あのね、竜に鱗をもらったんです。人には内緒にしてって言われたんですけど。ある日、ちょっと買い物をしていたら、隣に竜が立っていて。これをね、あげる、って。言われて。それが、数日でこの姿に変わったんです。本。本ですよ。これ。いったい、この本の中の、どの竜がくれたものか、分かりませんがね。この中にはいないのかもしれないし。遠い東の国や、近くの国、知らない海辺とか、そういったところの、竜について書かれている。内緒にして、って言われたんだけど。ぼくも竜なので。君も竜でしょう？ 違うって？ そんなご謙遜。知ってますよ、にんげんのふりをしているのはすぐに分かります。ですから、ね、この本を差しあげたい。ぼくのことも、書いてあるかもしれないし。人には内緒ですけれど、ね、人でなければ、問題ないでしょう。対価のことは、少しだけ心配しててください。大丈夫、ほんの少しだけ。