「半分」は
こう詠む
「半分」(はんぶん)を含む歌句を抽出しました。
・本日の闇鍋総数139,247(短歌98,038、俳句27,616、川柳13,081、ほか)
「半分」を含む句歌は、 短歌66、俳句7、川柳18ありました。
(俳句では詠まず嫌い?)
特にお気に入り
特にお気に入り
(忙しい人はここだけでも)
(忙しい人はここだけでも)
半分のいのちとなりしタマネギの切り口がすこし膨らんでくる
半分のいのちとなりしタマネギの切り口がすこし膨らんでくる
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』2010
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』2010
◆直接的には生命力を詠んでいると思うけれど、説明しにくい凄味があって、ぞくっとするような生命の切実さを感じる。
月代を剃るとふことを想像すあたま半分ぞりぞりいはめ
ルビ:月代(さかやき)月代を剃るとふことを想像すあたま半分ぞりぞりいはめ
池田はるみ『婚とふろしき』2007
池田はるみ『婚とふろしき』2007
◆なんでそんなことを想像したのか(笑)。でも、その「ぞりぞり」はすごい感覚で、想像してみた価値があったのね。
片すみに半分ほどの眸がありて鏡はあをくわれをうつせり
ルビ:眸(め)片すみに半分ほどの眸がありて鏡はあをくわれをうつせり
小玉朝子『黄薔薇』1932
小玉朝子『黄薔薇』1932
◆「半分ほどの眸」という描写の怖さが並外れている。
手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒
手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒
笹井宏之『てんとろり』2011
笹井宏之『てんとろり』2011
手のひらを胸にあてるのでなく、半分ほど、しかも「貝にして」という微妙さが効いている。
たましひの須田町眠る半分忌
たましひの須田町眠る半分忌
俳句自動生成ロボット・忌日くん(三島ゆかり 制作 西原天気 謹撰)
俳句自動生成ロボット・忌日くん(三島ゆかり 制作 西原天気 謹撰)
「半分忌」って何だよ(笑)とツッコミつつ、でもうっすらわかる。「たましひの須田町眠る」も絶妙だとおもう。
毛糸編むからだ半分森の中
毛糸編むからだ半分森の中
(川柳)加藤久子
(川柳)加藤久子
編み物といえば、単調な作業ですが、没頭しながらゆっくりとものができあがるこ楽しみがあって、たとえばただプチプチを潰すみたいなこととは違います。
その「没頭」は、時を忘れるという意味で「苔むす」に通じるけれど、
「半分」という題だったらあなたは何を詠みますか?
「半分」という題だったらあなたは何を詠みますか?
果物の半分、身体の半分、顔の半分。
果物の半分、身体の半分、顔の半分。
「半分」を詠む歌句では、上記のものがやや目に付きました。
「半分」を詠む歌句では、上記のものがやや目に付きました。
「たましい」「月」も複数詠まれていて、結びつきやすい題材みたいです。
誰でも思いつきそうな結びつきは、想定範囲を超しにくい場合もありそうです。
果物等の半分
果物等の半分
●イチオシ
●イチオシ
半分のいのちとなりしタマネギの切り口がすこし膨らんでくる
半分のいのちとなりしタマネギの切り口がすこし膨らんでくる
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』2010
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』2010
林檎にも試さるる夜 半分に割れば蜜濃きロールシャッハが
林檎にも試さるる夜 半分に割れば蜜濃きロールシャッハが
小川真理子『母音梯形(トゥラペーズ)』2002
小川真理子『母音梯形(トゥラペーズ)』2002
うす闇の居間に帰れば丸皿に伏せられており梨の半分
うす闇の居間に帰れば丸皿に伏せられており梨の半分
鯨井可菜子『タンジブル』2013
鯨井可菜子『タンジブル』2013
身体の半分
身体の半分
●イチオシ
毛糸編むからだ半分森の中
毛糸編むからだ半分森の中
(川柳)加藤久子
(川柳)加藤久子
ふりむけば軸をずらして立つ人の右半分が影になりたり
ふりむけば軸をずらして立つ人の右半分が影になりたり
佐波洋子『羽觴のつばさ』2006
佐波洋子『羽觴のつばさ』2006
身半分かまくらに入れ今晩は
身半分かまくらに入れ今晩は
平畑静塔『矢素』1985
平畑静塔『矢素』1985
諸氏半身紅葉もうはんぶんは悪
諸氏半身紅葉もうはんぶんは悪
田島健一『式服の食事』(電子書籍)
田島健一『式服の食事』(電子書籍)
顔の半分
顔の半分
雄鶏の鳥冠のごとき思想かな顔半分を暗くして寄る
雄鶏の鳥冠のごとき思想かな顔半分を暗くして寄る
江田浩司
江田浩司
もしかしてみんな楽しんでるのかと思うよ顔半分白くして
もしかしてみんな楽しんでるのかと思うよ顔半分白くして
柴田瞳 「かばん」2009.11
柴田瞳 「かばん」2009.11
手のひらの半分
手のひらの半分
●イチオシ
手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒
手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒
笹井宏之『てんとろり』2011
笹井宏之『てんとろり』2011
脚注をさがす半分手のひらを今のページのはさんでおいて
脚注をさがす半分手のひらを今のページのはさんでおいて
牛尾今日子「羽根と根」5号2016・11
牛尾今日子「羽根と根」5号2016・11
その他いろんな半分
その他いろんな半分
結局「その他」がおもしろい??
