検証61

このページでは以下を検証します。検証項目は順次追加の予定です。

●junca Cash (ジュンカキャッシュ junca-cash.world/jpn/)


それでは検証を始めます。

●junca Cash (ジュンカキャッシュ junca-cash.world/jpn/)

偶然見つけたアルトコインの案件です。以前はjunca Coin (ジュンカコイン)と名乗っていた時期もあるようで公式サイトもjunca Coinを含むURLアドレス(http://junca-coin.com/) を使っていたようです。しかしその後、名称が現在のjunca Cash (ジュンカキャッシュ)に変更されたようでジュンカコインのサイト(http://junca-coin.com/) にアクセスすると表題のジュンカキャッシュのサイトにリダイレクトされます。従って本検証ではジュンカキャッシュで統一します。

まず以下は表題の公式サイト冒頭部のキャプです。英語、中国語、日本語での表示に対応となっています。後述するようにフィリピンを拠点としているようなのにフィリピンで広く使われているフィリピン語 (タガログ語) には対応していないようです。以下の検証ではこの公式サイトと以下のキャプにもリンクが見えるホワイトペーパー (日本語版)を主な検証対象とします。

まず公式サイトやホワイトペーパーを読んで感じたのは本サイトで以前に検証した2つのアルトコイン、具体的にはNOAH Coin (ノアコイン、「検証13」参照) およびPhilippine global coin (フィリピン・グローバル・コイン、PGCコイン、「検証29」参照)との類似性です。ノアコインやフィリピン・グローバルコインについてはそれぞれの検証を参照して欲しいですが、いずれも買っておけば大儲け出来ると言った宣伝文句の通りにはなっておらず、損失を抱えた人が大量に出ている疑いが極めて濃い案件になっています。

具体的な類似点として主に以下の2つの点が挙げられます。

▼本拠地が置かれているのはフィリピンであるが主要な運営者は日本人である。

▼Overseas Filipino Workers (OFW、フィリピン人海外労働者)の為の主要な海外送金手段となることを目指している。

まず類似点の第一項である本拠地に関してですが以下のキャプは公式サイトの脚注にある連絡先情報です。

まず類似点の第一項目、連絡先情報と運営者についてですが、右のキャプはホワイトペーパーの末尾にある会社情報のキャプです。

>会社名:junca Philippines Inc.,

>住所 (メインオフィス):junca Philippines Inc. ug-5 Cityland Pasong Tamo Tower, Chino Roces Avenue, Pio del Pilar, Makati

>代表: 永留久之

>創業年月日: 2016年2月16日

>業種: コンサルティングマーケッティング業務、美容業全般、美容サロン運営・フランチャイズ、輸出入業

代表は明らかに日本人としか思えない永留久之となっています。経営陣については後述します。

業務内容は金融とか仮想通貨に関係しているとは思えないものばかりです。これまで金融業界で実績があった会社とは思えません。

さらに公式サイトの脚注部分にも連絡先情報があります (以下のキャプ参照)。こちらの住所はホワイトペーパーの住所より長く、フィリピンという国名まで含んでいます。またホワイトペーパーにはなかった電話番号やメールアドレスが記されています。

>+63 905 363 8046

>admin@junca-coin.com

>junca Philippines Inc. ug-5 Cityland Pasong Tamo Tower, Chino Roces Avenue, Pio del Pilar,MAKATI, Metro Manila, Philippines


次にビジネスモデルについてですが以下は公式サイトの「Junca Cashについて」という項目のキャプです。junca Cashの使途なるものが並んでいます。

ここで特に注目したのは5番目の

>フィリピン人海外労働者 (OFW) 向けの海外送金

という項目です。これはまさにNOAH Coin (ノアコイン、「検証13」参照) およびPhilippine global coin (フィリピン・グローバル・コイン、PGCコイン、「検証29」参照)で主要な役割とされていたものです。ノアコインやフィリピン・グローバル・コインについてはその後きちんとフォローしている現状をきちんと認識している訳ではありませんがフィリピンの外国人労働者にとっての支払い手段として確立したとかコインの市場価格が大きく上昇して投資した人たちが大きな利益を得たなんていう状況にあるとは思えません。そもそもノアコインやフィリピン・グローバル・コインが既にフィリピンの外国人労働者が用いる送金手段として地位を確立している状況にあるのならばジュンカキャッシュが必要とされるとは思えません。正直なところノアコインなどに似たビジネスモデルと聞いただけで印象が良くありませんが、以下では経営陣やビジネスモデルについて検討を加えることにします。


