検証35

このページでは3つの案件に関わる以下の4つのサイトを検証しています。3つの案件には「検証13」で検証したノアコインやビットクラブなど多くの案件に登場した泉忠司という人物が関与しているようです。

●ChiliZ (チリーズ www.chiliz.io/)
●Mediarex Entertainment (メディアレックス・エンターテインメントwww.mediarex.com/)
●HotNow [HoToKeN ホットークン] (ホットナウ www.hotoken.io/)
●Virtual Currency Bank (仮想通貨バンク cryptocurrenciesbank.co/)


まずChiliz (チリーズ)という仮想通貨に関わる2つのサイトについて検証します。2つ目のメディアレックス社は親会社的な存在のようです。

●ChiliZ (チリーズ www.chiliz.io/)
●Mediarex Entertainment (メディアレックス・エンターテインメントwww.mediarex.com/)

eスポーツ (エレクトロニック・スポーツ)というコンピューターゲーム (ビデオゲーム)をプロスポーツの競技の様に扱って観客を集めて賞金獲得を競い合ったりする分野に投資するという仮想通貨の案件です。

この案件についてはTwitterの複数のアカウントから宣伝投稿が行われています。Twitterの書き込みによれば泉某という以前に検証した「検証13」で検証したノアコイン、ビットクラブなど複数の怪しげな案件に関わっている人物が紹介しているようなので検証してみました。

仮想通貨速報! (2018年3月25日)

K C (2018年3月26日)

にむまる (2018年3月26日)

さらにこれらのTwitter投稿にリンクのあるものも含めて勧誘目的と思われるブログや泉某による勧誘動画も確認されます。

竹本君の投資日記(仮タイトル)

banの仮想通貨で脱サラ街道まっしぐら

ICO爆上げ極秘情報|98%詐欺の仮想通貨市場で2%本物を探偵の視点で探り当てる!

これらTwitter投稿、ブログ、動画の多くには既に述べた泉某という人物が共通して登場してます。泉某という人物はメールマガジンでも勧誘を行っているらしく、ブログの一つ (banの仮想通貨で脱サラ街道まっしぐら)にはそのメールマガジンの内容が転載されています。そして泉某が日本における唯一の購入窓口となっているらしく、世界に先駆けて独占的にチリーズを販売すると称し、購入申し込み先としてリンク (chiliz.virtual-coin.co/)が用意されています。このリンク先に行ってみると以下のキャプにあるような購入申し込み用の窓があるだけです。連絡先情報はメールアドレス (chiliz@virtual-coin.co) があるだけです。情報開示が明らかに不充分です。

さらに泉某は仮想通貨の売買仲介を行っているので、法的な問題が生じる可能性が高いです。すなわち、金融庁は2018年2月13日にマカオのブロックチェーンラボラトリーという会社に「インターネットを通じて、仮想通貨の売買の媒介を行っていた」ことが無登録で仮想通貨交換業を行っていると判断して警告を出しています。警告文は金融庁のサイトからPDFファイルの形で入手可能です。つまり仮想通貨の売買媒介が改正資金決済法違反という判断が下されたことになります。

泉某の場合も仮想通貨交換業者の登録リストにある登録業者とは思えません。仮想通貨交換業者の登録を得ずにネットを介した仮想通貨売買仲介を行っているのであればブロックチェーンラボラトリーと同様に違法となるはずです。また住所などの開示がないことで特定商取引法違反も疑われます。

ちなみにチリーズの購入申し込みサイト(chiliz.virtual-coin.co/)と同じドメインに少なくとももう1つ既に終了したWow Bitという別の仮想通貨の購入申込みサイト(virtual-coin.co/)が存在するようです。このWow Bitという仮想通貨については調べたことがありませんが同じグループが違法性が疑われる仮想通貨の販売仲介を繰り返しているものと思われます。

