「The HiddenTreasure われは妹思ふゆえに芋あり」

ドクタージョハンセンすら絶賛!

ドクタージョハンセンだ。諸君らも知ってのとおり、儂はインテリ系ジャガイモが一翼、由来は……なに、知らない? 聞いたこともないだと? なんと無教養な! 嘆かわしい!! ……フン、不承不承ながら引き受けたこのブックレビューの仕事も、そんなわけなら正解だったと言えような。自らが貪り食っている我らジャガイモの名も満足に知らぬ愚かな人間どもよ、そんな貴様らにこそこの本を勧めよう。

儂が直々にレクチャーしてやろうから、座して聴くがよい。


その①人間が書いている

まずこの本は、人間の、人間による、人間のための、ジャガイモの本だ。ジャガイモ言葉で書かれてはおらんから、貴様ら人間も安心して読むがよい。植物言語もわからんとは人間も不便なものよ。まったく、脳が足りぬのではないか。


その②すべてジャガイモのことが書かれている

この本には合計19編の小話が収められているが、そこに登場するのはすべてがジャガイモである。人間どもには残念なことかもしれんが、我らジャガイモにはよろこばしい。登場する品種を数え上げたところ、18種であった。なかには旧き同胞もあり、懐かしい気分になった。


しかしながら不本意な点もある。まずはこの本の主題が「愛」だの「恋」だのに偏っている点だ。まったくくだらんが、これは儂の好みであるから声高には言うまい。我らジャガイモの想いを知りたい者は読むがよい。

次ぎに、彼奴等はすべて妄想でこれらの話を作ったという点だ。我らの生態を把握し理解しているような顔をしているが、その実、この作者らもそのあたりの人間と同じく、ジャガイモ言語も操れず、従って我々ジャガイモと言葉を交わすことはできない。 にもかかわらずこのように妄想の翼をはためかせ、そのうえ真実に近いところへ(ただし真実ではない)迫るその想像力、それを本にまとめようとするその情熱。人間というのはまったくわけがわからず恐ろしいことをする。だがとにかく全力であったというから、その点は評価できよう。そしてこの本を読み、儂らジャガイモの姿に心惹かれた者はぜひ儂のもとへ来るがよい。このドクタージョハンセンとともにインテリ系ジャガイモの一味として暗躍……いや活動しようではないか! さすれば儂の試みも一発逆転……いやなんでもない。多数の応募待っておるぞ!!

レビュアー
ドクタージョハンセン さん

「The HiddenTreasure われは妹思ふゆえに芋あり」(文野華影 他)

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