神さまを詠む歌

2018.11.4

かみさま

神と神様は同じでしょうか?語感は違いますね。

「神」というと厳粛なひびき。

「神様」というと、親しみが少しこめられて、微妙なニュアンスになりますね。。

闇鍋」の短歌データは、2018年11月4日現在94,315首、うち「神様」(かみさま、神さま等も含む)が詠み込まれた歌は131首。

以下、私の好みで「神様」を詠み込んだ歌をピックアップします。

「闇鍋」の短歌データは、2018年11月4日現在94,315首。

うち「神様」(かみさま、神さま等も含む)が詠み込まれた歌は131首。

そのなかから本日の私の好みでピックアップします。

■本日のお気に入り

牛乳瓶二本ならんでとうめいに牛乳瓶の神さまを待つ

佐藤弓生

だからってカスタネットの赤と青塗りわけたのは神様じゃない

村上きわみ

海の神さまみんなでなめた しょっぱくてがまんできないとひとり泣いた

笹井宏之『ひとさらい』

ああ雪がふっていますね 来る明日は品切れですと神さまがいう

杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』

■近代歌人の用例

近代歌人では石川啄木の次の歌だけ見つかりました。「神様」という語は比較的新しく短歌に取り込まれたらしい。

神様と議論して泣きし―

あの夢よ!

四日ばかりも前の朝なりし。

石川啄木『悲しき玩具』

■神様にお願い・神様に話しかける

神様、いま、パチンて、まみを終わらせて(兎の黒目に映っています)

穂村弘 『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

こげくさいあたしの神様どうかどうかあのひとの声とめてください

東直子「かばん」200410

神さま、夢はもう見ませんから、重たくて分厚いまぶたを四つください

石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』

神様はなにか食べたの 朝ごはん作ってもらえず乗り込む電車

植松大雄

■神様を見る、神様に遭う

ころんだときかみさまをみた ぎんいろのめからつるつる水がたれてた

東直子「かばん」2003・06

神様をつくりそこねた神様に逢うため瞳に受けるどしゃ降り

千葉聡

神様に逢うための熱わたしをげんじつにつれてくるすりりんご

佐伯紺 「早稲田短歌」42号

■おもしろ系

退化せし尾を悲しめば進化して角生えるよと神様の声

ルビ:角【つの】

佐佐木幸綱『瀧の時間』

神様はなんでかゆいを作ったの 恋がかゆい、とかよりいいけど

ナイス害 サイト「うたの日」より

(ユ/カ)レテイル(セ/シャ)カイ(サ/ボ)クラガ(フリ/シニ)オエテかみさまのてはじゃぐちをひねる

木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』

尖端パッ恐怖症の<パッ>神様へ<パッ>向けてみんなで<パッ>さすアンブレラ<パッ>

神﨑ハルミ

■ほかにもいろいろ

神様のボタン 停車場の隅に君が指さすタンポポの花

北川草子『シチュー鍋の天使』

神さまのねむりのなかに俺たちのねむりが雲の浮くやうにある

渡辺松男『雨(ふ)る』2016

神様を信じなくてもかまわない暮らしのなかで大吉を引く

辻聡之『あしたの孵化』

かみさまが乾麺取り落としたならばこんなになるの梢のひかり

ルビ:乾麺【パスタ】

天道なお『NR』2013

結界を決めるガイガーカウンター神様たちしか住めない世界

天野慶 HP「詩客」 2012-11-09

神様が真っ赤になって笑っているそっぽ向いてる きもちがうごいてる

杉山モナミ 作者ブログ「b軟骨」2012・1

かみさまのふぐりというべき蜜蜂の巣が木より垂る蜜たらしつつ

室井忠雄『天使の分けまえ』

神様とわたしどんどん遠ざかる夜ごと赤方偏移のしらべ

佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』

口笛に吹きおろさるる神様をフェルトの帽子にとまらせてゆく

佐伯裕子『みずうみ』

わたしのすきなもの かみさまのすきなもの はるなつあきふゆくる

三好のぶ子「かばん」1999年1月

かみさまの庭の芝生を踏むように甘い秘密に犬歯を立てる

雨季 HP「共有結晶」BL短歌鑑賞欄

2018年11月4日 高柳蕗子

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