ちなみにこのサイトは以下で検証するホットークンあるいは「検証38」で検証するオーキッドという仮想通貨の販売窓口としても転用されているようです。

次に連絡先情報ですが公式サイトや英語版のホワイトペーパーには以下のキャプにあるようにマルタ、中国、アメリカ(ラスベガス)にMediarex (メディアレックス)から始まる会社が存在していることになっています。マルタにあるMediarex Enterprises Ltdが本社に相当すると思われます。そしてこれがチリーズという仮想通貨事業の運営企業ということになるかと思われます。また韓国に仮想通貨事業での関与、役割が分かりませんがBlockchain Revolution Partnersという会社があるとなっています。但しいずれも電話番号がないことにかなり違和感があります。

さらにMediarexを検索するとMediarexの公式サイトと思われる表題の2番目のサイトが見つかってきます。サイトを見ると確かにビデオゲームとかeスポーツ関系の会社であることが分かります。しかしこのMediarexのサイト (www.mediarex.com/)にはメールアドレス (contact@mediarex.com)以外に連絡先情報がありません。さらに経営者情報もないし、仮想通貨関係の記述もありません。さらにこのMediarexのサイトへのアクセス状況をアクセス解析サイトで調べてみると1日の訪問者数がおよそ5人と非常に少ないことが分かります。

とてもではありませんが、メジャーなゲーム関係のサイトとは思えません。さらにこのサイトは連絡先情報などが欠けているだけでなく、非常に内容の薄いサイトになっています。例えばビデオポーカーゲームに50万人が参加していてランキングを作っているとか過去のイベントでの32万回のゲームの結果を集計しているとか書いてあるのですが、そのデーターベースが何処にあるのか分かりません。

何やら賑やかな繁華街ではなく、映画撮影用に作られた見せかけだけの繁華街のセットを見ているような空疎な感覚を覚えます。また「Mediarex」で検索しているとBloombergという大手経済関係情報サイトにMediarex Enterprises Ltdという社名が完全に一致する企業の情報を見つけました。

このBloombergのサイトにあるメディアレックス社の会社情報は単に社名が一致しているだけでなく、創設者兼CEO (最高経営責任者)の名前が右のキャプに示したチリーズの公式サイトにある創設者兼CEOの名前、Alexandre Dreyfusと一致していますし、業務内容もゲーム関係となっていて矛盾がありません。しかしこのBloombergの情報では会社所在地が公式サイトに所在地として記されていたマルタでも中国でもアメリカでもなく、租税回避地として有名で一連の検証でもしばしば架空住所として登場してきた英領バージン諸島になっているのです。

>2nd Floor, Yamraj Building, Road Town, British Virgin Islands

またこの英領バージン諸島の住所を検索してみると予測されたように酷似した住所にHunte & Co (www.hunteandco.com/contact.html)というオフショア会社が存在しているようです。

>2nd Floor, Yamraj Building, P.O. Box 3504, Road Town, Tortola VG1110, British Virgin Islands

何故オフショアの住所を使っているのか不明朗な印象を持ちます。本当にマルタに事業の本拠があるのでしょうか?

さらにメディアレックスの主力事業と思われ、ホワイトペーパーにも登場するGlobal Porker League (グローバル・ポーカー・リーグ GPL)の公式サイト (www.gpl.com/)も調べてみましたが、1日当たりの独立な訪問者数は70人ほどでしかもそのアクセスの大半はブラジルからのようです。

そもそもポーカーゲームがeスポーツとして人気種目であるとは思えません。Wikipediaのエレクトリックスポーツの項目でもシューティングゲームとか格闘ゲーム、スポーツゲームなど派手で集客力がありそうなゲームが主に取り上げられていてポーカーの様なカードゲームは説明の対象になっていませんし、メディアレックスもグローバル・ポーカー・リーグも説明の中に登場しません。現時点でメディアレックスがeスポーツの分野でメジャーな存在とは思えませんし、近い将来にeスポーツを席巻するような勢いのある会社とも思えません。