まずプロジェクトの代表となっている永留久之という人物についてですが公式サイトの記載によれば美容関係の仕事をしてきた人物のようです。

この永留という人物のオフィシャルサイトにある経歴 (以下のキャプ参照)を 見てもやはり美容業界の人間の様で金融業界に関係してきたような気配は感じられません。

そしてこの永留という人物の主要事業はフィリピンにおける美容サロン (?)の経営のようですが、公式サイトにある以下の図によれば企業グループがあって美容サロン事業にFinancial section (金融部門)、Technology Section (テクノロジー部門)、Costruction Section (建設部門)があるとなっています。

これらの内、本業であると思われる美容サロン事業については2011年のプレスリリース記事によれば2010年に福岡で事業を開始したようです。しかし上の永留という人物の経歴にもあるように2013年には日本国内の店舗は閉鎖して事業を完全にフィリピンに移しているようで現時点ではフィリピン国内に以下のキャプに見える4店舗を運営しているようです。どういう違いがあるのか分かりませんが最初の1件は「junca salon」、残りの3件は「junca BEAUTY LABEL」と名付けられているようです。

これら4店舗の内、2件目のjunca Beauty Labelの住所

>UG-17 & UG-26 Cityland Pasong Tamo Tower, 2210 Chino Roces Ave, Makati City

は上で引用したジュンカキャッシュの運営元であるjunca Philippines Inc (ジュンカフィリピン)の所在地住所

>ug-5 Cityland Pasong Tamo Tower, Chino Roces Avenue, Pio del Pilar, Makati

と部屋番号と思われる部分が違うぐらいで殆ど同じです。どうやら美容サロンとジュンカキャッシュの運営元は同じ建物の中にあるようです。美容サロンの事業は規模はともかく、かなり以前より実際に稼働しているらしいことが分かります。しかしこれだけの事業規模で果たして独自の仮想通貨を創出したところで決済手段として定着が期待出来るかどうかは相当に疑問でしょう。

右のキャプはホワイトペーパーの28ページからの抜粋ですが現時点では4店舗しかないと思われる美容サロンを2020年度内にフィリピン国内だけでも100店舗に急拡大するとなっています。そしてフランチャイズ形式で店舗を拡大するのにあたって平均1200万円のフランチャイズ費用についてジュンカキャッシュでの支払いを義務付けることによってジュンカキャッシュの価値を高めるという主張なのですが果たして現時点での4店舗を1年で100店舗に拡大するという事業計画にどれほど実現の可能性があるのか正直疑問ですし、フランチャイズ費用のような一時的な決済についてジュンカキャッシュでの支払いを義務付けたところでどれほど決済手段としての定着が図れるかはさらに疑問です。仮に2020年度の1年で4店舗を100店舗に急拡大することに成功したとしても、その次の一念 (2021年度)についてもさらに100店舗といった規模で美容サロンを拡大し続けるのはさらに困難になるでしょう。ジュンカキャッシュがフランチャイズ費用の支払いにしか使われる予定が無いのだとしたらジュンカキャッシュの価値が上昇するという主張に同意するのは難しいです。

ジュンカグループの美容サロン以外の事業分野については非常に情報が少なく、どれほどの事業実体があるのかさらに疑問です。例えばジュンカグループを紹介するページ (junca-beauty.com/mainsalon/) からそれぞれの部門を紹介すると思われるリンク先などたどってみましたけど美容サロン事業以外に事業として挙げられているFinancial section (金融部門)、Technology Section (テクノロジー部門)、Costruction Section (建設部門?)の内、最後の建設部門 (?)についてはリンクさえ用意されておらず、何も情報がありません。さらにテクノロジー部門という項目にあるリンクをクリックしてみると出てくるのは「Juncalogy」というページで水素、プラチナ、アミノ酸などを使ったコスメ用品の紹介が記されているだけです。「テクノロジー分野」という言葉からかなりかけ離れた印象がありますし、記されているコスメ用品の入手方法とか価格も記されておらず、少なくとも現状で大きな事業になっているようには思えません。残りの金融部門についてもリンクはジュンカキャッシュの公式サイトに繋がっているだけです。少なくとも現状において決済手段としてのジュンカキャッシュの普及に繋がりそうな大きな事業とは思えません。

次に代表者の永留という人物以外の運営陣について少々説明します。ホワイトペーパーにはジュンカキャッシュの運営に携わるとされている人物が6人紹介されています。この6人の中で最も気になったのは以下のキャプに示したHidetoshi Itohという人物で肩書はExecutive Advisor (エグゼクティブ・アドバイザー) となっています。

名前や顔に既視感を感じたので調べてみるとこの人物は「検証38」で検証したジュピターコインの案件に運営陣の1人として登場していた伊藤秀俊という人物と同一人物であることに気が付きました。以下のキャプはジュピターコインの公式サイト( jupiter-ico.com/japanese/)で2020年3月現在でも確認出来る伊藤秀俊という人物の紹介です。プロジェクトリーダーとされている元財務官遼、元国会議員の肩書を持つ松田学の次にこの伊藤秀俊という人物が登場しています。

