検証64

本ページで取り上げるサイトはいずれも仮想通貨取引所 (暗号資産交換業者) に該当すると思われますが、いずれも日本の金融庁が公表している暗号資産交換業者の登録リストに該当がありません。ここで検証するサイトの多くは日本語対応しており、さらに少なくとも一部のサイトについて日本人に向けた勧誘や被害報告が確認されていて単に無登録の違法業者であるというだけでなく、詐欺目的のサイトである疑いが極めて濃厚と考えられます。

▼本サイトでの検証は名誉棄損に当たらないと考えます。→ 雑記1

このページでは前ページ、「検証63」に続いてマッチングサイト (出会い系サイト) などで外国人による勧誘が行われていると思われる仮想通貨案件について検証します。さらに「検証65」「検証66」「検証67」「検証68」「検証69」「検証70」「検証71」「検証72」「検証73」「検証74」「検証75」「検証76」「検証77」「検証78」「検証79」「検証80」「検証81」「検証82」「検証83」「検証84」「検証85」「検証86「検証87「検証88」「検証89「検証90「検証91「検証92「検証93「検証94「検証95「検証96「検証97「検証98「検証99「検証100「検証101「検証102「検証103「検証104「検証105「検証106「検証107「検証108「検証109「検証110「検証111「検証112」「検証113」「検証114」「検証115」「検証116」「検証117」「検証118」「検証119」「検証120」「検証121」「検証122」「検証123」「検証124」「検証125」「検証126」「検証127」「検証128」「検証129」「検証130」「検証131」「検証132」「検証133」「検証134」「検証135」「検証136」「検証137」「検証138」「検証139」「検証140」「検証141」「検証142」「検証143」「検証144」「検証145」「検証146「検証147」でも類似と思われる案件の検証を行っています。次々とサイトを立ち上げて短期間で閉鎖するということを繰り返していると思われ、入金してしまうとお金を取り戻すのは非常に困難となる可能性が高いです。


●CryptoTender [GSMコイン他] (クリプトテンダー www.crypto-ct.com/)

●BFTbit [OBBコイン] (BFTビット www.bftbit.com/)

●CoinTen (コインテン www.cointen.io/#/)

●FSChain (FSチェーン www.fschain.top/)

●KWCC (kwcc.io/?lang=jp)


まずクリプトテンダーという仮想通貨取引所とこの取引所で取引されている7つの仮想通貨 (GSM、AIC、ECOC、ETSC、ICT、SGC、TFG)から検証します。

●CryptoTender [GSMコイン他] (クリプトテンダー www.crypto-ct.com/)

2020年5月、Yahoo知恵袋に出ていた質問で知ることになった仮想通貨取引所です。

以下がこの質問投稿にあったサイトの冒頭部のキャプです。対応言語は中国語と英語のみです。

次に連絡先情報を探しましたが殆ど情報がありません。以下は「About Us」のページのキャプですが一番下にメールアドレス (support@crypto-ct.com) があるだけです。経営者情報もありませんしライセンス関係の記述もありません。法的規制は完全無視のようです。

以下のキャプに示したWho Is情報を見るとサイトの開設日 (Creation Date) は2019年12月2日となっていてかなり新しいものの半年程度は経過していることが分かります。

しかし仮想通貨データーベースのCoinMarketCapの取引所リストにクリプトテンダーは見当たりません。知恵袋の質問にあったGSMという仮想通貨についても調べてみましたがこちらもCoinMarketCapの仮想通貨リストに該当がありません。少なくとも現時点で主要な取引所で取引されているような仮想通貨ではないようです。

ところがこのクリプトテンダーのサイトを見るとGSMのチャートが存在しています。以下はドルペックのステーブルコインであるUSDT建てのGSM日足チャートのキャプです。

