「ランガナタンの手のひらで」

森司書のイチ押し!

私、市立図書館に勤めております、「森」と申します。え、もり・きよしと同じ苗字?そうなんですよ!マニアックですね~。もちろん森ミステリも好きです。え、聞いてない?

そうそう、今週の見計い選書で入ってきた新刊『ランガナタンの手のひらで』。え、ランガナタン?!って、思いますよね、司書なら!ちょっとテンション上がっちゃいました。でも、一般の方にはあまり通じないような……。しかも著者はこれまでコピー本しか作ったことがないっていうし、知名度はほぼゼロ。表紙や装幀はすっごく素敵だけど……うん、表紙のイラストがすごく素敵!うーん、でも、あんまり多くは貸出されないんじゃないかなぁ。ともかく、読んでみましょう。

物語の舞台は、市立図書館の分館「浜風分館」。主人公は嘱託司書の赤坂美織ちゃん、通称みおりん(本人は嫌がってる)。そうそう、今日び図書館も正規職員って少ないんだよね。世知辛い世の中よ……。

統括担当の本館とちょっと考え方が違ったり、日々の業務の内容とか、なんだか図書館の描写は結構リアル。でも「市町村合併で市立図書館の分館になった旧村立図書館」という細かすぎる設定、だれか気にする……?っていうか、「図書館学の五法則」まで載ってるし。まあ、いいでしょう。

美織ちゃんの勤める浜風分館に、ひとりの新人嘱託司書さんが本館から異動してくるところから物語は始まります。その子は24歳、美織ちゃんと同い年の、女の子。でも、少し他の人と違う特性を持っています。分館統括担当の栞さんはじめ、個性的な浜風分館の面々は彼女を自然に受け入れ、そして、物語は展開していきます。

タイトルからして図書館のマニアックな話なのかなと思いきや、友情あり、恋愛あり、家族の中での葛藤もあり、いろいろなテーマの含まれた、なんだか、一言では言えない話かも。文章はわりと平易で読みやすいし、大仰な感じではないから、長さのわりにサラッと読めるかな。個人的には、主人公の美織ちゃんが一見、クールないまどきの子なんだけど、結構フラットな視点を持ってて、周りをよく見ていたりとか、出会う物事に偏見をもたずに受け止めていくところが魅力的かなと思いました。

『ランガナタンの手のひらで』、なかなか良かった!選書は本館に1冊、分館1冊、あと、思い切って自動車文庫に1冊入れて、計3冊でどうですかね、館長?万が一、予約がたくさんついたら、補充購入しまーす!

レビュアー
森司書 さん

「ランガナタンの手のひらで」(伴美砂都)

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