年齢短歌
0~29歳
年齢が入っている短歌を集めてみた。
ただし、「ひとつ」「ふたつ」「一つ」「二つ」……は、検索すると2700首も出てきてしまうが、そのほとんどは年齢と無関係で、年齢歌を探しきれないため、「◯つ」は除外する。(たまたま見つけたものは含める。)
三十路、四十路等、および、不惑、還暦、喜寿、米寿等も除外しました。
年齢ごとに数えてみる。(詠まれやすい年齢は何歳?)
数える際、一人の作者が連作で同じ年齢を複数詠んでも1首と数える。
・例えば「五歳児」がテーマで同じ作者の「五歳」を含む歌がたくさんある場合、1首とカウントする。
・同じ作者でも連作でない歌は別々にカウントする。
・連作かどうかわからない場合は内容で判断する。
・連作でも別の年齢を詠んでいるなら、年齢ごとに1首はカウントする。
・歌に複数の年齢が含まれるときは、一番最初に出てくる年齢でカウントする。
歌句を年齢ごとに少しずつピックアップする。
(全部だと多すぎるため、各年齢1~3首選ぶ。)
0~9歳
■0歳 2首
0歳を量らむとしてまづ吾が載りて合はせぬ目盛を0に
光森裕樹『山椒魚が飛んだ日』2016
■1歳 5首
ムコスタくん推定1歳コンビネゾンふわわ 夏の夢に落ちくる
杉山モナミ ブログ「b軟骨」2010/11
酸つぱい顔教へてをりぬ甘夏を食べて困つてゐる一歳に
大松達知『ゆりかごのうた』
■ 2歳 10首
カタコトでイチゴと言いて指差して二歳はいくつ食べるのだろう
奥村晃作『スキーは板に乗ってるだけで』2005
二歳児は絶望を知らざりしかば銀の如くに生き残りおり
松木秀『RERA』
おじいちゃんしかしと二歳児はわれにいひてあとははははと楽しげに笑ふ
湯川秀樹『湯川秀樹歌文集』
■3歳 7首
三歳の言い分聞きつつシャツの肩で涙と鼻水拭かせておりぬ
森尻理恵『グリーンフラッシュ』2002
「あのときおまえは三歳だった、いや五つ、一年生か、中学だっけ?」
穂村弘
■4歳 10首
四歳の歩幅であれば地下鉄のタイル模様にぴったりだろう
鈴木希実子「早稲田短歌44
泣いて泣いてすつからかんになりし子に四歳半の元気が戻る
河野裕子『母系』2008
■5歳 11首
五歳になる子に、何故ともなく、
ソニヤといふ露西亜名をつけて、
呼びてはよろこぶ。
石川啄木『悲しき玩具』
叔母さんがトマトを砕いてゐた夏の雲のしたなる五歳のからだ
辰巳泰子
唐辛子道に明るく乾きおり未来がみえぬ五才児のごと
東直子『青卵』
鳩を追いかけ回したり声あげて泣いてもいいのは五才までだぞ
穂村弘『ドライ ドライ アイス』1992
■6歳 4首
おかあさんげんきですかと六歳のつよき濃き文字の手紙をたたむ
駒田晶子『光のひび』
はいくなる楽しみ覚え六歳は十七音にひらがなつめて
鈴木英子『油月』2005
■7歳 7首
百日草は仏壇のはな七歳のひるねに覚めし目に見たる花
小島熱子『ぽんの不思議の』
七歳まで遊んでたっけ 座敷童子のあいつの名前を思い出せない
ルビ:七歳(ななつ)笹公人『念力姫』
■8歳 4首
この世にはなんて便利なものがある「あらすじ」を知る八歳の夏
武富純一『鯨の祖先』2014
抒情的日常として八歳と二歳にショコラ・ワッフルを買う
藤原龍一郎『19××』
■9歳 2首
四分の一のリンゴが五つある絵に挫けたり九歳の夏
武富純一『鯨の祖先』2014
10代
■10歳 9首
将軍という名のサボテンを買った十歳のころ冬が寒かった
吉野裕之 作者本人のweb 2013.11
三十六色ペンの出できて十歳の息子の色をみな塗つてみる
米川千嘉子『吹雪の水族館』
十の夏 星空見あげ気がついた 小さいことは痛いことだと
植松大雄
■11歳 3首
生意気であればあるほどおもしろい十一歳が四人集いて
鶴田伊津『夜のボート』
■12歳 13首
卵のひみつ、といへる書抱きねむりたる十二の少女に触るるなかれよ
ルビ:書(ふみ)葛原妙子『飛行(ひぎゃう)』1954
千人の十二歳の解く算数の鉛筆の音が冬空を圧す
森尻理恵『S坂』2008
その一万円札僕のですと云えなかった十二歳だったから
穂村弘
■13歳 4首