このチャートには強い違和感を感じる部分があります。このチャートによればこのGSMという仮想通貨は2020年4月8日に上場し、上場初日の4本値は

初値:0.6015 USDT、高値:0.6351 USDT、安値:0.6001 USDT、終値:0.6349 USDT

となっていますがその後は一貫して上がり続け、この検証を書いている2020年5月11日現在で15.29 USDTになっています。上場初値と比べて27倍に上昇したことになります。しかも上場から1ヶ月余りが経過して1日の初値より終値の方が高い陽線 (緑の棒グラフ) ばかりが続いており、1日の初値より終値の方が安い陰線 (赤の棒グラフ) になったのは1日だけです。さらに上のキャプの下部にある出来高の棒グラフを見ても毎日の出来高が900万枚程度でほぼ一定です。これほど毎日の出来高が一定しているということが実際に起こり得るのか非常に疑問です。さらに以下はUSDT建てのGSM1時間足チャートのキャプです。

1時間足で見るとさすがに陽線と陰線が混じっていますが、ほぼ一定の傾きで右肩上がりで上がり続け、さらに1時間当たりの出来高は約40万枚で安定しています。これは異常としか思えません。曜日にも無関係、朝でも昼でも24時間一定の出来高というのは世界各国の人が売買しているとしても非常に考えにくいです。上のチャートで3時間ほどだけ上がり方が急な部分がありますがこの上昇が大きな時間帯でさえが出来高はほぼ一定です。大きく値上がりするということは売り注文に対して買い注文が増えたということを意味しているはずです。相場が大きく動けば上昇でも下落でも関心を寄せる人が増えて出来高が増えるのが普通でしょう。

比較の為に同じクリプトテンダーのサイトでビットコインのUSDT建て1時間足チャートを以下のキャプに示します。

こちらは1時間毎の出来高が大きく変動しているのが明らかです。特に値動きが大きくなると出来高が増えています。相場が大きく変動する時に出来高が増えるのは相場の参加者の心理を考えれば当然でしょう。

そもそもGSMのチャートで右肩上がりでほぼ一定速度で相場が上昇しているのが事実なのだとすればそのまま持っていようと考える人が多くなり、出来高は減っていくはずなのです。GSMのチャートは実際の取引を反映したものとは到底思えません。これはGSMへの投資が有望であるかのように見せかける為に作られたチャートの可能性が高いと判断します。

さらに最初に引用したYahoo知恵袋の回答では「勧められた仮想通貨は違います (GSM以外の仮想通貨への投資を勧められた)」とあったことをヒントにクリプトテンダーで取引されている仮想通貨の中には他にも怪しげな仮想通貨があるのではないかと考えてチャートを調べてみると確かにGSMと同様に明らかに異様なチャートパターンを示す仮想通貨を6つも見つけました。それぞれのUSDT建ての日足チャートのキャプを以下に示します。

AIC-USDT 日足チャート

改めて指摘するまでもないと思いますがこれら6つのチャートには以下の様な特徴が共通しています。

1) ほぼ一方的な右肩上がりのチャートである。

2) 1日の中で始値より終値の高い陽線 (緑の棒グラフ) の割合が非常に高い。

3) 毎日の出来高がほぼ一定している。

最後の出来高についてはキャプは省略しますがそれぞれの1時間足のチャートを見てもほとんど変動がありません。明らかに不自然です。

さらにこれら6つの仮想通貨、AIC、ECOC、ETSC、ICT、SGC、TFGという略号を頼りに仮想通貨データーベースのCoinMarketCapで探してみましたがいずれも当該の仮想通貨を確認出来ません。厳密に言えば略号が一致する仮想通貨が見つかる場合もあるのですが現時点での相場がクリプトテンダーに上場されている仮想通貨と相場が全く異なります。例えばCoinMarketCapでSGCという仮想通貨を探すとSudan Gold Coinという仮想通貨が見つかります。しかしこのSudan Gold Coinという仮想通貨の現時点での取引値を見ると以下のキャプに示した様に0.08ドルほどです。一方でクリプトテンダーで取引されているSGCの現時点での取引値は上に貼り付けたSGCのチャートを見ると83 USDT (=83ドル)ほどです。相場が1000倍も違うので略号が同じでも全く異なる仮想通貨と考えざるを得ません。