ジュンカキャッシュのホワイトペーパーにあるHidetoshi Itohの経歴とジュピターコインの公式サイトにある伊藤秀俊の経歴を比較してみると最終学歴のスタンフォード大学大学院卒に加え、オリンパス、Och-Ziff Capital、早稲田大学客員教授、フューチャー社I、IBM、マッキンゼー&カンパニーといった職歴が全て一致しており、顔写真を比較しても間違いなく同一人物でしょう。肩書はジュピターコインとジュンカキャッシュの両方でExecutive Advisor (エグゼクティブ・アドバイザー) と共通しています。

そして「検証38」のジュピターコインの検証の特に付記にまとめてありますが、ジュピターコインは既に投資してしまった人たちが大きな損害を被って裁判沙汰になっているような案件です。元社員の内部告発などから最初から詐欺を意図していた案件としか思えません。こうした人物がジュンカキャッシュの主要な運営陣の一角として登場しているとなればジュンカキャッシュの信頼性を疑わざるを得ません。

さらに以下のキャプに示したのは伊藤秀俊と同様にExecutive Advisor (エグゼクティブ・アドバイザー) という肩書でジュンカキャッシュの運営陣の一角を占めているTadaaki Inoueという人物の経歴です。

この英語で書かれた経歴を見ると警視庁警察学校入学以来警察一筋の経歴ということが分かります。但しこの経歴には違和感を感じる部分があります。例えば警察学校を卒業してまず配属されたのが「Kameikei Police Station」と記されています。しかし少なくとも現在の警視庁の警察署一覧を見ても「Kameikei Police Station」に該当する警察署が見当たらないように思います。亀有署の間違いでしょうか?さらにその後は神田署勤務を経て「Takawa Police Station」に勤務したとなっているのですがこれは「高輪署 (たかなわしょ)」の間違いではないかと思われます。自分が勤務していた警察署の名前を間違うなどということが有り得るでしょうか?

さらにTadaaki Inoueという名前の検索や画像検索でこの人物のものと思われる公式サイトを発見しました。以下が見つかってきた「別所憲隆公式サイト」というサイトの冒頭部のキャプです。

顔写真はホワイトペーパーにあったTadaaki Inoueの顔写真と明らかに同じものであり、別所憲隆を名乗ってはいますが小さな字で「戸籍名 井上 忠明」とも書いてあるので間違いなく同一人物でしょう。問題はこの「別所憲隆公式サイト」に書かれているこの人物の経歴です。以下にキャプを示します。

学歴は米国コロラド州立大学、ブラザーフッド大学、ハワイ国際大学で博士号を取得となっていてこのハワイ国際大学も調べてみるとアメリカの大学として認められているようなものではないようですが、とにかくここで一番問題なのは経歴がホワイトペーパーに記されていたTadaaki Inoueの経歴と全く一致しないという点です。ホワイトペーパーでは警視庁に長年勤めていたと記されていたのに本人の公式サイトと思われるサイトの経歴では警察との関連なんて全く出てきていませんし、ジュンカグループとか仮想通貨事業との関係も全く出てきません。一体これはどういうことなのか全く理解に苦しみます。少なくともどちらかの経歴がデタラメである可能性を考えざるを得ませんが、どちらがデタラメなのかは判断出来ません。いずれにしろジュンカキャッシュの運営陣を調べてみると全面的に信用出来るとは思えない部分があるのは確かです。

次にジュンカキャッシュの用途として最も強調されているフィリピン人海外労働者 (Overseas Filipino Workers (OFW)の為の主要な海外送金手段となることを目指しているという点について公式サイトやホワイトペーパーにある記述を拾ってみます。この点に関しては断片的で具体性に欠ける部分もあるのですが読んでいてかなり違和感を感じた部分が多いので以下で説明します。

まず以下はホワイトペーパーの12ページ目にあった記述ですが、ジュンカキャッシュはフィリピン人海外労働者による送金のシェア30%を獲得することを目標とするとあります。

そして30%のシェアを獲得する為の武器となるのが他の送金手段よりも安い送金手数料であるという主張がホワイトペーパーの13ページにあります。具体的には送金手数料を1%にする目標であるとなっています。そしてこの送金手数料で年間最大300億ドルの利益が見込めるとなっています (以下のキャプ参照)。

しかしこの説明にはいきなり大きな違和感があります。年間最大300億ドルの利益が見込めるとありますが、300億ドルというのは1ドル=100円で考えて実に3兆円という巨額です。1%の送金手数料を課すだけで3兆円の利益が得られるということは3兆円の100倍である300兆円もの送金を扱わなければならない計算になるはずです。ジュンカキャッシュは海外送金の30%のシェア獲得を目指すという目標が記されていましたから海外に出稼ぎに出かけるフィリピン人労働者がフィリピンに送金する金額は全体として1000兆円規模ということになってしまいます。これは直感的に金額として大きすぎると思ったので調べてみると以下の様な情報が見つかってきました。

