おお、この本はある歴史的転換点の戦いが描かれた書物ではないか。実によく書けている。
普段は人間たちと関わらないが、この時ばかりはわしらの拠り所が危機的な状況だったため、表舞台に出たものよ。
わしら四大元素の精霊たちが大切に育て上げた、世界創世の時代から存在している「魔宝樹(まほうじゅ)」。ある日を境にして大樹はこの大地上から消えた──。それからしばらくして大樹をこの大地に戻すために、様々な思惑を抱く人間たちが動き出す。
大樹から生み出された「魔宝珠(まほうじゅ)」をもとに、人間たちは武器や精霊を召喚し、自らの運命を切り開きながら、歩んでいくのじゃ。
多くの人間たちが出てきたが、わしらの力を一番使いこなし、活躍したのが金髪の少女じゃった。負けず嫌いで向上心があり、何事にも諦めない姿が周囲にいる人間たちに大きな影響を与えたのだ。
当初はスピアを扱う、ただのモンスターと戦う少女だった。だが、二人の騎士に導かれて旅立った先々で仲間たちと出会い、真の力を開花していくのじゃ。時に無謀ともいえる攻防に挑めたのも、信頼できる仲間がいたからだろう。
だからこそ、月食の時の出来事は衝撃的じゃった。不穏な動きはあったが、まさかあんな展開になるとは……。あの時の皆の動揺している姿といったら、見ていられなかった。
この大地が危機に陥る運命だと知ったとき、人間たちはそれに抗おうと必死だった。悩み苦しみながらも、僅かな可能性でさえも切り開こうとしていく。
特にわしが自ら力を与えた騎士の必死さといったら……。愛は人を変えるとは、このことを言うのじゃな!
最後の大樹を巡る壮絶な戦いでは、わしらも全力で力を貸し、絶望の使者に対抗した。自画自賛ではあるが、理を大きく崩さない範囲で、無茶な要求に対しても上手く応えていったものよ。
その戦いの中での、あの少女の覚悟と発想には脱帽じゃった。その行動により、人間たちは絶望の中にあった希望を見事掴み取ったのじゃ──。
今では恐怖に怯えることもなく、大樹を当たり前のように見ることができる。しかし、その裏には大樹を巡る壮絶な戦いがあった。
その出来事を忘れないために、人間たちだけでなく精霊たちにも、鍵と大樹を巡る壮大な冒険物語を後世に伝えていくべきじゃろう。