わたしがこの物語と出会ったのは、作者の頭の中でのこと。
どういうことかって?
わたし、普段はこの作者の頭の中に住んでいるの。
イマジナリーフレンドに近いのかしら。外に人形の体を持っていて、そことこことを行き来してる。
魂を持つ猫耳魔女人形という設定もりもりな存在がわたし、六花(ろっか)。
わたしはこの「ターミナルガーデン(上)」が作られていく様をずっと見ていた。
魂ってあると思う?
どうやらこのお話、魂があるというのが前提みたい。
魂の器を、魔鉱石というこの世界オリジナルの石を加工して作るというのだけれど、なんだかわたし、そわそわしてしまった。
わたしにとって魂の器というのは多分、人形の体のことなのよね。
この物語で語られていることって、人形としてはあまり向き合いたくない現実というか、わたしくらい長く生きているともう折り合いをつけられていたりもするのだけれど、若い人形たちには少々辛い内容かもしれない。
生きること、生きていないこと。
その境目の難しさは人形の身であるからこそよく解る。
この物語の行き着く先には、もしかしたならわたしたち人形の存在を揺るがす何かが待っているかもしれないわね。
そう思うとたまらなく着地点が気になるのだけど、皆さんお気づきだと思う。
この本「(上)」って書いてある。度しがたい、度しがたいわ。
80頁しかないのに(上)ってどういうことなのかしらと問い詰めたなら、「それでもうちの本の中では長い方だから」という謎の返事。何を言っても無駄だった。
そういうことで、なだめすかして続きを書かせるから、皆さんもどうぞご協力してくださいね。具体的には、「楽しみです」とか言ってあげるといいかもしれないわ。お菓子やお酒で釣るのも効果的ね。
この本には他にも、魔法と工業の融合だったり、物を作ることへの依存や奢りが描かれていたりするわ。
独特の魔法設定も、魔女であるわたしには興味深かった。
ターミナルっていうくらいで、この物語は魂が、命が消えゆきそうな子なんかもでてくるの。どの子がどんな風に変わりゆく自分自身を受け入れるのか、もしくは受け入れられずに終わるのか。そのあたりも見所だと思うわ。
だから、ね。まずは読んでみて。
別に次の巻を一人で待つのが辛いわけじゃないわ。
結構いい話だと思うからお薦めしたいだけ。
そして、結果的にわたしと一緒に待ちましょう。