検証25

このページでは以下の案件を検証しています。

●Lenders Coin (レンダーズコイン lenderscoin.co.jp/
●USI-TECH (USI-テック usitech-int.com/ )
●Tech Coin (テックコイン www.techcoin.com/)


検証を始めます。

●Lenders Coin (レンダーズコイン lenderscoin.co.jp/

これはYahoo知恵袋に出てきた質問で知ることとなりました。投稿者のID非公開で質問投稿そのものは何故か投稿翌日には削除されています。内容的にもステマ目的の投稿だった可能性が高いと思います。

検索すると表題の公式サイト、企業側の発表をそのまま掲載するプレスリリースサイトなどが引っかかってきました。

@Press 「プロにレンディング運用をお任せ! 仮想通貨「レンダーズコイン」の提供を開始」

さらに公式サイトにはホワイトペーパー(企画書)がPDFファイルで用意されているので公式サイトやプレスリリース記事の内容と共に主な検証対象にしました。まず連絡先情報ですが、公式サイトには電話番号がなく、住所しか見当たりません。

> 1-15-7 Ginza, Chuo-ku, Tokyo, Japan

わざわざ連絡先だけ英語で書いてありますが、日本語に直すと

>東京都中央区銀座1-15-7

ということになるかと思われます。さらにプレスリリース記事にも連絡先情報がありますが、こちらにも電話番号ありません。住所は「3F」の部分だけ詳しくなっています。

>■会社情報

>レンダーズコイン株式会社

>代表取締役:新井 英樹

>所在地 :東京都中央区銀座1-15-7 3F

この住所を検索するとこれはレンタルオフィス東京・銀座(サービスオフィスBiz Home Ginza)というバーチャルオフィス/レンタルオフィス業者の住所に一致します。

またレンダーズコインの法人登録を国税庁の法人番号公表サイトで調べると法人名と住所が一致する法人登録が見つかりました。

>法人番号 3010001188459

>商号又は名称 レンダーズコイン株式会社

>本店又は主たる事務所の所在地 東京都中央区銀座1丁目15-7-3F

>最終更新年月日 平成29年12月21日

>法人番号指定年月日 平成29年12月18日

この「東京都中央区銀座1丁目15-7 3F」という住所で法人登録を調べるとレンダーズコイン社の登録を含めて33件も見つかります。「3F (3階)」の部分を除いて「東京都中央区銀座1丁目15-7」で法人登録を調べると該当数は474件にまで膨れ上がります。不動産屋の情報サイトによればこの住所にあるマック銀座ビルという1Kのマンションと事務所スペースから成るビルにそれほど床面積があるようには見えませんし、法人登録数が非常に多いのでこの住所に法人登録している会社の多くはレンダーズコイン株式会社を含めてこの住所に会社の実体が存在しない可能性が高いです。さらに法人登録(法人番号指定年月日)が平成29年(2017年)12月18日と非常に新しいことにも注目すべきでしょう。つまり住所がバーチャルオフィス/レンタルオフィス業者の住所に一致して会社が実在するかどうか疑わしいこと、電話番号がないこと、法人登録がつい最近であることなど考えると信頼性が高い企業とは思えません。

肝心の仮想通貨ですが、レンダーズ(貸し手、金貸し)コインという名前から予測出来るように調達した資金を(Zaifなどの)国内、国外の仮想通貨取引所で貸し出して金利を稼ぎ、配当を出すということになっています。

貸付事業で得られた収益の75%を出資者(コインの購入者)に配当として支払い、年間利回りが150%を予定しているようです。

収益の75%を配当に割当てその利回りが年150%になるということは仮想通貨取引所での貸出事業では年に150% ÷ 75% = 200%の利回りが得られているはずということになります。さらにはホワイトペーパーには集めた資金の配分として以下の様な説明があります。

レンディング資金 77%

システム開発費 10%

運営費 7%

アドバイザー費 6%

集めた資金の77%だけが貸出しに回わらないのだとすれば投資した人に年に150%の利回りを払うには年200% ÷ 77% ≒ 年260%の金利で借りてくれる借り手を見つけなければならない計算になります。これは非現実的な数字としか思えません。そんなに仮想通貨取引所での貸出事業で高利回りが得られるならば単に銀行から資金を低金利で調達して貸出しに回すだけで大儲け出来ることになってしまいますから貸し手になりたい投資家は山ほどいるでしょう。貸し手希望者が多ければ市場原理に従って金利は銀行などの金利に接近するはずです。貸出先の1つとして挙がっている日本の仮想通貨取引所・Zaifの公式サイトにある信用取引の説明のページを見ると借入手数料(信用取引の金利)は以下にあるように「1日当たり0.039%」となっています。これは年利で14.235%でしかありません。とてもではありませんが、年に150%の配当なんて不可能です。