GSMに加え、AIC、ECOC、ETSC、ICT、SGC、TFGの6つ、合計7つの仮想通貨は詐欺目的で作り上げられたいわば架空の仮想通貨の疑いが濃厚と考えざるをえません。また取引所としてのクリプトテンダー自体も危険と考えざるを得ません。クリプトテンダーでの口座開設やGSM以下の7つの仮想通貨への投資は絶対に避けるべきでしょう。


※付記

2020年7月の頭にクリプトテンダーのサイトが閉鎖されていることを確認しました。一方でクリプトテンダーと同じグループによる可能性があるBBAE (h5.bbaecrypto.co/)という仮想通貨取引所のサイトが存在していることに気が付きました。いわばクリプトテンダーの後継サイトと考えられます。このBBAEについては「検証66」で検証していますが出会い系サイトで知り合った外国人女性に取引を勧誘されたという経緯、CoinMarketCapに情報が見つからない謎の仮想通貨が複数取引されていてチャートが不自然としか思われない右肩上がりになっていることに加え、謎の仮想通貨の幾つの名称がGSMなどクリプトテンダーで取引されていた仮想通貨と共通している、チャートのフォーマットが2つのサイトで互いに非常に似ているといった点から同じグループによる詐欺サイトである可能性は相当に高いです。併読してください。


●BFTbit [OBBコイン] (BFTビット www.bftbit.com/)

これもYahoo知恵袋に相次いで出ていた2件の質問投稿で知ることになった仮想通貨交換業者です。情報が断片的ですがこれもネットで知り合った中国人に勧誘されたようです。

2020年4月29日投稿

この質問投稿をした人はまだ勧誘されただけのようですが回答者はOBBという仮想通貨の取引を勧められて取引しているようです。このOBBについては後述します。

2020年5月7日投稿

以下が検索して出てきたサイトの冒頭部のキャプです。対応言語は英語と中国語です。

まず連絡先情報ですが公開されている情報は以下のキャプに見えるだけのようです。

>Contact us

>Official website: www.bftbit.com

>Email: bftbitserver@gmail.com

>Address: Empire State Building, Quezon City, Philippines

メールアドレスは無料登録出来るgmailのアドレスです。電話番号の記載はなく、他にはフィリピンの住所だけですが、この住所はフィリピンのケソン市、エンパイヤ・ステート・ビルディングという明らかに不完全な住所です。ケソン市 (Quezon City) はフィリピンの旧首都で現在の首都であるマニラの近郊にある都市のようですが、「エンパイヤ・ステート・ビルディング」を検索してもアメリカ・ニューヨークにある有名な高層ビルが出てくるだけでフィリピン・ケソン市のエンパイヤ・ステート・ビルディングの存在を確認出来ません。似た名前のフィリピンの建造物として「1322 Golden Empire Tower」という55階建ての高層ビルが存在するようですが住所はケソン市ではなく、隣のマニラ市です。明らかに不完全な住所の上に実在さえ疑われる住所ということになります。経営者情報も見当たりません。フィリピンの仮想通貨取引所に関する法律や規制を知りませんが、ライセンス関係の記述も見当たりません。情報開示は明らかに不足で疑わしいです。

次に取り扱っている仮想通貨ですがトップページを見るとビットコイン (BTC)イーサリアム (ETC)リップル (XRP)ジーキャッシュ (ZEC)イオス (EOS)ダッシュ (DASH)といった仮想通貨の時価総額ランキング上位に来るようなメジャーな仮想通貨が並んでいるだけなのですが「Contracts」という仮想通貨のチャートのページを見るとOBBというCoinMarketCapの仮想通貨リストに該当がない、検索しても情報が全く出てこない謎の仮想通貨のチャートがあります。以下のキャプはそのOBBのUSFT建て日足チャートです。

このOBBのチャートは上で検証したクリプトテンダーのGSMなど7つの謎仮想通貨のチャートとは違って一方的な右肩上がりではありませんが、毎日の出来高がほぼ200万枚前後で一定していてかなりの違和感があります。ちなみにこのチャートによれば上場したのは2020年2月28日となっています。

