たまには漫画以外も読めよとバイトの先輩に言われ、ブックオフで買った。
宇都宮って行ったことないけど、餃子がうまそうなのでいいなと思った。国道沿いにパチ屋と中古車屋が並ぶ感じはおれの地元とも似ている。というか日本中どこだって郊外はそんな感じだろう。宇都宮の中心部はテナントの抜けたビルばかりだそうで、衰えつつあるようすがさみしげだと思った。
だめになりつつある街の風景と「むかしバレエダンサーだったけどいまは無職」のめぐ叔父さんのすがたが重なった。甥っ子の青葉くんと叔父さんはのんびり夏休みを過ごしているが、どのシーンもさみしさがつきまとう。死のにおいさえする。
べつにくらべることじゃないけどおれは72歳のじいさんとつきあっている。じいさんは総入れ歯だけどぴんぴんしていて、なんでも食うしエッチも好きだ。ぜんぜんくたばる気配はない。
だから、まだ40歳の叔父さんがどうしてこんなに弱っているのか、かわいそうでおそろしくてたまらなかった。不気味なんじゃない。自分のピークが過ぎたあとの人生をどう生きたらいいのか叔父さんはわからなくなっていて、そういう折り合いのつけられなさはおれにもわかる気がしたし、誰にだってありうるだろう。うまくいかなかった青春をひきずっていること、じょうずに大人になれなかったこと。ほんと、どうすりゃいいんだろうな。
主人公の青葉くんは中学生で、懸命に叔父さんに近づこうとする。「死にかけている叔父さんを観察する自由研究」と言いながら、じっと見つめ、体にふれ、なぐさめる。13歳なのに、いや13歳だからか? 凛々しくて頼もしい。恋ってこうだったかもしれないなあと思った。
ところでさ、青葉くんと叔父さんは流れるようにセックスに至るんだけど、すごいな。おれだったら「まじですんの?」「ドッキリじゃない?」「ぜったい誰にも言わない?」って百回くらいきいちゃうと思う。夏の魔法のなせるわざだろうか。
そうしてこれはおれの勝手な希望のようなものだけど、このひと夏の魔法が、かれらの今後の人生になにかいい影響を(よくない影響でも)およぼしているといいなと思う。解けない魔法というと呪いみたいだけど、厄介な感情や記憶と一緒に生きていくこともできると思う。
まあでもめぐ叔父さんはなんかバイトでもしたほうがいいよ。人間、することがあると元気が出るもんだからさ。