この本との出会い?それは忘れもしないさ……。
王宮には中で働く人向けの書庫があるんだけど、最近その書庫の屋根が壊れて、運悪く通り雨により室内が水浸しになってしまうという大事件があったんだ。
それもこれも不運の女神が舞い降りるという「花弁が9枚あるクロスコスモス(通常は8枚)」のせいだ!この花の曰くはきょうだいの間でも有名でね。それをご丁寧に本の栞にした怖いもの知らずがいてこの有様。犯人は即日出頭するなら許さなくもない。さもなくば……。おっと本のレビューだったね。
僕はこの大惨事を収拾するために呼ばれたんだけど、得意の熱魔法で一瞬で乾かそうとしたら弟に止められてしまったよ。──兄貴の魔法の正確さは分かるけど、まだ不運が残っているかも!ふむ、一理ある。そこで人力で本を全て外に出して乾かす事になったんだ。
この本は廊下に出された時、たまたま目についたんだよね。どうやら続きもの長編小説らしい。可愛らしい表紙の装丁から上の妹辺りが書庫に寄贈したのだろうと想像がついたよ。
普段は魔術書ばかり読んでいるけど、こういうジャンルも別に嫌いじゃないんだ、でも今回は時間潰しにと手に取っただけだからね。
舞台はどこかの商業都市で、そこに暮らす変わり者の魔族が記憶喪失の少年を拾うところからスタートするんだ。
1巻は登場人物の紹介と無難に事件を解決していくんだけど、問題は2巻から。1巻に引き続き日常に事件が……と思っていたら、ちょっと待って、少年の正体が?!はっ?!変な声が出てしまったようで、心配した弟が僕の顔を覗き込んでいるのも気づかなかった。恥ずかしい。正直2巻には驚かされた。3巻は上下巻なのかと手を伸ばしたところ、たまたま廊下を通りかかった上の妹が──それ3巻下からが本番だから。と何か不吉な言葉を残していった。なんだよ。どうせ2巻みたいにびっくりさせ……(眼鏡を押し上げながら)ダメだこれは自室で読もう。確かにあらすじには「恋の嵐」と書いてあるけど、ここがカップルになるとは予想を斜め上を行っている。この巻の破壊力がダントツだ。
この僕が恥を忍んで、上の妹にこの本の続きはないのか聞いてみた。もちろん上の妹にはにやにやされたよ。
はぁ? まだ発行されてないの? 嘘でしょ?
早く続きを出してよね。でないとレビューの☆1つ減らすよ。