比較の為にBFTビットでのビットコインのUSDT建て日足チャートを以下に示します。

ビットコインは間違いなく最も頻繁に取引される仮想通貨で取引の参加者も多いはずですが上のキャプの一番下に棒グラフで示されている毎日の出来高にはかなりバラツキがあることが分かります。特に値動きの激しい日には出来高が増えていることが確認出来ます。OBBコインの出来高が値動きに関わらず毎日殆ど同じ様なレベルであることに感じる違和感を理解しやすいと思います。

そして最初に引用した2020年4月29日付のYahoo知恵袋の投稿に対する回答ではまさにこのOBBという仮想通貨の取引を勧められて取引していると書かれています。これは非常に危険な臭いがします。OBBはクリプトテンダーの7つの仮想通貨と同様に最初から悪意を持って用意されたいわば架空の仮想通貨の可能性があると思われます。

この取引所での口座開設、OBBという仮想通貨の取引は推奨出来ないと判断せざるを得ません。



●CoinTen (コインテン www.cointen.io/#/)

●FSChain (FSチェーン www.fschain.top/)

これもYahoo知恵袋への質問投稿で知ることになった仮想通貨取引所と仮想通貨です。コインテンが仮想通貨取引所、FSチェーン (FSC)がそこで販売、取引されている仮想通貨です。同じ質問者によって以下のキャプに示す2つの質問が2020年5月11日に投稿されています。

質問1

やはりTinderというマッチングサイトで知り合った香港人、おそらく女性にFSCコインという仮想通貨への勧誘されたというパターンのようです。2つ目の質問には取引画面の1部と思われるキャプが貼ってあり、字が小さいですが「cointen.io」というドメイン名の部分が分かります。

さらに検索してみると英語ですがコインテンとFSCコインへの警告を出しているTwitterアカウント (twitter.com/fschain1) を発見しました。アカウント名からして「FS Chain Scam Coin (FSチェーンは詐欺コイン)」となっていてこの件に関する注意喚起だけが目的のアカウントのようです。投稿の一部を引用します。

2020年4月19日投稿

1つ目の投稿に「tinder girl's investment ideas to fake coins」 とあるのでやはりTinderで女性による詐欺コインへの投資勧誘が行われているということのようです。このTwitterアカウントの主が実際に被害を受けたのか、何処の国の人なのか全く分かりませんが日本以外の国、おそらくは英語圏の国でも同じ手口で勧誘が行われているものと思われます。そして2つ目の投稿には知恵袋の投稿にあったのと同じ「cointen.io」というドメイン名に加え、「http://cointen.vip/」というリンクも登場していますがこちらのサイトは既に閉鎖されているようです。コインテンのサイトは「検証63」で検証したCTCコインを販売するモビ・エクスチェンジのように複数存在していたのかもしれません。

ともかくこれらの投稿を手掛かりにコインテンのサイトを探してきました。以下がサイトの冒頭部のキャプです。一見すると表示言語が選択出来るようになっているのかと思いましたが実際にはキャプの右上に小さく見えるように表示言語の選択肢は英語しかありません。

そしてこのコインテンではビットコイン建てで15種類、イーサリアム建てで13種類、USDT建てで7種類の仮想通貨が取引可能になっています。以下はUSDT建てで取引可能な7種類の仮想通貨のリストと相場のキャプですが、4番目に知恵袋への投稿にあったFSChain (FSC) という仮想通貨があります。このFSCはUSDT建てのみで取引が可能になっているようで、ビットコイン建てあるいはイーサリアム建てで取引可能な仮想通貨のリストには入っていません。

FSC以外にUSDT建てで取引可能な仮想通貨はBitcoin (BTC)Ethereum (ETH)、という時価総額最上位のメジャーどころに加え、メジャーとは言い難いですがBitKan (KAN)Litex (LXT)Pivot Token (PVT)UnlimitedIP (UIP)という4種類、計6種類でいずれも仮想通貨データーベースのCoinMarketCapで流通していることを確認出来ます。しかしFSCについてはCoinMarketCapで該当が見つかりません。FSCという略号を持つ仮想通貨の登録はあるのですがFive Star Coin (FSC)という名称のコインであり、コインテンで扱いのあるFSCはFSChainという名称であって別物です。さらに取引所のコインテンもCoinMarketCapの取引所のリストにありません。