結局「その他」がおもしろい??
●イチオシ3つ(?)
月代(さかやき)を剃るとふことを想像すあたま半分ぞりぞりいはめ
月代(さかやき)を剃るとふことを想像すあたま半分ぞりぞりいはめ
池田はるみ『婚とふろしき』
池田はるみ『婚とふろしき』
片すみに半分ほどの眸(め)がありて鏡はあをくわれをうつせり
片すみに半分ほどの眸(め)がありて鏡はあをくわれをうつせり
小玉朝子『黄薔薇』
小玉朝子『黄薔薇』
たましひの須田町眠る半分忌
たましひの須田町眠る半分忌
忌日くん(俳句自動生成ロボット)三島ゆかり 制作 西原天気 謹撰
忌日くん(俳句自動生成ロボット)三島ゆかり 制作 西原天気 謹撰
以下もイチオシでいいけど
海抱え飛びたつしゃぼん玉いくつたった半分憎むふるさと
海抱え飛びたつしゃぼん玉いくつたった半分憎むふるさと
小守有里『こいびと』2001
小守有里『こいびと』2001
空のおおよそ半分ほどを占めているひかりの犬のうすい肉球
空のおおよそ半分ほどを占めているひかりの犬のうすい肉球
笹井宏之『てんとろり』2011
笹井宏之『てんとろり』2011
逃げろといはれ逃げ場なき人半分も居るならわれも此処にとどまる
逃げろといはれ逃げ場なき人半分も居るならわれも此処にとどまる
佐藤通雅 角川「短歌」2012 ・1
佐藤通雅 角川「短歌」2012 ・1
半感応式のわたしは木漏れ日を半分くらいしか喜べない
半感応式のわたしは木漏れ日を半分くらいしか喜べない
鯨井可菜子『タンジブル』2013
鯨井可菜子『タンジブル』2013
目をこらす一瞬ぼくの奥行きが半分ほどになる夏の暮れ
目をこらす一瞬ぼくの奥行きが半分ほどになる夏の暮れ
五島諭『緑の祠』2013
五島諭『緑の祠』2013
とにかく世界が半分まわっていくときの痛い微熱がポップ
とにかく世界が半分まわっていくときの痛い微熱がポップ
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016
はんぶんに折った春陽をくちにやりこれがせかいへの八つ当たり
はんぶんに折った春陽をくちにやりこれがせかいへの八つ当たり
井上法子『永遠でないほうの火』2016
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終末から・面白半分・黒の手帖・奇想天外・噂・無名鬼
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藤原龍一郎『19××』
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一晩じゅう半分の月が半分の見えない月を曳きずっている
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杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』
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半分だけポストに入れた朝刊は超夜型の天使の羽かも
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千葉聡
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ドーナツを半分にまた半分に方向音痴なひとの朝食
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田口綾子『かざぐるま』2018
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照らされていたのがわかる もたれたら夜の半分ぬくい土壁
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法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015
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蜃気楼半分は貝殻なりし
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(俳句)大坪重治
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アンパンをはんぶんこして負け組に
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(川柳)松木秀
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淀川の半分ほどの嘘をつく
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(川柳)樋口由紀子 セレクション柳人『樋口由紀子集』2005
(川柳)樋口由紀子 セレクション柳人『樋口由紀子集』2005
2019年7月20日
高柳蕗子
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