さらにレンダーズコインの購入では仮想通貨のイーサリアムで代金を支払い、配当の支払いもイーサリアムで支払われることになっています。販売価格さえもレンダーズコイン1枚当たり0.001イーサリアムとなっています。

何故わざわざイーサリアムで代金を支払ったり、配当を受け取ることになるのでしょうか?何故仮想通貨払いになっているか考えるとしばらく前に多くの被害者を出したHYIP (ハイプ High Yield Investment Program)と呼ばれるポンジースキームの(自転車操業方式で運用実態がない)投資詐欺を思い起こさざるを得ません。HYIPでも運用資金の入金方法として仮想通貨払いが指定されていることが特徴の一つとなっていました。匿名性の高い仮想通貨での入金ならば詐欺グループが連絡先情報を開示せずに運用資金を受け取り可能であるという点が悪用されていたのです。レンダーズコインの場合も電話番号が示されていないこと、住所も架空である疑いがあることなど考えると、銀行口座さえ必要せず、匿名性も高い仮想通貨での支払い方法が悪用されているのではないかと疑いたくなります。

またレンダーズコイン投資には法的な問題もあります。仮想通貨が通貨であるかどうか、金融商品取引法や貸金業法など金融関係の規制対象になるかどうかなどはまだグレーのままですが、利息制限法で定められている20%という上限金利と比べて年200%の利回りはあまりにもかけ離れています。そもそもレンダーズコインは仮想通貨を名乗っていても法律的には金融商品に分類されるべきではないのかと疑わざるを得ません。少なくとも「検証24」で検証したビットコネクトコインを仮想通貨の名を借りた金融商品と認定したアメリカのテキサス州のTexas State Securities Board (テキサス州証券委員会)ならばレンダーズコインにも同様の判断を下して州内での販売を停止する決定を出すと思います。日本の金融庁からも2017年10月27日付で「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」と題する事業者に向けた注意喚起が出ています。その2ページ目に以下の様な記述があります。

>また、ICO が投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。

レンダーズコインの場合もこの基準に照らして考えれば配当を出しているのですから日本でも「金融商品」に該当し、金融商品取引法の規制対象になると判断される可能性は極めて高いと思われます。ちなみにレンダーズコイン株式会社は日本で金融商品を販売するのに必要な金融商品取引業者の登録リスト、日本で貸金業を営むのに必要な貸金業者の登録リストに該当は無いようです。この様な法規制の問題についてはレンダーズコインの公式サイトに「注釈」として但し書きがあります。一部を抜粋引用します。

>※1「運用」とは、わかりやすい表現にしたもので、金融商品取引法上の「運用」には該当致しません。

>※2「配当」とは、わかりやすい表現にしたもので、後述するとおり、トークン保有数に応じて行われます。そのため、金融商品取引法、 出資法上の配当には該当しません。もっとも、仮想通貨については、 確立された裁判例等による法解釈が行われておらず、今後、裁判例や法改正に よりご対応が変更される可能性があります。

>※3「資金」とは、わかりやすい表現にしたもので、保有する仮想通貨そのもののことを指します。

>※4「利息」とは、わかりやすい表現にしたもので、現時点での政府解釈では、仮想通貨は「金銭」に該当しないため、貸金業法及び利息制限法所定の「利息」には当てはまりません。もっとも、今後、民法の一般原則(民法90条公序良俗違反無効)に照らし仮想通貨間の利息について一定の制限が課される可能性があります。

これは法律的にこの仮想通貨がグレーゾーンであることを意識した但し書きであるように思います。そもそもレンダーズコインは仮想通貨を名乗っていますけど、現状で決済に使えるような記述は何もありませんし、将来的にも決済手段として普及させる予定、意思があるのかなどについての記載も全く見当たりません。ロードマップに

>2018年10月 US取引所に上場

>2019年1月 韓国およびUS他取引所に上場

とあるだけです。決済手段として機能する予定さえ見つからない仮想通貨を仮想通貨と呼べるのでしょうか?これは単に金融商品としての法的扱いを免れる為に仮想通貨であると言い張っているだけのようにしか見えません。

会社の信頼性、合法性、異常な高利回りの根拠などどれを取っても高い評価は出来ません。この仮想通貨(?)への投資は非常にリスクが高く、推奨出来ないと判断します。


●USI-TECH (USI-テック usitech-int.com/ )
●Tech Coin (テックコイン www.techcoin.com/)