ともかくコインテンのサイトでは以下のキャプに示したようにFSCのUSDT建てチャートがあります。以下は日足のチャートですが、2020年3月17日に上場初値、0.04 USDTで上場されてからは右肩上がりで相場が上昇し続け、このキャプの時点で0.7216 USDT (=0.7216ドル)で取引されていることになっています。そして1日の出来高は10万枚を超えるほどになっています。

そしてこのチャートの下には右のキャプに示しましたが「Current Data」としてこのFSCという仮想通貨の情報がまとめられている欄があります。

>Currency Data

>Abbreviation   FSC

>Full Name  FSC

>Issued Time  2020-03-17

>Issue Number  1,000,000,000.00

>Circulation  50,000,000.00

>Crowd-funding

>White Paper  http://www.fschain.top/white-paper-zh.html

Website   www.fschain.top

Block Query  0x47a92221f103abbbe9492e5cd14e7e6c445f6740

総発行枚数は10億枚、流通しているのが5000万枚となっています。さらに公式サイトへのリンクやホワイトペーパーへのリンクもあったので早速アクセスしてみました。以下はそのFSチェーン (FSC) の公式サイト冒頭部のキャプです。

しかしこのFSチェーンの公式サイトもダウンロード出来るFSチェーンのホワイトペーパーも非常に貧弱なもので印象がよくありません。まず連絡先情報を探してみましたが、公式サイトにもホワイトペーパーにも右のキャプに示したメールアドレスが1つあるだけで話になりません。

>fschain@outlook.com

FSチェーンの公式サイトのWho Is情報を見ると以下のキャプに示したようにサイトの開設日 (Creation Date) は2020年2月20日とかなり新しいです。コインテンでの取引は上のチャートで示した様に2020年3月17日に始まっていますから公式サイトが出来てから1ヶ月も経過しない時期に既に上場されていたことになります。

しかもこのFSチェーン公式サイトへのアクセス状況を見ると殆どアクセスがありません (以下のキャプ参照)。公式サイトや公式サイトに用意されているホワイトペーパーなど見ることもせずに多くの人がFSチェーンという仮想通貨に投資しているのでしょうか?非常に違和感があります。

ホワイトペーパーもPDFファイルで48ページもあるので全部を読破する気にはならないのですが、長さの割には記載内容は貧弱で違和感を感じる部分が幾つもあります。以下で違和感を感じた部分を幾つか指摘することにします。まず左下はホワイトペーパーの表紙全体のキャプです。そして右下はこの表紙の一番下の部分の拡大です。

「2019-05 V0.6. 5.1」と書いてありますがこれはこのホワイトペーパーの作成時期とバージョンを示しているものとしか思われません。つまりこのホワイトペーパーが作られたのが2019年5月でバージョンが「V0.6. 5.1」であるということを意味していると思われます。これは非常に奇妙です。既に書いたようにこのFSチェーンの公式サイトはWho Is情報によれば2020年2月20日に開設されたばかりのサイトです。ホワイトペーパーがサイトの解説よりも9か月も早い2019年5月に作成されたものという状況は非常に考えにくいです。何か別の仮想通貨のホワイトペーパーを転用するなどして作ったホワイトペーパーなのではないかと考えたくなります。

次にホワイトペーパー4ページ目のSummary (要約) から一部を抜粋したキャプを以下に示します。

FSチェーンという仮想通貨は5Gスマートフォンとブロックチェーンの融合、活用を目指す仮想通貨だそうですが、5Gになると何が違うのか、どう活用されるのかはよく分かりません。そして上のキャプの赤い下線で強調した部分にありますが、この仮想通貨はERC20というイーサリアムのシステムを使った仮想通貨のようです。そこでイーサリアムベースの仮想通貨に関するデーターを閲覧出来るEtherscan (etherscan.io/) というサイトでFSチェーンの情報を探しました。以下が見つかってきたFSチェーンの情報の冒頭部のキャプです。

