妙だ 変だ

おかしい





「おかしい」等を含む短歌俳句川柳を集めてみた

短歌は案外たくさんあった。俳句は少なかった。

恋人がいないからって新しいパンツ買わない理屈がおかしい

ナイス害 サイト「うたの日」より

消しゴムも筆記用具であることを希望と呼んではおかしいですか

岡野大嗣『サイレンと犀』2014

目の色の少しおかしい鳩がくる炎昼もろに後退りせり

花山周子『屋上の人屋上の鳥』

陸橋はことばのようだ言ってから変だと思うがそのままにする

吉野裕之『Yの森』

文鳥をおかしなかたちに折り曲げるようにわたしを赦すつもりか

村上きわみ

ガッツポーズするスイマーの降ろす手の所在の無さが微妙に日本

山下一路

おかしいな二度と覚めない水色の夢を選んだはずだったのに

辻井竜一『遊泳前夜の歌』2013

「おんなじこと2回ずつ言うのおかしいな。」それからおんなじ上着も2着

杉山モナミ

サルトルがタンスを内側から閉めるみたいなちから 秋はおかしい

杉山モナミ

矢印にみちびかれゆく夜のみち死んだ友とのおかしなゲーム

杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』

スカートにたららららっと蝉の尿 うちには変な決まりがあった

雪舟えま『たんぽるぽる』2011

「大吉」と僕が呼んだら「これからはDと呼べよ」と言う変な奴

千葉聡

クローバーの上であまやかされながらへんだわ自分でなめてとがらすなんて

飯田有子『林檎貫通式』

ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜

穂村弘『水中翼船炎上中』2018

俳句

奇妙に明るい時間衛兵ふやしている 阿部完市

川柳

軍艦の変なところが濡れている 石部明『遊磨系』

あなたから見ても私は変ですか 丸山進『アルバトロス]』

変なかけら親指と親指のあいだ 佐々馬骨(佐々木秀昭)

貝殻を変なオサムシ出ていった 小池正博

変なところに葱や葡萄をそよがせて 石田柊馬

(石部明追悼十句のひとつ。「軍艦の変なところが濡れている(石部明)」)

描いてゆくと誰も死なない変な星々 中村冨二『千句集』

変な夢だったと下りてくる二階 徳永政二「バックストローク」13号

2019年7月12日 高柳蕗子