何を編む?
「編む」という語を含む短歌をあつめてみました。
●おすすめ
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ピックアップ
ピックアップ
(お急ぎのかたはここだけでも)
愛人の愛遅遅として群青の沓下をその底より編めり
愛人の愛遅遅として群青の沓下をその底より編めり
塚本邦雄『水銀傅説』1961
塚本邦雄『水銀傅説』1961
窓際の一番うしろの席にいて夢の羊を編みためており
窓際の一番うしろの席にいて夢の羊を編みためており
俵万智『かぜのてのひら』
俵万智『かぜのてのひら』
月白く言葉は赦し合いながら互いをゆるく編みこんでゆく
月白く言葉は赦し合いながら互いをゆるく編みこんでゆく
三好のぶ子「かばん」1999年10月
三好のぶ子「かばん」1999年10月
セーターを着て歩く空気に母さんがまじっているんだ 風の編み棒
セーターを着て歩く空気に母さんがまじっているんだ 風の編み棒
河野瑤「かばん」2018年5月
河野瑤「かばん」2018年5月
ひととせの後に編まれし遺歌集に死ののちのうた一首もあらず
ひととせの後に編まれし遺歌集に死ののちのうた一首もあらず
松村正直『風のおとうと』
松村正直『風のおとうと』
ゆったりと籠編んでます入れ替わり立ち代わりする居場所編みます
ゆったりと籠編んでます入れ替わり立ち代わりする居場所編みます
白糸雅樹
白糸雅樹
もし「編む」という題詠だったら、
もし「編む」という題詠だったら、
何をどう詠む? どこに重点を置く?
何をどう詠む? どこに重点を置く?
1 何を編むか?
1 何を編むか?
①編み物(マフラー等の毛糸の衣類、レース編み)
②籠などを編む(籠などの道具、民芸品)
③髪
④編集(書籍、辞書等の編纂)
⑤その他、時間をかけてじっくり作り上げるもの
2 色々な要素も見どころ
2 色々な要素も見どころ
どんな材料?
どのように編む?
何のために編む?
誰が編む? 等々
1 いろんなものを編んでるなあ
1 いろんなものを編んでるなあ
多忙なる汝には見えぬ縄梯子ひそかに編みて秋のいちにち
多忙なる汝には見えぬ縄梯子ひそかに編みて秋のいちにち
永井陽子『小さなヴァイオリンが欲しくて』
永井陽子『小さなヴァイオリンが欲しくて』
遠闇に編むタリバンの目出し帽スノーダストは見えるでしょうか
遠闇に編むタリバンの目出し帽スノーダストは見えるでしょうか
和里田幸男
和里田幸男
胎内にわれを編みているときの母の写真とまむかいにけり
胎内にわれを編みているときの母の写真とまむかいにけり
大滝和子『銀河を産んだように』
大滝和子『銀河を産んだように』
粛清の歴史を編むためよみがへり再びねむれ星よりふかく
粛清の歴史を編むためよみがへり再びねむれ星よりふかく
山田富士郎『羚羊譚』
山田富士郎『羚羊譚』
三つ編みは昏き蔓草 昼を編みほのかに垂れる夜のうちがわ
三つ編みは昏き蔓草 昼を編みほのかに垂れる夜のうちがわ
山下泉『光の引用』
山下泉『光の引用』
武蔵野のむかしかたかた数を編むひびきはありきひとびとありき
武蔵野のむかしかたかた数を編むひびきはありきひとびとありき
佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』
佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』
九品仏のいちやうの大樹冬空をこまやかに編む黒き枝枝
九品仏のいちやうの大樹冬空をこまやかに編む黒き枝枝
森岡貞香『百乳文』
森岡貞香『百乳文』
ひととせの後に編まれし遺歌集に死ののちのうた一首もあらず
ひととせの後に編まれし遺歌集に死ののちのうた一首もあらず
松村正直『風のおとうと』
松村正直『風のおとうと』
逆さまのことを祈ろう君の手と私の手を編むように合わせて
逆さまのことを祈ろう君の手と私の手を編むように合わせて
鈴木晴香『夜にあやまってくれ』2016
鈴木晴香『夜にあやまってくれ』2016
みどりの髪十万の編む春帽子わが掌の中に脱ぎ捨ててみよ
みどりの髪十万の編む春帽子わが掌の中に脱ぎ捨ててみよ
坂井修一
坂井修一
セーターを着て歩く空気に母さんがまじっているんだ 風の編み棒
セーターを着て歩く空気に母さんがまじっているんだ 風の編み棒
河野瑤「かばん」2018/5
河野瑤「かばん」2018/5
野に君を繋ぎておかむ鎖ゆえ指にじませてうまごやし編む
野に君を繋ぎておかむ鎖ゆえ指にじませてうまごやし編む
平井弘
平井弘
●羊系
●羊系
「編む」歌に動物はほとんど出てこないが、羊だけ2首あった。
羊には毛糸の材料という連想脈があるから??