ここにある情報ではまずPRICE (価格)が$0.000となっていますし、MARKET CAP (時価総額) も$0.00になっています。つまりまだ値段は付いていないということになりますが、既に上で示した通り、コインテンでは2020年3月17日から既に取引されていて現時点では0.72ドルほどで取引されていることになっています。コインテンでの取引はEtherscanでは認められていないことになります。他には総発行枚数が10億枚と書かれていますがこの総発行枚数についてはコインテンのチャートの下、Currency Dataの項目に書かれていた数字に一致しています。そして2020年5月半ばの現時点でFSチェーンを保有しているホルダー口座が3349存在し、過去の口座間の移動の回数が3359回となっています。口座数と過去の口座間の移動 (Transfer)の回数が殆ど同じということは販売元の口座からFSチェーンを買った投資家の口座に移動した以外の口座間移動がないのではないかと思われます。そこで3349回の口座間移動 (Transfer)記録で直近の10件を見ると以下のキャプのようになっています。

10件の記録はいずれも「0x433acdfd34ec8b80081a3a5bc54870e3377d59c3 」というアドレスからそれ以外のアドレスへの転送となっています。おそらくこれが販売元のアドレスなのだと思われます。そして一番最近の口座間転送 (Transfer)記録は3日と2時間前となっており、直近の10日間で10件しか記録がありません。つまり1日に1回ほどのペースでしか取引が為されていないことになりますし、取引がない日もしばしばです。さらに1回の取引量も数枚からせいぜい1万枚程度です。上に示したコインテンのサイトにあるFSチェーンのチャートからは連日1000万枚ほどの出来高が毎日あることになっていて、1日に1回程度しか取引がない状態のチャートには到底見えません。日足チャートで連日取引が途切れていないだけでなく、以下に示した1分足のチャートでもロウソク足が途切れなく並んでいるのです。

つまりコインテンのサイトにあるチャートとEtherscanのサイトにあるFSチェーンの口座間移動 (Transfer)記録はどう考えても全く一致していません。

そもそもコインテンのチャートから見ると毎日1000万枚ほどの取引出来高があることになっていましたが、同じくコインテンのCurrency Dataの項目にFSチェーンの総発行枚数は10億枚、流通量は5000万枚となっていました。ホワイトペーパーにも以下のキャプに示したように総発行枚数が10億枚、「Public Offering」という一般に売り出す枚数が5000万枚となっています。

仮にPublic Offeringで売り出した5000万枚が完売していたとしても毎日の出来高が1000万枚規模というのは考えにくい数字としか思えません。一般に売り出していない運営などに割り当てられたFSチェーンも既に流通しているのかとも思いましたがEtherscanで現在の保有枚数上位のホルダーに関する情報を見るとホワイトペーパーの割り当て率に一致する大口のホルダーが確認出来ます。例えばホワイトペーパーでは「User Awards」に50%の5億枚が割り当てられていますが、以下に示す大口ホルダー1位のアドレスには確かに50%の5億枚が存在しています。同様に30%、12%のFSチェーンを保有しているアドレスも確認出来ます。

これら保有枚数上位3位まででFSチェーンの92%、9億2000万枚が保有されているのですから毎日1000万枚規模の取引があるというチャートのデーターは到底信じられません。そもそも上場してからほぼ一貫して右肩上がりの相場上昇が継続しているというのが非常に不自然ですし、コインテンのサイトにあるFSチェーンのチャートは捏造の可能性が極めて大きいと判断します。

コインテンでの口座開設、FSチェーンという仮想通貨の取引は全く推奨出来ません。


●KWCC (kwcc.io/?lang=jp)

