「PANDERGROUND(パンダーグラウンド)」

全米が泣いた。

結論から言うと、この本の評価は0点です。

まさかそんな、と思われるかもしれません。いくら無名で未熟な著者の作品とはいえ、0点は厳しすぎるだろうと。でも、この本を読んでわたしはひどくがっかりしましたし、裏切られた気分になりました。うそのレビューに価値はない。感じたままの思いを伝えるのが読者の、ひいては著者のためになると信じて、批判を覚悟で筆をとった次第です。

0点といっても、評価すべき点が皆無というわけではありません。たとえば装丁。写真を見ていただければわかると思いますが、この本、かなり独特な姿をしています。サンドイッチ風、なのでしょうか? ご丁寧にレタス(を模した紙)まで挟まっています。手製本趣味をこじらせているようですね。

この変てこなパッケージを開くと、地底のパン屋にまつわるいっぷう変わった物語が繰り広げられるのですが……喜劇的な展開の先に思わぬ哀切が込められていたりして、こちらもなかなか味わいがあります。博物画風の挿し絵とあいまって、まるで翻訳ものの絵本のような、同人誌としては珍しい口あたりの作品といえるでしょう。

このように見どころがないことはないのですが、ある致命的な欠点によって、これらの長所はすべて台無しにされています。勘のいい方ならもうお気づきなのではないでしょうか。そう、本書の主役はパンです。ご飯はひと粒も登場しません。

申し遅れました。わたくし全米と申します。いいえ、ゼンベイではありません。全コメ、つまりオール・ライスの代弁者です。すべてのコメの代表として、本書をレビューさせていただく者です。

生きとし生けるすべてのコメの名誉のために、心を鬼にして言わなくてはなりません。

この本はコメが出てこないから0点です。


なにを隠そうこの全米、創作文芸の大ファンです。本書のレビューを著者から依頼されたときは、米びつから飛び出さんばかりに喜びました。それだけに、主役がパンで、コメはまったく出てこないと知ったときの落胆たるや、筆舌に尽くしがたいものがありました。

「パンではなく、コメが主役であったなら!」

考えれば考えるほど口惜しく、読み終えた晩はお粥になるまで泣きました。今からでも遅くはないので、主役をパンからコメに変えて、タイトルを「GOHANDERGROUND(ゴハンダーグラウンド)」にするよう、著者にかけあってみるつもりです。

買うのはそのあとでも遅くないと思います。

レビュアー
全米 さん

「PANDERGROUND(パンダーグラウンド)」(らし)

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