自薦十首

画面の都合で改行を入れましたが、もとはすべて一行書きです

第2集 十の世 『潮汐性母斑通信』より

一の世はいつも夕暮れいつも秋
いろんな人のいのちを舐めよ

虹匂う二の世に鬱ぐ銀髯の
祖父にうまって越冬すべし

三の世に再々婚は淋しけれ
さばしびさばしび空耳埠頭

ヨーデルで呼べばやわらぐ四の世に
詠みのこされし神仙の臍

香水をふりふりあやせ
五の世的語法指南役金剛鸚哥

六の世に驚くなかれ
漏刻とみまがう老婆しかも論客

七の世も幼し
聖徒の撫でまわす姿なきだいじなオットセイ

八の世は葉影はるかに歯を磨く父母おわします
はろう はろう

くしゃみするたんびに星が倍になる
九の世に頭くぼむクラーケン

十の世の地雷畑に発根をうながすおばば
じゃらじゃら声

第1集 お気に入りピックアップ

手があれば胸をこうしてばってんに

押さえて飛び立つだろう飛行機

世は白雨 走り込んでは牛たちの

おなかに楽譜書く暗号員

霊能を集めて一家がかきまぜる

ジグソーパズルの父の肖像

聴診器あてるまぶたのまなうらの

宇宙映画の人類滅ぶ

願いましては永遠なーり 

引くことの同じぐらいの永遠なーり

手を上げろ願いをよこせぜんぶ出せ

あとかたもなく叶えてやろう

色褪せて流れつく虹

たくさんの手が抱きおろす西方浄土

うずいている夕焼けている 

関係者各位わたしの乳首は交番である

探偵は泳いだ全ての橋をくぐった

あっちの輪廻もおもちゃだった

暮春という言葉を揺らし揺らしして

友よなるべく遠くまで帰ろう