また公式サイトやホワイトペーパーには株主となっているベンチャーキャピタル1社と投資家4名が登場しています。その中にはXavier Nielというフランス人の富豪がいます。有名な経済誌・フォーブスの資産10億ドル以上を持つ資産家のランキング2018年版では81億ドルの資産を持ち、世界で186番目の資産家とされています。Forbes誌の経歴紹介Wikipedia英語版を見るとフランスでWorldNetという最初のインターネットプロバイダーを立ち上げ、のちに売却したのを始めとしてインターネットや電話通信の分野で企業あるいは事業の買収を行ってきた経歴があるようですから同じランキングで資産額227億ドル(資産額39位)のソフトバンクの孫正義氏のフランス版みたいなイメージの人物かと思います。

これだけの有名投資家が投資をするのであればそれなりにニュースになっている可能性があるのではないかと考え、実際にこの人物がチリーズに投資しているのか裏取りの為にニュースを探したのですが見つかってきたのは以下の2件のみです。いずれもGoogle Newsの検索で出てくるサイトですが、メジャーなニュースサイトとは言い難いのでどれほど信用出来るかは分かりませんがいずれの記事も日付は2015年7月14日になっています。つまり2年半以上も前に出た記事ということになります。

Venturebeat

「Mediarex Sports & Entertainment raises $4.9M to make a sport out of poker」

Porkernews

2つの記事の内容は基本的に同じで記事の日付から予測されましたがこれらの記事にはチリーズという仮想通貨は出てきません。これはメディアレックス社が仮想通貨への投資ではなく、eスポーツ事業への投資として490万ドルを投資家から集めたという記事です。2つ目の記事からXavier Niel氏らの投資に関する部分を抜粋引用します。

>The list of investors who have participated in the funding round includes an unnamed private equity fund from Beijing, as well as individuals like Hong Kong businessman and poker player Dr. Stanley Choi, investment banker Donald Tang, France's telecom tycoon and co-owner of LeMonde Xavier Niel, and Chief Commercial Officer at Perform Group, John Gleasure.

つまりメディアレックス社に北京のプライベートファンドの他、4人の個人投資家 (Dr. Stanley Choi, Donald Tang, Xavier Niel, John Gleasure) が投資したとなっています。この4人の名前はチリーズのホワイトペーパーに株主として登場した投資家の名前と一致しています。

要するにホワイトペーパーをよく読むなら「嘘」は書かかれていないと言えるかもしれません。しかし2015年7月にこれらの投資家がメディアレックス社に投資したことをもって彼らの名前を仮想通貨事業のホワイトペーパーに記すのはいささか誤解を招くのではないかと考えざるを得ません。彼らが投資したのは仮想通貨事業ではなくあくまでもeスポーツ事業でしょう。公式サイトやホワイトペーパーの記述はXavier Niel氏以下の投資家がチリーズという仮想通貨の事業の将来性を認めて投資したかのような印象を与えていると思います。また既に指摘したようにメディアレックス社がeスポーツの分野でメジャーな存在である、あるいは近い将来eスポーツの業界を席巻するかのような印象を受けかねない部分も感じられます。実際のメディアレックス社はeスポーツの中でメジャーな存在とは到底思えません。

最大限好意的に解釈してもこの案件にはかなりの誇張や印象操作があると判断します。会社の所在地情報などにも何やら引っかかるものがあり、情報公開の公明性は高く評価出来ません。さらに日本で投資を募っている泉某という人物については合法性に問題がありますし、彼らが日本での窓口になっている点についても公式サイトやホワイトペーパーに記載がないので正当性が確認出来ません。仮に勝手に日本での代理店を名乗っているとしても確認出来ないのです。総合的に判断してこの案件への投資は推奨出来ません。


●HotNow [HoToKeN ホットークン] (ホットナウ www.hotoken.io/)

この案件は表題の1つ目のサイトの冒頭に「Our ITO HAS ENDED」とあって既に募集が終了していることになっているようです。

しかしこれは上で検証したチリーズと同じく泉某という人物が勧誘&仲介を行っている案件として以下に列挙した複数のブログで紹介されている案件でもあります。この人物の紹介する案件はしばしば再募集が繰り返されているようでもあるので手遅れも覚悟して検証対象にすることにしました。

月利30%をほったらかしで稼ぐブログ (2018年3月24日)

ノアコインの次はホットークンが来る!?

sakurasakuブログ (2018年3月22日)

泉忠司によるホットークン解説動画

イエモト日記 (2018年3月23日)

ホットークン(HoToKeN)ICOは詐欺?価格・上場時期や泉忠司について!

