「空を彩る追憶の華」

細工師の少女のお気に入りです!

この本は幼なじみの少年からもらいました。

本を読まない彼ですが、美麗な表紙が目に入り、題名が「彩る」という私の仕事の「輝かせる」に似ているなと思い、買ったらしいです。私は普段、宝珠を磨いたり、細工をしたりして、輝かせていますからね。

仕事にようやく慣れて一息つきたかったので、その贈り物は嬉しかったです。早速読み始めると、すぐに世界観に入り込み、お気に入りの一冊となりました。


物語は技術披露会で発表することになった技術屋の少女セシリールが、謎の男たちに襲われた際、フィックと名乗る青年が助けたところから始まります。

彼は少女の上司が雇った護衛で、今後も妨害が予想されたため、会が終わるまでは護ってもらうことになりました。

かっこよくて強い男性に護られるなんて、同年代の私としては憧れの展開です。ただ、彼の口調が少々乱暴なため、実際にいたら苦手意識を持ってしまうかもしれませんね。


青年が護衛についてからは、セシリールは発表内容を考えることに集中できましたが、なかなかいい案が思いつきません。けれども、試行錯誤をし、彼とやりとりをしているうちに、ある名案が思い浮かぶのです。この発想が力のない彼女にとっては大きな武器となります。


様々な妨害にあいながらも、ある重要なものを入手するうちに、二人の距離感が少しずつ縮まっていきます。しかし、妨害はさらに厳しさを増し、ついには……。

そこでセシリールの心は折れるかと思いました。ですが、フィックと出会い、一緒に行動するうちに、彼女は自分に自信を持ち、強くなりました。恐れを抱きながらも、決して逃げずに、前に進んでいくのです。


この話のもっとも注目すべき内容は、セシリールが覚悟を決めて挑む、発表会のシーン!

手に汗握る展開が怒濤のように続きますが、最後は空を彩る華が鮮やかに描かれます。その光景がとても美しく、感動する描写でした。

私が宝珠を輝かしたとしても、あそこまで美しい色を出すことはできないでしょう。

それほど、技術力と発想力を駆使し、強い意志を持って彩った空は美しいものでした──。


この物語は技術屋として自信がもてない少女が青年に奮起されて成長していくだけでなく、青年が少女に刺激されて過去を見つめ直す話でもあります。互いに刺激をしあう関係というのはいいものです。


私もこれをもらった幼なじみに負けないよう、頑張っていきたいなとも改めて思いました。

レビュアー
細工師の少女 さん

「空を彩る追憶の華」(桐谷瑞香)

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