師会は,この時とばかり張り切りすぎて, 副作用を懇切丁寧に説明し, 失敗した話は有名である. 患者は信頼している医師がそんなに危険なものを自分に飲ませていることを知らされ, 医師に文句を言ったそうである. 当然のことながら, 医師側からの抗議で, 服薬指導の難しさを自覚したようである.
処方箋から病名を推量することしかできない現状を改善するには, 医療従事者が共有できる電子カルテの普及が緊急の課題と思われるが, その前に, 真の薬の専門家として信頼される人間性と対応能力が必要である. 6年制教育はそのために敢行されたはずである.
[一言] 国民が,何がしかの金を払ってでも,服薬指導を受け,薬歴を管理してもらうことが当たり前のことであり,健康維持のために必須と思うようになるにはそれなりの教育と時間が必要である.しかし,一方では医薬分業や薬剤師不要論があるのも事実である.