古文書の「くずし字」の解読を支援するスマートフォンアプリとして，「みを」が知られているが，2023年6月，「古文書カメラ」というアプリが凸版印刷から公開され，昨年12月には，最新版がリリースされた．アップデート情報は以下の通りである．

「古文書カメラ」の実力を知るために，Googleプレイストアからアプリをダウンロードして，使用してみた．古文書としてスタンフォード大学図書館に収蔵されている「肥後藩文人書状集）の史料を使用した．原画像は入手できないため，論文掲載画像をスクリーンショットしたものを使用した（下図）．

論文：「スタンフォード大学東アジア図書館所蔵「熊本藩文人書状集」解読の試み」

論文に掲載さている解析は以下の通りである．

松下久兵衛（大奉行）が武藤勝平（目付）に宛てた書状である．

画像はプレビュー（アプリ）で開き，png画像として保存した．輝度やシャープネスの異なる4種の画像についての自解析結果は画像データ（次図）として出力可能である．

その１

抽出したテキストを左側に，比較のために正解を右側に示した．

その２

その３

解読精度を上げるため，バックグラウンドの彩度を下げ，ゴミを除去した．さらに，資料3行目の末尾に付け加えた部分（不申）を切り離した画像を作り，それらを解読させたところ，微妙に変化した．「御」については崩し方が大きく変換対称にされない傾向があった．また，文頭の「愈」は二個に分解される場合もあった．「乍」は1回だけ，「書」も1回だけ．「清」はすべて「請」，「苦労」は「苦方」，

その４

彩度を下げバックグラウンドが白色に近い状態にすると，「御」は認識するようになった．解読率は75%である．全体として70％程度，先行アプリの「みを」が30％くらいであるのに較べれば良好である．参考のために「みを」でも解析してみた．文末資料で示したように今回の史料の解読には不向きである．

アンドロイドスマホの画面の文字は小さく，高齢者には見にくいので，Fireタヴレットに「古文書カメラ」をインストールしたが，ファイル読込み段階でフリーズして使用できなかった．そこで，パソコン上でAndroid OSをエミュレートするBlueStacks（V4，64ビット）を使用してみた．Mac本体とのファイルのやり取りはメディアマネージャーを介して実行できる．指操作アクションをマウスに置き換える必要があるが，スマホの画面をパソコン画面の縦幅一杯に拡大して実行できるので高齢者向きである．

参考資料

凸版印刷、AI-OCRでくずし字を解読するスマホアプリ「古文書（こもんじょ）カメラ™」を配信開始

(2024.3.9)

資料