読書感想文の宿題があるから読んだ。雄大くんのまじめなところとずるいところ、ちんこのことばかり考えてしまうところに僕は大いに共感した。雄大くんは22歳で、中学生の僕とはちょっと年が離れているけど、友だちになりたいなあと思った。
雄大くんは浅草で人力車のバイトをしている。雷門の前で客引きをするようすは僕にも見覚えがある。やたら気さくで美男子揃いで、僕にとってはなんとなくうさんくさい存在だった。
でも本を読むうち考えを改めた。「ほとんど水商売」だというバイトはけっこう大変そうだし、雄大くんはまじめに取組んでいる。朝早くから人力車の整備をし、観光案内の勉強もする。二日酔いで調子が悪くても朝からカレーを食べてバイトに向かうし、俥夫の格好に着替えるとしゃんとするという(僕はこの作者の本をいくつか読んでいるけど、まともに勤労意欲がある主人公は初めてじゃないだろうか)。
また雄大くんはむかしの恋人や友だちに「気にしすぎ」「考えすぎ」と言われたことをずっと「気にしている」。走ったり歩いたりしながらいろいろなことを思い出している。といってもうじうじ悩んでいるというふうではない。雄大くんはひとつひとつあたまのなかで広げ、分解し、手ざわりやにおいをたしかめ、自分のなかのあるべき場所に整理しようと努める。恋人のおじいさんとケンカになったときも、何にイライラしたのかちゃんと考えようとする。頼もしいし、いいなあと思った。
人力車は車だけでも百キロ近くあるらしい。でも「いったん走り出すと慣性の法則で、車輪は勝手に進んでくれる」という。「車輪がおれを押す」、「体ひとつで走るより、ラクに長く走れた」。悩んだりケンカしたりすることは生きていくのに必要だし素敵なことなのだ。とても励まされたしほっとした。
ただ僕は納得いかないのだけど、雄大くんはおじいさんとはなかなかセックスしないのに(言っておくけど早くエッチなシーンが読みたかったわけではない)、バイト先の先輩とはしょっちゅうセックスしている。しかも先輩は結婚していて子どももいるのだから不倫だ。「おまえは別腹」とか「浮気すんなよ」とかメチャクチャなことを言われても雄大くんはすぐうれしくなってしまい、これはとてもよくない。コンドームをつけようがつけまいが浮気は浮気なので、もっと反省したほうがいいし、早くおじいさんひとすじになるべきだ。