「見狼伝〜ましろき獣の駆けるとき〜」

旅人のふりをした人の愛読書!

これは本、らしい。巻物でもなし、糸で綴じられたでもない、本。中身は、世にも珍しい、かといって何ということもない、旅の話だ。一人の娘が白狼に出会う。なかなか変わった娘だ。獣の耳と尾を持つ。声を掛けたが、結局振られてしまってな、代わりに狸の嫁をもらいそうなんだが。さておき、先祖のどこかに狼がいた娘が、狼と歩いてちょっとした出来事に遭遇する。初対面の兄であったり、初対面の帝であることもある。幽霊なんてものを見かけたとも言っていたかな。あぁ、そこの後ろで笑っている狸のことは、構うなよ。あれにはこちらも難儀している。本当は狼だと言うが、口やかましい狸だ。本がどこから来たか? これがまた少々面倒でな。その娘からの預かり物だが、取りに来ることはないだろう。名乗りたくとも名乗れる名のない旅の身ゆえ、保証なく感じられるとは思うが。もし預かり、何か物申したくなれば、帝宛に送りつけてもいい。それを許す。

レビュアー
旅人のふりをした人 さん

「見狼伝〜ましろき獣の駆けるとき〜」(せらひかり)

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