「火竜の僕は勇者の君と一度も言葉を交わさない」
ちい(春から上京)のイチ押しです!
私は昔から小説を読むのが好きでした。
両親が読書好きだったので、家に積まれている本を見ているうちに、自然と手に取るようになっていたのだと思います。
まるで息をするのと同じように、活字を読んで、物語に浸る。
そんな生活をしていた私にとって、どうして自分は小説を読むのだろうか、という問い掛けは思いも寄らないものでした。
この小説の作者は、どうも私とは逆だったみたいです。
あとがきで、小説が好きではなかったと打ち明けているのですから。
空想の世界にすぎない小説を、それでも求める人がいる。
作者は、そのような小説を不思議に思い、興味を抱いてこの物語を書いたそうです。
勘違いだったら恐縮なのですが、この物語は様々な角度から、「小説」のことを書いている気がします。
私達は「小説」を読むとき、時には、物語の登場人物になりきって、その気持ちに寄り添います。
また、まるで空から眺めるように、一定の距離を置いて物語を見つめたりもします。
終わりがつらくなったら休憩を挟んだり、現実が忙しくなったりすると離れてしまったり。
そんなある意味身勝手なふれあい方も、小説は許してくれます。
まるで古い時からの、気心の知れた友人のように。
さて、ネタバレにしたくなかったので、抽象的な言葉ばかりが並んでしまいました。すいません。
ここに書きましたレビューは私個人の解釈です。
読む人の数だけレビューはあると思います。
お読みになった方は、ぜひ自分の言葉で、自分の感想をしたためてみてください。
私にとって、この物語は大きな充足感をもたらしてくれる作品になりました。
読書量は確かに多かったかもしれない。
でも、時間が経つにつれて確かに、忘れていったものがありました。
その忘れかけていたものをそっと思い出させてくれる。
私の気づきがどれだけ遅くても許してくれる。
そんな優しさのある物語だと私は思います。
ちい(春から上京) さん