似ている?


←東京国立博物館にトランプさんがいた!

「似ている」「似てる」「そっくり」を含む短歌を探してみたところ、

データベース「闇鍋」の短歌94780首中に106首ありました。

※「似て」「似る」も含めればもっとたくさん出てきますが、「AがBに似ている」 という文脈が鮮明な歌を探したかったので、検索語を「似ている」「似てる」「そっくり」に限定しました。

以下は、その中から、私の好みで20首選んだもので、中でもお気に入りの7首を最初にあげておきます。

♥お気に入り7首♥

明け方に雪そっくりな虫が降り誰にも区別がつかないのです

穂村弘『手紙魔まみ、夏の引っ越しウサギ連れ』

中華ちまきの皮ひろげると蛾にみえてほんとうに似ていると思う

杉山モナミ(作者ブログ「b軟骨」)

蝉とチョロQはあおむけでニチニチ言いながら死ぬ点で似ている

伊舎堂仁『トントングラム』2014

空っぽのペットボトルにあまりにも似ているこころの悲鳴を聞いた

喜多昭夫

父のいない居間では私がいつもより父に似ているような気がする

木村友 (第63回角川短歌賞予選通過作)

そっくりなディズニーランド操縦しマフラー編んだ声を椅子にし

瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』

クロマニヨン人は掘り返されたから生きていて、そんなところが僕に似ている。

藤沢賢二

♥まだまだあるよ♥

たぶんきっときみは梱包業のひと つまり、ことばに似ているのでしょう

杉山モナミ(作者ブログ「b軟骨」)

抱かれることからはじまる一日は泳ぎ疲れた海に似ている

俵万智『チョコレート革命』 1997

揺りあげる旅行鞄に石鹸は転がる終わりと始まりは似てる

柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

5モーリシャス・ルピー切手の人物が兄に似ていたのでメールする

佐々木朔「早稲田短歌」43号 2014・3

完全な調和が町のはずれにありとてもわたしに似ているという

笹井宏之『てんとろり』2011

イナッフと似ている名前のパンかじりぼろぼろこぼれる皮をはらって

柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

一昨日と似てる昨日に飽きたので明日は迷子になりに行きます

辻井竜一『遊泳前夜の歌』2,013

動物園も病院もそっくりだったしくるくると人は臍からきれいに剥けます

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

そっくりな首都高が心にあり首都高の出口を出れば心がつづく

我妻俊樹

耳のないサンドイッチが開いてはいけない白い詩集に似てる

狩野悠佳子「早稲田短歌」42号

まぼろしに似てきよきこと時に言ふ幼き者の常とおもへど

佐藤佐太郎『帰潮』

祭壇の孔雀ふたたび低く鳴く訶訶訶訶訶さうあなたに似てる

池田はるみ

ここでもう安心してもいいですかキャベツはあなたの頭蓋に似てる

藤本玲未『オーロラのお針子』2014

いずこにもひかり射さない内側を思えば月と肉は似ている

佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』

手を組んで眠る角度は祈りにも似ている きみを二人ください

深見あす香 「早稲田短歌」44号

舟を漕ぐしぐさは羽ばたきのそれに似てるね こころ透きとおるのね

井上法子『永遠でないほうの火』2016

晴れた日の水平線はくっきりと人間のつく嘘に似ている

若草のみち「かばん」2018・6

たましいを少し削ってなめてみるお金の味に少し似てきた

鳥居萌「本郷短歌」第3号 2014

刑場は文化住宅にそっくりで月見のできる窓もあります

江田浩司

本当はクララそっくりなんだけど起きぬけだからハイジに似てる

穂村弘

最後に拙作もおずおずと。

「パパ……!」と息呑めばパパそっくりの痴漢も驚いて降りてった

高柳蕗子『潮汐性母斑通信』

「父」は「AがBに似ている」歌のAかBに詠まれやすい??

なぜかわからないけれど、

100首ほどの「似ている」歌の中に、4首以上に詠まれた人気語は以下の通り

父10 / 母4 (なぜか母は父の半分以下…)

君、あなたなど 9 / 私、僕、我など 4

愛4

(◯◯は愛に似ている、という歌が4首もあったが、私の基準では物足りなくて、上記にとりあげなかった。)

2019年1月15日 高柳蕗子

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