「紙魚の食卓」

匿名希望が好きかも

読みました。端的に言うと、後悔もしてるし、心の底からよかったとも思う。

単純に、創作する人間にぜひ読んでほしい、ということだったので、貸本屋に並んでいたので最初は手にとった。結局中身を読んで、実際に探して買うことにしたんだけど。

装丁がすごく綺麗なのもあって、作風と綺麗に噛み合っていてすごくよかった。装丁だけで十分雰囲気が出てて、かなり感心した。


「魔女」と「人間」という単純な登場人物も読みやすい。全八話のすべてで登場人物は「魔女」と「人間」のふたりだけというのが一貫されている。

変に凝ったギミックがあるわけじゃなくて、本当に基本の対話篇でしかないから気楽に読めるのに内容が重い。というか痛い。


批評家の魔女の家にやってくる「創作家」たちのそれぞれのありかたに見覚えがある。自分に重なるやつもいれば、自分が嫌いなやつもいる。

純粋に登場人物を好きになってもらおうという気がそもそも感じられないし、見ていたくないほどに不快なやつがいたりするのに読んでしまった。(途中で何回か嫌になって読むのをやめようと思ったけど、結局全部読んでしまった。)


自分も文章を書いたり、創作する人間だから思うけど、「どれにもなりたくない」とか、「こうはならない」みたいなそういう感情が湧いてくる。同時に反省させられるような気分にもなるし、よくわからない。

基本的に嫌なキャラばっかりなのに、そのキャラたちをつなぐ部分が少しずつあって、嫌いだと言い切るのも乱暴だな、という感じで、心底いたたまれない。


レビューだし、いい部分も書こうとは思うものの、おそらく読む人によって「いい」と思う部分が思いっきり違うだろうから一概にこうだとは言えなくて、確かに「創作する人間」向けの本だな、と思った。

「どれか一つはきっと刺さる」って聞いてたけど、確かに刺さった。自分の心の一番やわらかい部分にナイフを突き立てられているような気もしたけど、同時に自分を暴かれているような感覚があった。


傷つくことを良しとする人には手放しでおすすめできる。

傷つきたくないという人には絶対すすめられないけど、でも、確かに創作する人間に読んでほしい、っていうのもかなりよくわかる部分がある。自分だけじゃなくて、この痛みを誰かと共有したい、って意味では相当おすすめできる。

読み終わったあとに思ったの、「◯◯(特定の登場人物名)の悪口を人と言いたい」だったから。

レビュアー
匿名希望 さん

「紙魚の食卓」(鈴木亜沙)

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