初心者でもわかる!はまっちの仮想通貨・ICO生活ブログ (2018年3月24日)

HoToKeN (ホットークン)の仮想通貨・ICOとは?泉氏オススメ案件をチェック!

竹本君の投資日記 (仮タイトル) (2018年3月22日)

ホットークン(HoToKeN)世界最終ICOセールが泉忠司氏より紹介された件

これらのブログには泉某が日本における(独占的な)申込窓口の役割を担っているといった記述があり、申込みサイトとして以下のURLアドレスが示されています。

https://hotoken-ico.virtual-coin.co/

このURLアドレスは上で検証したチリーズの購入申し込みサイトのURL (https://chiliz-ico.virtual-coin.co/)と後半のドメインネームの部分が一致していて同じサイトのサブドメインが複数の仮想通貨の申し込みサイトとして使われていることが分かります。ちなみに現時点ではこのサイトにアクセスしてみると以下の様な既に販売枠が埋まったようなメッセージだけが表示されています。

>現在、予想を遥かに上回るICO参加の申込が殺到し、数量調整のため参加申込を一旦停止しております。

チリーズの項目でも触れましたが、泉某という人物が仮想通貨交換業者の登録なしに仮想通貨購入の仲介を行っているのであれば改正資金決済法に違反している可能性が高いものと思われます。

そしてまず例によって会社情報、連絡先情報を探しましたが表題のホットナウのサイト(www.hotoken.io/)のサイトや日本語版も用意されているホワイトペーパー (英語版日本語版)には連絡先情報が見当たりません。そこでこれらを再度よく見ると英語版ホワイトペーパーの6ページ目に以下の様な記述があることに気が付きました。

要するにHotNowというアプリケーションはカナダの株式市場に上場されているAxion Venturesというカナダの会社の協力を得てRed Anchor Trading Corporationという会社が開発したものであると書かれています。Axion Venturesに関しては後述します。まずRed Anchor Trading Corporationについて社名を検索してみるとBloombergという大手経済情報のサイトにこの企業の会社情報を見つけました。

スナップショットの項目(会社の概要)にはHotNowというモバイルアプリを開発しているとありますし、ビジネスの内容も登録者の位置情報や個人情報(性別や過去の消費履歴など)から適切な広告や割引クーポンを携帯電話に送ることにより効率的なマーケッティングを行うものとなっていて表題のサイトやホワイトペーパーの内容と一致しています。間違いなくこの案件の主導役の企業と思われます。しかしこのBloombergの情報にも会社の詳しい所在地情報は記されておらず、ただ「タイのバンコック」とだけ記されており、公式サイトへのリンク (www.hot-now.com/) があります。

そこでさらに詳しい連絡先情報を求めてこのリンク先に行ってみましたが基本的にタイ語で書かれていてよく分からない部分もあるもののやはり会社情報らしきものは全く見つかりません。左のキャプに示すようにフライドチキンとかドーナツといった商品の電子クーポンがダウンロード出来るようになっているだけです。そしてこの電子クーポンがダウンロード出来るサイトへのアクセス状況をアクセス状況を解析出来るサイトで解析して見ると以下のキャプにあるように1日当たりの独立な訪問者数はたったの10人ほどでしかありません。

一方で日本語のホワイトペーパーの10ページ目には「HotNowの現在の主な統計情報」と題して以下のキャプに示すように月刊のアクティブユーザー数、38万人以上などといった数字が記されているのですが、実際のアクセス数と比べると相当の誇張があるのではないかと疑わざるを得ません。

