昨夜のNHKの番組(ビジネス系)で,小中学校に於けるパソコン教育が話題になっていた.
電子黒板やiPadに代表されるタブレット型端末を使ったPC教育に詳しい専門家が,試行した経験談とバラ色の構想を紹介していたが,一方ではそれに批判的な識者がいつもながらの反論をしていた.
そこで話題になっていたのが,一人一台のパソコン教育についての話である.専門家によると韓国やフランスは1年以内に実現するという.我が国はと言うと,10年先になるそうである.
聞きながら,今更という感が強かった.司会者も同様なことを言っていた.このようなことは何回も新聞記事になっている.審議会の提言,計画あるいは試行段階なのに,決定したような書き方に惑わされてしまっているのかもしれない.
熊本大学において,学部レベルで一人一台を実現したのは12年前である.当時,施設拡充,設備の導入にあたって書類に書いたことを思い出した.義務教育 におけるPC教育の遅れを一気に挽回し来るべき情報化社会に対応するという内容であった.最近は義務教育+高校教育でPCの基礎教育は済んでいるので,” 大学教育としての情報処理教育”の必要性を訴えるように変わってきたが,実情は以前と変わっていない.
私立大学薬学部での最近5年間の情報教育の経験から言えることは,高校までの情報処理教育はほとんど役に立っていないということである.毎年130名中 数名程度が過去に教わったことをぼんやりと思い出して対応している.受験勉強で頭がリセットされてしまったのであろう.携帯電話で十分と思っていた子供た ちが,情報処理教育(1,2年年次)が終了する頃には,専門教育や卒論などでのPCの必要性を意識し始めるのだが,その時期には国試対策に追われて,ま た”リセット”という歴史を繰り返すことになりそうである.
アナログ的思考に慣れた頭脳にコンピュータ的デジタル思考を受け入れることができるのは20代前半までであることを指摘しておきたい.
[一言]普段目立たない子が意外な能力を発揮することがあると指摘していたが,女子の多い薬学部でも同じような経験をした.大学に於ける情報教育は男子復権の最後の機会である.それにしても,大学を含めて教員の情報処理教育が先決事項であることは言うまでもない.
(平成22年10月17日)