送金受取額ランキングで国別4位、ASEANでは首位(フィリピン、日本貿易振興機構 [JETRO]、2020年3月3日)

>世界銀行は、2019年に海外の労働者が自国に送金した受取額の国別ランキングを発表し、フィリピンは世界第4位だった。

>世界銀行によると、2019年に在外フィリピン人労働者(OFW)によるフィリピンへの送金額は350億7,100万ドルとなり、前年(338億900万ドル)より3.7%増加した。

フィリピン、18年の海外送金 3.1%増に鈍化 (日本経済新聞、2019年2月15日)

フィリピン中央銀行は15日、2018年の出稼ぎ労働者ら在外フィリピン人からの送金額が前年比3.1%増の289億ドル(約3兆2000億円)だったと発表した。

愛する家族のために:フィリピンの出稼ぎ労働者の実態 (Global News View、2018年8月23日)

>2017年には総額約2,050憶ペソ(約1,050億円)が出稼ぎ労働者によって海外からフィリピンに送金されていることがわかる。

統計年度やおそらく正規の就労ビザを取得していない不法就労者などを含めているかどうかなどで必ずしも数字が一致している訳ではありませんが、ホワイトペーパーの記述から想定される在外フィリピン人労働者の送金額合計・1000兆円規模よりははるかに小さく、数千億円単位です。桁数が4つも異なることになります。

さらに上で引用した記事の1つによればフィリピンの在外労働者の出稼ぎ先となっている国で最も多いのはサウジアラビア (25.4%)、アラブ首長国連邦 (15.3%)、クウェート (6.7%)などの中東諸国です。香港なども含めれば在外労働者の受け入れ先は85.5%がアジア圏です(以下のキャプ参照)。

フィリピンの在外労働者に安価な送金手段を提供するという事業を考えるならば当然これらの国からの送金を可能にしなければならないはずです。しかしホワイトペーパーで引用されていたフィリピンの新聞の記事を読むと以下のキャプの赤枠で囲った部分によればジュンカグループのCEOである永留久之氏はフィリピン中央銀行の最終認可を待って少なくとも50台のジュンカコイン (ジュンカキャッシュ)を米ドル、日本円、フィリピンペソといった法定通貨に両替出来るATMを設置すると語ったようです。

就労ビザの取得が容易ではなく、実際にフィリピンの在外労働者の受け入れ国としてそれほど比重の大きいとは思えない日本やアメリカの通貨に対応するよりもサウジアラビアやアラブ首長国連邦の通貨に対応することの方がよほど重要ではないかと思われるのになぜこうした事業計画なのか全く理解出来ません。

それからジュンカグループが使うATMについて公式サイトには以下のキャプに示したような記述があります。

>先日、韓国の仮想通貨業界で有名なFUNKEYPAY Holdings Co., Ltd.と契約を結びました。

文章では提携先がFUNKEYPAY Holdingsとなっているのに上の画像の右上、青枠で囲った部分にはどう見てもFUNKEY Holdingsと書いてあってどちらが正しいのか混乱しますが検索してみるとFunKeyPay (FNK)という仮想通貨が存在していた形跡が見つかります。例えばFunKeyPayの公式Twittterアカウントと思われるものが見つかってきました (以下のキャプ参照)。

しかしこのFunKeyPayという仮想通貨は2020年4月現在で仮想通貨のでたーベースであるCoinMarketCapのリストにありませんし、何よりも上のTwitterアカウントからもリンクのある公式サイト (https://funkeypay.com/) が閉鎖されているようです。また上のTwitterアカウントも2019年12月12日以降は投稿がありません。

これではFUNKEYPAY Holdingsと提携したのが事実であってもとてもではありませんが信頼に繋がる材料とは思えません。

そしてジュンカキャッシュはWBF exchange (WBFエクスチェンジ www.wbf.info/)という仮想通貨取引所で2020年2月20日にIEOが行なわれたようです。

しかしジュンカキャッシュの公式サイトには2020年3月20日に予定されていた上場をコロナウイルスの影響を理由に延期するという告知が出ています。正直なところ、これで上場延期の理由になっているのか疑問を感じます。

総合的に判断してこの案件の信頼性は高く評価出来ません。何より本気でフィリピンの在外労働者に送金手段を提供するつもりがあるのか疑ってしまうほどビジネスモデルが粗雑ですし、そもそもこうしたかなり限られた用途の為に独自の仮想通貨の必要性があるかどうかも非常に疑問です。2020年4月中旬までの上場延期が発表されていることも気になります。今さらですが投資は推奨しません。