さらに最初のクライアントとして「タイで2番目に大きいコーヒーショップチェーンのCoffee World」という企業が登場しているので検索してCoffee World社の公式サイト (www.coffeeworld.com/) を探してきましたが、このサイトにHotNowに関する記述は全く見つかりません。

またCoffee World社が本当にHotNowのクーポンシステムを使っているのか確認しようとして「"Coffee World" HotNow」で検索してみるとHotNow側から出ている情報は簡単に出てきます。例えば右のキャプはHotNow社のFacebookアカウントからの投稿Google翻訳で訳してみるとCoffee Worldで1杯分の料金で2杯目が無料といった内容のことが(タイ語で)記されているようです。

しかし一方で奇妙なことにCoffee World社から出ている情報が見つかりません。本当にCoffee World社はHotNow社のクーポンシステムを使っている顧客企業なのか確証が見つからないのです。

個人的見解としてこの案件には相当の不審を感じざるを得ません。HotNow社のビジネスモデルは何処かで聞いたようなありふれたものであるように思いますし、現時点でのHotNow社の実績はかなり誇張されている疑いがあります。

この案件に関係しているもう一社がHotNowというモバイルアプリの開発に協力したとされているAxion Venturesというカナダの会社です。この会社はHotNow社の親会社でもあり、Axion社のCEO (最高経営責任者)はホットークンのホワイトペーパーの経営陣リストのトップに会長として登場しているTodd Bonnerという人物です。ホワイトペーパーには非常に優れた実績のある経営者として紹介されています。このBonner氏については上でリンクした勧誘ブログの中でも「創業の神様」という紹介をされており、この案件が有望であるという主張の根拠の1つになっています。

このAxion Venturesはカナダの株式市場に上場されている上場企業なので会社情報については投資家の為に公開された情報を容易に確認出来ます。例えばYahooカナダのファイナンスにはAxion Venturesの決算情報があります。但しこの会社が上場したのはつい最近、具体的には2017年の12月のようで決算情報は2015年末決算と2016年末決算の2年分だけです。そしてNet Income (純利益)の部分だけを見ると以下の様になっています(数字は1000カナダドル単位)。

2016年末決算 599万5000カナダドルの赤字

2015年末決算 72万カナダドルの赤字

ということになります。そして赤字経営を反映してでしょうがこの上場会社の現時点での株価は0.7カナダドルほどで取引が成立している日よりも出来高ゼロの日の方がずっと多いです。お世辞にも経営状態の良い会社とは言えません。ホワイトペーパーや勧誘に出てくる非常に優れた経営者、あるいは「創業の神様」の経営している会社とは思えません。

総合的に判断して公式サイトやホワイトペーパーに書かれているほどこの案件は有望なものとは思えません。むしろかなりの誇張などがあるとしか思われません。連絡先などの情報開示は明らかに不充分であり、不審を増幅させます。この検証を書いている時点で既に締め切られた案件かもしれませんが仮に今後再び投資機会があったとしても参加は推奨しません。

※付記

以下のキャプに示した様にmatomaというサイトでこの案件について集団訴訟の呼びかけが行われています。泉忠司を経由してホットークンを購入して1年経過しても配布されないということの様です。また泉忠司については他の案件についても続々と集団訴訟の呼びかけなどが行われているようです。「検証13」のノアコイン、以下の仮想通貨バンクの項目など参照してください。


●Virtual Currency Bank (仮想通貨バンク cryptocurrenciesbank.co/)

これも上で検証した2つの案件と同じく泉某という人物の紹介していた案件です。既に募集は終了していると思われますが、上の2つの案件との関連も考えられるので検証対象にします。但し情報公開が著しく限られていて検証するにはかなり情報が不足していることが否めません。何しろ表題のサイトを見ても殆ど情報がなく、連絡先情報さえ開示されていないのです。辛うじて記されているのはサイトの脚注部にあるメールアドレスだけです。明らかに情報開示が不適切であり、これだけで違法性を問われることになると思われます。

このサイトでまとまった情報があるのは「よくある質問」の項目だけです。幾つかの項目を抜粋引用します。

>最低の預け入れ額、最高の預け入れ額はいくらですか?