これは「検証71」で検証しているbitfiy (bitfiy.com/#/index) というサイトを調べていて見つけたHakasauars というYoutubeチャンネルで見つけたサイトです。このYutubeチャンネルでは一連の中国系と思われる仮想通貨関連の詐欺サイトに対して警戒を呼び掛ける動画が多数アップされていてここで検証するKWCCというサイトも警告対象になっていたというのが経緯になります。KWCCに対する警告を呼び掛ける動画は「KWCC SCAM (KWCCは詐欺)」というそのものズバリのタイトルになっていて英語、中国語、韓国語、ベトナム語、日本語で警戒を呼び掛ける文章が添えられています。日本語版警告文の冒頭部を引用します。

>これは、投資してはならないもう1つの中国のビットコイン詐欺です。すべての偽の中国のビットコイン詐欺を公開して、お金を失わないようにします。彼らはすべて同じ戦術、テンプレートを使用し、すべて中国本土から来たもので、外国からのものであると主張しています。それはあなたを騙すために雇われた人々の複数の異なるグループです。 

日本国内でこのサイトへの投資を勧誘されたとか詐欺に遭ったといった証言は見つかっていませんが結論から言えば上で検証しているCoinTen (コインテン www.cointen.io/#/)と非常に似たサイトなのでここで検証することにしました。まずはサイト冒頭のキャプを示します。表示言語の選択肢は英語と日本語のみです。

コインテンのサイト冒頭と比較してみます。互いに酷似しているのは明らかでこのキャプの範囲での違いは左上のロゴと表示言語が英語のみであることぐらいです。

さらにこの冒頭部はスライドショーになっていて3つの画像が順次入れ替わる設定になっているのですがその中には以下のキャプに示した「cointen New Version 2.0」というものがあります。閉鎖されたコインテンの後継サイトであることを認めていることになります。

さらにこの冒頭部に続く部分にはKWCCでもコインテンでも以下のキャプに示した4つの特長をまとめた部分がります。以下、順にKWCCのサイト、コインテンのサイトからのキャプですがこの部分は全く見分けがつきません。

次に扱っている仮想通貨ですがコインテンではビットコイン建てで15種類、イーサリアム建てで13種類、USDT建てで7種類の仮想通貨が取引可能でしたがKWCCではビットコイン建てで17種類、USDT建てで23種類の仮想通貨が取引可能となっています。以下がUSDT建てで取引可能な23の仮想通貨のリストです。このリストは24種類が取引されているように見えますが、よく見るとIOTAという仮想通貨が2列目と3列目に重複して登場しているのでリストは実質的に23種類ということになります。

そしてこのリストにはビットコイン (BTC)、イーサリアムクラシック (ETC)、イーサリアム (ETH)、イオス (EOS)、ライトコイン (LTC)などメジャーな仮想通貨が含まれていますし、他の仮想通貨も殆どは仮想通貨データーベースのCoinMarketCapで情報が見つかります。しかし23種の中でKWCという仮想通貨だけはCoinMarketCapでも情報が見つかりません。サイトの名称がKWCCで謎の仮想通貨がKWCですからこれは取引所独自の仮想通貨の可能性が高いと思われます。

このKWCという仮想通貨の日足チャートを以下に示します。

非常に重要な点なのですがチャートをよく見ると取引は2020年6月30日から始まっています。そして「検証63」以降で検証してきた中国系の詐欺目的と思われるサイトで上場されているが情報の見つからない謎の仮想通貨の例に漏れず、チャートは殆ど一方的な右肩上がりのチャートになっています。そして出来高にはバラツキがありますが平均すれば1日当たり20万枚程度の出来高があるようです。

しかし例によってアクセス状況を調べられるサイトで調べてみるとアクセス数は非常に少ないようですし、下のキャプに示したWho Is情報を見るとKWCCのサイトは2020年7月1日に立ち上げられたばかりのサイトです。KWCのチャートが始まっている2020年6月30日はサイトの開設日の前日ということになり、明らかに矛盾があることになります。このチャートが実際の取引を反映したものであるとは思えません。

総合的に判断してKWCCのサイトも明らかに信頼出来ません。そもそもコインテンのサイトが閉鎖されて殆ど同じサイトが代わりに立ち上がっている意味が分かりません。詐欺目的で立ち上げられたサイトである可能性は極めて高いと判断します。取引は絶対に推奨出来ません。