あいうえお

など

「あいうえお」などを詠み込む短歌がときどきあるので、集めてみました。

俳句川柳も見つけたものは添えました。

五十音表 タテ

あいうえお

あいうえお順のセックス 海岸が精一杯の遠出だったし 小島左

うつせみの命、妹、骸、常、人、世(あいうえお順。敬称略) 鈴木有機「かばん」2003/5

かきくけこ ナシ

さしすせそ

ささやかなやさしさつらなるさしすせそ 時々憧れのように冷たい 杉山モナミ『ヒドゥン・オーサーズ 』

サシスセソうまく言えない男らの恋はさみしい誤解なのにね 東直子『十階』

今はサシスセ昔はいろは すたらぬはずだよ色の道 ( 都々逸)

たちつてと

宮中の岡井隆はたちつてととてもキュートな髪型らしい 荻原裕幸『世紀末くん!』

なにぬねの

なにぬねので出来ている眠りの世界は生まれたてのわたしが眠ってる 九螺ささら『ゆめのほとり鳥』

はひふへほ

日本語をはなれし蝶のハヒフヘホ 加藤楸邨『死の塔』(俳句)

まみむめも ナシ

らりるれろ

らりるれろ夜の怖さを耐えられずあなたのふところきゅうに、さがす 三好のぶ子「かばん」2003年6月

らりるれろ言ってごらんとその母を真似て娘は電話のむこう 永田和宏『饗庭』

がぎぐげご ナシ

ざじずぜぞ ナシ

ダヂヅデド

お月さまもほほえむ金貨の冷たさにふるえる泥棒だぢづでどろぼう 高柳蕗子『ユモレスク』

ばびぶべぼ ナシ

ぱぴぷぺぽ ナシ

五十音表 ヨコ

あかさたな、ほもよろを、と紅葉散りわたしの靴を明るく濡らす 東直子『青卵』

あかさたなはまやらわとは浜風に赤く咲きたるハマナスの花 武富純一『鯨の祖先』

あかさたな雨はみどりを濡らしつつはまやらわれは空へ俯く 白井健康『オワーズから始まった。』

いきしちにひみイリイチの唱へたるシャドウ・ワークの翳ぞやさしき 松原未知子

うくすつぬ童子唱(とな)へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか 今野寿美

えけせてねへめエレファントマンむせぶ異種交配の夢のむごさに 松原未知子

あかさたなはまやらわをん梅ひらく 西原天気『けむり』(俳句)

いろはにほへと……

笑えばいろはにほへと 狂えばいろはにほへと 高瀬一誌『高瀬一誌全歌集』

ちりぬるをちりぬるを とぞつぶやけば過ぎにしかげの顕ち揺ぐなり 斎藤史『ひたくれなゐ』

ルビ:顕【た】

我という銀杏やまとにちりぬるを別れた人からくるエア・メール 俵万智『かぜのてのひら』

ちりぬるを書きすさぶ字も薄墨のかの白萩も散りつつあらむ 築地正子

ああ大火ながるる空にあさきゆめみし星嵐吹ききみもいまさむ 山中智恵子『星醒記』

ルビ:星嵐【ほしあらし】

韻律の軋む廊下を往き復るあさきゆめみし小用が為 佐々木六戈「草蔵」

ルビ:往【ゆ】 復【かへ】

方位なき暗闇のなか寝返ればうゐのおくやまゆめ揺れにけり 高野公彦『汽水の光』


(俳句)

福寿草襷いろはにほへとちり 阿波野青畝

竹馬やいろはにほへとちりぢりに 久保田万太郎

あさきゆめとみしはごまの花なのか 阿部完市


(川柳)

闇よ闇いろはにほへと子よ病むな 岩村憲冶

朱の椀に雪もさくらもちりぬるを 定金冬二『無双』

孤独地蔵花ちりぬるを手に受けず 川上三太郎

笹に吊すあさきゆめみしゑひもすと 八木千代『椿抄』

蚊を吐いて あさきゆめみしポストかな 中村冨二『千句集』

オマ ケ 「五十音」

真っ白いシーツに隠すわたくしを五十音順に消していく 彦坂美喜子『白のトライアングル』

五十音さかさに「無」から唱えだす「吾」になるまでに泣きやむつもり 千葉聡『微熱体』

ルビ:無【ん】 吾【あ】

『あい』という言葉で始まる五十音だから傷つくつくつくぼうし 俵万智『かぜのてのひら』

五十音と闘う女 てのひらをひかひかひかと風はぬけていく 杉山モナミ ブログ「b軟骨」

五十音順に出てくる怨みごと 浪越靖政 (川柳)

高柳蕗子 2018/11/18