窓際の一番うしろの席にいて夢の羊を編みためており
窓際の一番うしろの席にいて夢の羊を編みためており
俵万智『かぜのてのひら』
俵万智『かぜのてのひら』
夕闇に赤い自分を編む羊このまち統べるごとしユザワヤ
夕闇に赤い自分を編む羊このまち統べるごとしユザワヤ
鯨井可菜子『タンジブル』
鯨井可菜子『タンジブル』
2 編む手つき、雰囲気、気分など
2 編む手つき、雰囲気、気分など
まんまるな月ほどいては編みなおす手のやさしくてたれか死ぬ秋
まんまるな月ほどいては編みなおす手のやさしくてたれか死ぬ秋
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
愛人の愛遅遅として群青の沓下をその底より編めり
愛人の愛遅遅として群青の沓下をその底より編めり
塚本邦雄『水銀傅説』1961
塚本邦雄『水銀傅説』1961
ものを書くひとのうしろに編み棒を動かしてゐられるものなら しぐれて
ものを書くひとのうしろに編み棒を動かしてゐられるものなら しぐれて
黒木三千代
黒木三千代
かぼすの酸残れる指に編む帽子はじめて冬を迎うつむりに
かぼすの酸残れる指に編む帽子はじめて冬を迎うつむりに
久々湊盈子
久々湊盈子
春闌(た)けて君のおさげを編み上げて悲しくなれなかったのは海のせい
春闌(た)けて君のおさげを編み上げて悲しくなれなかったのは海のせい
堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る 』
堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る 』
●いっしょに編み込むもの
●いっしょに編み込むもの
セーターにふゆの嵐を編み込んで君はひとりの夜を耐へてをり
セーターにふゆの嵐を編み込んで君はひとりの夜を耐へてをり
笹井宏之『てんとろり』
笹井宏之『てんとろり』
アップルパイを編み込むやうに愛せればしあはせの似合ふひとになれるわ
アップルパイを編み込むやうに愛せればしあはせの似合ふひとになれるわ
結樹双葉 「早稲田短歌」43号
結樹双葉 「早稲田短歌」43号
少女らはわれらが戀へ銀の針に咒文をこめて編む透編絲
ルビ:少女(おとめ)/透編(レース)少女らはわれらが戀へ銀の針に咒文をこめて編む透編絲
須永朝彦『定本須永朝彦歌集』
須永朝彦『定本須永朝彦歌集』
3 籠を編む
3 籠を編む
籠を自ら編む人はあまりいないと思うが、意外に歌には詠まれている。
現実に目にする頻度に比べて、短歌に詠まれる頻度が高い。
籠を編む姿、できあがってゆく過程などに、短歌に詠みたくなる、そそられる、そういった何らかの詩的要素があるらしく、模索中なのかもしれない。
青竹の平そぎ竹のひるがへりひるがへるなかに籠編む男
青竹の平そぎ竹のひるがへりひるがへるなかに籠編む男
前田夕暮
前田夕暮
ゆったりと籠編んでます入れ替わり立ち代わりする居場所編みます
ゆったりと籠編んでます入れ替わり立ち代わりする居場所編みます
白糸雅樹
白糸雅樹
風の馬たちをみてるか棒パンで編まれた籠に腕を通して
風の馬たちをみてるか棒パンで編まれた籠に腕を通して
穂村弘『シンジケート』
穂村弘『シンジケート』
あなたとのひかりの時間しんかんと籐籠を編みあげゆく秋は
あなたとのひかりの時間しんかんと籐籠を編みあげゆく秋は
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
編み上げし蔓籠ひとつ寒の夜の灯りのもとに自在なるかな
編み上げし蔓籠ひとつ寒の夜の灯りのもとに自在なるかな
宇佐美ゆくえ『夷隅川』(いすみかわ)
宇佐美ゆくえ『夷隅川』(いすみかわ)
籠を編む この世の風を閉じこめる肺のかたちを模索しながら
籠を編む この世の風を閉じこめる肺のかたちを模索しながら
井辻朱美『クラウド』
井辻朱美『クラウド』
次は→飛行船
次は→飛行船
私のデータにはしばしば誤りがあります。日々点検しておりますが、追いつきません。
上記からなにかの原稿に引用する場合は、なんらかの方法で表記等を確認してください。
高柳蕗子
2019年6月23日