>最小のお預入額が1口=0.1ビットコインで、一回のお申込みは1口以上からとなります。 後日追加お申込みも可能です。満期日は申込み単位ごとに異なります。また上限は設けておりません。

>仮想通貨バンクはどこに所在するのでしょうか?

>ファンドライセンスを所有したケイマン法人の商品となります。

>仮想通貨バンクの自分の運用状況を知る為に、オンラインバンキングサービスのようなウェブ上で運用が確認できるサービスはありますか?

>はい。公式ホームページのマイページ内にて、リアルタイムでドルベースの運用状況(ポートフォリオ)がご確認いただけます。

>満期前に解約することは可能でしょうか?

>2年満期にて運用する商品となるため、2年以内の解約引出しは原則不可となります。 相応の理由にて解約を希望される場合には、解約時運用額の30%が解約手数料となりますのでご注意ください。

>金融資産を預かるには、金融庁の登録や許可が必要登録思いますがそれは済んでいますか?特定商取引法の記載がありませんが大丈夫ですか?

>各国の法律に準拠したビジネスモデルでサービスの提供を行っております。

どうやら特定商取引法に従って連絡先情報などを公開するつもりは当初から持ち合わせていないようです。所在地はカリブ海に浮かぶケイマン諸島となっていますが仮想通貨バンクのサイトは日本語版しか存在しないのですから日本以外で営業しているとは思えません。何故日本でなく租税回避地として知られるケイマン諸島を所在地とするのか怪しさを感じざるを得ません。また2年後の満期が来るまで解約は出来ないようです。情報公開が極めて不充分な上に過去の運用実績も具体的な運用先などの情報も示されていないのに2年もの運用を委ねることにかなりのリスクを感じます。

とにかくこれだけの情報では話しにならないので、検索すると複数の勧誘うサイトが存在していることが分かりました。

http://altcoinbank.co/int/his01/

http://altcoinbank.co/int/022his/

http://altcoinbank.co/int/ep_03/

http://altcoinbank.net/bksanka/

http://altcoinbank.net/last/

これら5つのサイトの内、最初の3つについては殆ど何の情報もありません。しかし4番目、5番目には最後の部分に小さい活字で目立たたないような形ではありますが「特定商取引法に関する表示」というリンクが用意されています。

ようやくケイマン諸島の住所だけは出てきましたが電話番号がありません。またようやく出てきたケイマン諸島の住所を検索してみると大手経済情報サイトのBloombergにQLO Capital Holding Ltdという会社が私書箱まで一致する住所に存在しているという情報を見つけました。

このQLO Capital Holding社の業務内容が分かりませんが、ケイマン諸島という住所を考えるとオフショア会社である可能性は高いものと思われます。またこのQLO Capital Holding社についてさらに検索するとケイマン諸島政府から2017年11月20日付で出ているGazette (官報)と題するPDFファイルの中で(106ページ目)法人登録を取り消された業者とされていることが分かりました。私書箱の番号が流用されるとは思えないのでこの住所は既に閉鎖されたオフショア会社のものである、つまりケイマン諸島という住所だけで予想されたことですが架空住所の疑いが濃厚と考えざるを得ません。

さらに以下は上でもリンクした4番目の勧誘サイトからのキャプですが、この仮想通貨バンクで実際の運用などに携わる3人の人物を紹介するものです。

ここで登場する3人の人物と紹介されている経歴の一部は以下のようになっています。

Mark Cachia (マーク・カチア)

エアステ・バンクCIOかつ代替投資責任者

1994年にボストン・カレッジで学士号を成績最優秀で取得。ファイ・ベータ・カッパ全米優等生協会会員。同年にGarban LLCで機関債券ブローカーとしてキャリアを開始。その後、ニューヨーク、Hennessee Group, LLC の部長兼ヘッジファンドアナリストを務め、2003年からオーストリア、ウィーンを拠点とするエアステ・バンクの代替投資グループに加入。現在はエアステ・バンクのCIO兼 代替投資責任者として、エアステ・グループ・バンク・ホールディングスのポートフォリオ管理を行う。

