分子描画ソフトとして知られている Chem3D は半経験的分子計算が実行できる上, 分子が構築しやすいことが特長の一つである.特に,分子同士のドッキングモデルを作成するのにたいへん重宝している.ところが,Macでは開発が止まっており,OS9 版を使う必要がある.そのため,Classic 環境が使える Power Mac G4 や G5 をサブマシンとして所有している研究者も多い.
世はIntel Macに移行して久しい.Windowsも動くので,OSを立ち上げ直してWindows版を使用すればよいではないかと言う人もいる.面倒なので,どうにかできないものかとネットを調べてみた.SheepShaverというエミュレーションソフトが公開 (2002) されており,OS7.5.2-9.04 が動くという記述があった(2007年頃~).ところが,Chem3D を試した記事は見つからない.見つからないのは試しても動かな かったのだろうと思い,SheepShaver 自体の導入を諦めていたが時間的余裕ができたので,試行してみた.
Intel Mac 上で Classic 環境を構築した記事はたくさんネット上 で見ることができるので,複数の記事を参考に Mac OS ROMを使ってOS8.6 を入れてみた.意外にも Chem3D は問題なく動き,AM1, PM3 等の構造最適化も可能であることを確認できた.欲を出して,OS9.1-2 について試してみたが,アナウンス通りうまくいかなかった.現在は OS9.0 で動いている.結論として,英語版の Chem3D を動かすためだけなら英語版OS(米国サイトでイメージを公開 している)の方が安定しているようである.
Chem3D on SheepShaver OS9
TCP/IPの設定にslirpを指定した結果
[一言] 最近のWindows版Chem3Dは見栄えがよく,多機能になっている.ところが分子作成の基本機能は変わっていない.高価なソフトであるためできるな ら続けて使用したいソフトはたくさんあるがOSが代わり使用できなくなったものも多い.今回の場合,昔のメールや書類を見るのにも役に立っている.しか し,その程度と思った方がよいようである.
(平成22年12月14日)
平成29年3月14日時点で最新の macOS 10.12.3 上でも問題なく動くことを確認した.