シマウマの真似せよかしと命じればからだくねらす十三歳は
大松達知『ゆりかごのうた』
■14歳 5首
射精と同じだ レベルEの緊張感にため息をつく少年十四歳
しんくわ『しんくわ』
■15歳 9首
不来方のお城の草に寝ころびて/空に吸はれし/十五の心
ルビ:不来方【こずかた】/十五【じふご】石川啄木『一握の砂』
書はみゆ みどり匂える闇の中ふいに目覚めし十五の夜に
ルビ:書【ふみ】佐藤弓生「かばん」2018/6
詰襟の学生服の十五歳阪神パークにレオポンを見き
藤原龍一郎
■16歳 12首
殊更に黒き花などかざしけるわが十六の涙の日記
柳原白蓮
忘れてはいなかったんだ 我は今十六歳の殺意を流す
東直子
一六歳の娘のなかのあまりりす留学生アリソンの思ひ出
小島ゆかり「歌壇」2006/5
■17歳 11首
目線同じ高さになりて向き合えば十七歳って目がきれいだね
三枝浩樹『歩行者』
東京の空にぎんいろ飛行船 十七歳の夏が近づく
小島なお『乱反射』
十七歳のわたしになつて坂を降りゆめのなかにてする落としもの
辰巳泰子
■18歳 14首
いててててわが弱さゆえ十八歳の日に友に告げたる嘘の刃よ
ルビ:十八歳(じゅうはち)十谷あとり『ありふれた空』
しろたえの夢をつむいで綿あめをコットンキャンディーと呼ぶ十八歳
俵万智『かぜぼてのひら』
夢を話して笑われたよと十八歳黒きコーラをひと息に飲む
前田康子『窓の匂い』
あくる朝十八になる玄関の金魚はふっと縦に立ちたり
藤本玲未「飛ぶ教室」第44号2016
●19歳 9首
人とわれおなじ十九のおもかげをうつせし水よ石津川の流れ
与謝野晶子
十九にて君は死にきと葉桜のかげにたちより皐月を思ふ
ルビ:皐月【さつき】前田夕暮『収穫』
銃床と星のあひだに一生ありと十九の我は思ひ決めにき
ルビ:一生【ひとよ】山中智恵子『玉蜻』
20代
■20歳 19首
こころざすことなき二十歳いまわれに吹く凩のごとき春風
ルビ:二十歳【はたち】
荻原裕幸
旺盛に食めどもどこか寂し気にて二十歳の君の頬は太らず
栗木京子
息子とは遠き稲妻 一〇〇年の銀杏の下の二〇歳を撮す
佐佐木幸綱『はじめての雪』
二十歳でも煙草やらないぼくたちを締め出して喫煙所にぎやか
山階基「早稲田短歌」44号
■21歳 2首
八十年ぽっちの人生拒むことだらけの二十一歳の何故
俵万智『サラダ記念日』
■22歳 4首
角砂糖なめて終ってゆく春に二十二歳のシャツ脱ぎ捨てん
俵万智 『サラダ記念日』
■23歳 2首
二メートル先の未来がこわかった春の灯台、二十三歳
鯨井可菜子『タンジブル』2013
■24歳 2首
紺碧に星二つあるネクタイを締め二十四の夏過ぎむとす
荻原裕幸
■25歳 8首
陰暦の八月みたいにずれている二十五歳の父であること
吉川宏志『夜光』
ヴァンサンカンと晩餐館の駄洒落など笑ひつつ二十五歳も過ぎつ
塚本邦雄 「短歌研究」 1996年8月
結婚という名の宝探しには地図が足りない 二十五になる
平川哲生
■26歳 1首
二十六歳の骨うつくしく遺しゆきぬ豊かに固くもの言はぬ骨
竹山広『射禱』2001
■27歳 4首
二十七歳冬の芹全面的十二音階紅茶甘したしかに小ブル雑派
西王燦『バードランドの子守歌』
■28歳 2首
恋と名といづれおもきをまよひ初めぬわが年ここに二十八の秋
与謝野鉄幹
■29歳 2首
二十九のこの朝なにをさとりたるわが門松のさてもさびしき
与謝野鉄幹
2019年9月22日
私のデータベースは、語の使われ方の変遷などを見るためなど主に統計を目的としてデータを集めております。
直接入力だけでなく、青空文庫、歌人のブログ、そのほかネット上で見つけたデータをコピーさせていただくこともあります。
見ず知らずの方々の努力の成果を労せずして頂戴しており、感謝してもしきれません。評論などで世の中に還流させることで報いたいと思います。。
データベースに収録した歌句は、日々表記等の確認に努めておりますが、数が多いこと、また、自分が原典を有しないものがあるなど、なかなか点検が追いつかない状況です。上記の歌句を引用してどこかに掲載する場合は、必ずなんらかの手段で確認してください。
高柳蕗子