Ivo Winistorfer (イヴォ・ヴィニストファー)

Progressive Capital Partners Ltd CEO 業務執行社員

Gavin Wood (ギャビン・ウッド)

イーサリアム共同創設者・元CTO (最高技術責任者)

特に運用に直接関与するのはマーク・カチアとイヴォ・ヴィニストファーの2名となっているようです。ところが例えば最初に登場するマーク・カチアという人物について検索してみると本人のものと思われるLinked Inのアカウントが見つかりますがそこに記されている情報と仮想通貨バンクのサイトで紹介されている情報は必ずしも一致していません。ボストンカレッジ出身という学歴など一致している部分もあるので同一人物であるのは間違いないと思うのですが、現在勤務しているのはエアステ・バンク (Erste Group Bank)ではなく、Scytale Venturesとなっています。

さらに以下のキャプに示すようにこの人物がエアステ・バンク (Erste Group Bank)に勤務していたのは2003年6月から2015年6月までとなっていて3年近く前にエアステ・バンクを去っていることになっています。また仮想通貨バンクの運用を担っているといった記述は全く見つかりません。

さらにエアステ・バンク (Erste Group Bank)の公式サイトにある経営陣の情報にも現時点でマーク・カチアという人物の名前は確認出来ません。やはりこの人物は何年か前にエアステ・バンクを去っていると考えるのが妥当だと思われます。

さらに重要なこととしてこのマーク・カチアという人物が本当に仮想通貨バンクで運用などを担っているという客観的な記述は検索しても全く見つかりません。同様に仮想通貨バンクの運用に関わっているはずのイヴォ・ヴィニストファーという人物について調べてみてもProgressive Capital Partnersに勤務していることは確認出来るものの仮想通貨バンクの運用に関与しているという証拠は全く見つかりません。具体的には例えば「"Mark Caciha" Cryptocurrency bank」で検索しても殆ど何も見つからず「"Mark Caciha" Virtual currency bank」で検索して見つかるのは日本語で仮想通貨バンクについて紹介しているサイトだけです。本当にこれらの人物は仮想通貨バンクに関与しているのでしょうか?そもそも既に指摘していますが、仮想通貨バンクのサイトは日本語サイトしか存在しません。マーク・カチアもイヴォ・ヴィニストファーも欧州(それぞれオーストリアとスイス)の人間となっているのに何故仮想通貨バンクのサイトは日本語版しか存在しない、つまり欧州では投資を募集していないのでしょうか?しかも仮想通貨バンクの名目上の所在地はカリブ海に浮かぶケイマン諸島なのです。

総合的に判断してこれらの人物が本当に仮想通貨バンクの運用に参加しているかどうかはかなり疑問と考えざるを得ません。ケイマン諸島の住所を使っていることなどそれ以外の部分についても信用し難い情報が多いです。さらに日本で投資目的で資金を募るならば金融商品取引業者の登録が必要であるはずです。仮想通貨で運用するというケースについては金融庁の判断が明確でない、グレーゾーンであるという問題はありますが合法性にも大きな疑問があります。投資先として推奨することは出来ないという結論にならざるを得ません。


※付記

2019年3~4月になって泉忠司事務所が消費者機構日本という組織から提訴されたことが報道されました。詳しくは「検証13」のノアコインの検証の付記11にまとめてあります。さらにはこれをきっかけとして関連してmatomaというサイトでパルテノン、ノアコイン、仮想通貨バンクなど泉忠司が関与してきた案件に対して包括的な集団訴訟の呼びかけが行われ、担当する弁護士も決まっているようです。2019年7月現在で請求予定金額4億円超となり、集団訴訟に加わる人を二次募集中のようです (下のキャプ参照)。 さらに同じ泉忠司案件では上で検証しているホットークンについても集団訴訟が呼びかけられています。