「アルテアの魔女 1」

アルテアの魔女めっちゃ恥ずかしい……

『おぬしを主人公にした物語が本になっておるから、見てくるか?』


故郷の時間にして数十年。天国で穏やかに暮らしていた私のもとに、女神ゼムレア様がそう話を持ち掛けてきてくださったので、興味が勝って、見たいです、とうなずきました。

生身の身体を得て久々に降り立った地上は、私が生きていた頃よりずっと発展していて、懐かしいふるさと、という感覚はあまり無かったけれど、私達が守った世界が今も続いていると思うと、なんだか嬉しくなりました。

目指すは王都の本屋。その軒先に、目的の本は平積みでありました。


『アルテアの魔女』


かつて私が呼ばれた名がそのまま、本のタイトルです。

私が何も知らないまま、言の葉の力『アルテア』を使って人々に崇められるセァクの巫女姫だった頃から始まり、隣国イシャナの国王陛下との結婚話が訪れて、イシャナを目指す途上、異形の獣に襲われ死にかけたところを、『黒の死神』の異名を持つあの人に助けられる。

そう、そうですね。私はあの頃は、あの人の事を本当に死神みたいだと思って、萎縮していました。

でも、それだけではなくて、優しい一面も持っている事、私に呼び名を与えてくれた事。本当に心が浮き立つ思いでした。この本を書かれた方は、史書や口伝をかなり当たられたのでしょうか。まるで私の気持ちを代弁するかのように物語を綴られていま……


…………………。


え。ちょっと待ってください。何でそんな事まで書いてあるんですか。誰が知ってたんですかそれ。えったしかにそう思いましたけど、そんな事もありましたけど、どうして後世の人がそんな事わかるんですか!? 恥ずかしくて直視出来ないんですけど!?

……え。続刊があるんですか?

いやああああああ恥ずかしいいいいいいいい! どこまで続くんですかこれえええええええええ!!

レビュアー
アルテアの魔女さん

「アルテアの魔女 1」(たつみ暁)

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