♥イチオシ
物足りなく感じる歌が多かったが、この歌だけはイチオシ。
他者との距離、空間の体積や位置関係の感覚が、まさにこのとおりであると思う。
♥そのほか
♥俳句と川柳 のなかのイチオシ
♥俳句と川柳も少し見つけましたので、その中からピックアップ。
【俳句】
【川柳】
「ステレオタイプ」はすごく悪いイメージの語です。
なぜか(なぜなんだよ)多くの人は「独自性」を無条件に崇めている(根強い信仰・迷信がある)。
ですので、歌会でうっかり口にしただけで、その場の半数が「この人はこの歌をけなしている」と誤解し、
そのあと何を言っても誤解しっぱなしになる。
(みればどの人の耳も、人がけなされるのを聞きたくなくて、白っぱけて縮んでいる。…ウソ)
ーーと、まあそのぐらい危うい語です。(刃物をチラ見せするのに似た危うさだ。)
そこで、「この歌には〝良い意味でのステレオタイプ〟があります」なんぞと切り出すわけです。
すると、「悪徳でない政治家」と同程度に受け止められます。(笑)
「ステレオタイプは良いものだ、生かして使うんだ」という共有認識に到達するまであと30年はかかりそう、
いや、30年かけても到達しないかもしれない。いっそ新しい用語を使ったほうがいいかもね。
「ひとりっ子」のイメージの世間話レベルのステレオタイプは、大雑把に言って次のA~Fです。
A さびしい
B わがまま
C ひよわ・おっとり(争いを知らない)
D 親が甘い
E 親のさみしさ
F セット親子(親一人子一人)
親の側を詠むDEFは、「ひとりっ子」とは別の歌材(句もある)※と捉え得るし、「親一人子一人」などは、「ひとりっ子」とは限らない等の問題もあります。
※「歌材」は(造語というほどではないが)ほぼ私しか使わない語。特に「親一人子一人」の世間話レベルのステレオタイプは、「けなげな生活、寄り添って生きる情感」だと思います。
例1
母子家庭が世の中のくぼみで生きてて、でも脇毛みたいにたくましい感じ。
例2
この歌は、世間話レベルのステレオタイプに満足せず、親の側から心寄り添うその一瞬を捉えてピンポイントに絞り込むことに成功している。
その他のDEFの例
蛍のはかない光が、この世にある命のさみしさを暗示するゆえに、「親一人子一人」という語が少し意味を強めるが、それだけか?
A さびしい
B わがまま
C ひよわ・おっとり(争いを知らない)
なぜか「ひとりっ子」はABCの欠点で話題になる。(なんだか血液型の話にも似ている。)
※私はB型で蠍座で蛇年のひとりっ子!
けれども、実際にそういう傾向は多少あるかもしれないが、そんなに言うほどか?
少なくとも一人一人に当てはまるほど絶対的な特徴か、と思うことが多い。
少し嫉妬が混じってないかしら。(笑)
で、こういうステレオタイプは世間話レベル。そのまま詠む人はあんまりいない。
わたしのイチオシのこの歌は、
ABCが全部入っているけれど、それを欠点としていない。
競合者のいない、純粋な一人だけの平和的唯我独尊の境地を持っている。
少し高い位置から世界を見渡し、他者をそこに配置するが悪意はなく、現実離れした独特の強い客観性。
(これって、長所だし、なんらかの強さとも言えそう)
他者を見下すというわけではない。
「ひとりっ子」のイメージとして、(あくまでイメージ)
そういう平和的唯我独尊の境地を、発掘し得た歌だと思います。
さっきの「平和的唯我独尊の境地」で、「高い位置から世界を見渡す」と書いたんですが、
今、ひとりっ子が多いから、その「平和的唯我独尊」が共存する場が多くなる。
この歌は単に事実を述べただけなんですが、読んだ途端、
ひとりっ子たちよ、決して穢れることなく、「平和的唯我独尊」による共存というひとりっ子の世界観を磨こう!
という気持ちになっちゃいました。
「平和的唯我独尊」の共存がこれから詠まれる、この歌はその端緒かな、と思って取り上げました。
(あくまでイメージですが)
白黴っていうか、みかんの白い筋を几帳面にとる人を思い浮かべた。
時間をかけて細かい作業に熱中し、世界がほろんでも手を休めない感じ。
具体物じゃなくても、例えば話の中の論理的夾雑物を微に入り細に入り取り除くとか、
そういう几帳面さがひとりっ子っぽい。
(しつこいけど、あくまでイメージです。)
「底のある宇宙」=半分閉ざされた世界
ひとりっこ=同胞がいない者たち
手をつなく=付き合い下手がおずおず手をつなぐ
で、なぜ悲しいのか??
悲しい=ひとりっ子どうしが連携するとき、楽しさだけでなく、さっき述べた王様のさみしさが通い合う。
(それまで兄弟のいる人種=対人スキルがあって抜け目なくたくましい人種と共存してきたのに、ひとりっ子どうしで手をつなぐがねばならない。)
そういう新たなさみしさ、悲しみを詠んでいるように思えます。
2019.2.11 高柳蕗子
杉山モナミ(YouTube朗読)