同じグループによる関連サイトなのでまとめて検証します。但し後者のサイトは現状では前者のサイトをコピーしただけのような形になっています。まずはUSI-TECHのサイトから検証します。本来はこれら公式サイトと思われるサイトにある情報だけを検証の対象にしたいのですが、残念ながら公式サイトにある情報は具体性に欠けていて不充分、おそらくはかつて書かれていた情報が現在では削られている、あるいは登録しないと見ることが出来ない設定になっていると思われるので検証を行うのに不足です。しかしこの案件では後述するように勧誘報酬を出してネズミ講方式で勧誘を行っているようであり、勧誘報酬目当てと思われるサイトや動画が多数存在しています。そこでそれら勧誘目的と思われるサイトなどにある情報も一部取り上げて検証対象にすることにしました。具体的には以下の様なサイトを特に検証の参考にしています。

■USI‐TECH JAPAN株式会社 (usi-tech.co.jp/)

■USi-Tech あなたの人生が変わる (www.cyaninc.jp/)

■USI Techとは (usitech.gogobtc.net/)

■8 Style (ハチスタイル hachi-style.com/usi-tech/)

■USI TECHでビットコインは増えるのか検証ブログ (usitech.hatenablog.jp/entry/usitech-3)

ちなみに最初に挙げたUSI-TECH JAPAN株式会社 (usi-tech.co.jp/)というのは名前からしてもUSI-TECH社の日本における公式代理店であるかのようですが、USI-TECHの公式サイトにはそのような記載やリンクはありません。下のキャプに示すように特定商取引の項目には東京都港区北青山の住所が書いてありますが、この住所はServecorpというバーチャルオフィス業者の住所のようです。

まずこれも検証のきっかけになったのは知恵袋に出てきた投稿です。以下にその投稿の内容を転載します。

>mibo2311さん 2018/1/1814:11:55

>知人に今流行のビットコイン USI-TECHを勧められて迷っています、どなたかご存知の方やるべきか止めた方が良いのか、お教え願えますか?

「知人」から勧誘されたということなのでネズミ講方式での勧誘が行われていることが予測されます。この点については後述します。ちなみにUSI-TECHについては複数のTwitterアカウントから宣伝投稿も行われているようです。

日本でこうした宣伝活動が行われていることを反映してか、国別のアクセス数を見ると日本からのアクセスが米国に次ぐ2位で約10%を占めています。日本からもそれなりに関心が寄せられている案件であることが分かります。

公式サイトにある会社情報は以下のようになっています。

>会社 USI - Tech

>住所 P.O Box 65736 Dubai UAE

>登録番号: ICC20160282

>E-Mail: info@usitech-int.com

>カスタマーサポート: +1 (702) 522-1640

>ウェブサイト: https://usitech-int.com/

住所はアラブ首長国連邦のドバイですが、私書箱の番号とドバイとあるだけで明らかに不完全な住所です。また電話番号は[+1]というアメリカあるいはカナダの国番号から始まっていて住所と一致しません。アラブ首長国連邦の国番号は[+971]のはずです。

サーバーのWho Is情報にある登録者の連絡先を見ると住所はここでもドバイですが、赤枠で囲んだ部分に電話番号(+853. 9889633210)があります。

[+853]というのは調べてみるとマカオ(中国のマカオ特別行政区)に割り当てられた国番号です。住所と電話番号が一致していないのは同じです。

一方、例えば日本語の勧誘サイトの1つにあった以下の住所は複数の勧誘サイト(usitech.financial/usitech.gogobtc.net/)に共通して確認されますし「P.O BOX (私書箱)67736」の部分は公式サイトの住所と一致もしていて電話番号もアラブ首長国連邦の国番号[+971]から始まっているので真実味があります。

>Company USI - Tech

>Address P.O Box 65736, 708, Fairmont Hotel, Sheikh Zayed Rd. Dubai UAE

>Register Nr. ICC20160282

>E-Mail: info@usi-tech.info

>Phone: +971 4 304 2326

>Website: https://usi-tech.info/

しかしこの「708, Fairmont Hotel」という住所はFirst Business Centerというレンタルオフィス/バーチャルオフィス業者の住所と一致するようです。

従ってこの住所にUSI-TECH社が実在する可能性は低いと思われます。現在公式サイトに記されている簡単すぎる住所(P.O Box 65736 Dubai UAE)はバーチャルオフィス業者の住所であること、つまり架空住所であることを隠すために意図的に簡略化し過ぎた住所ではないかと疑わざるを得ません。

さらに複数の(少なくとも4つの)日本語勧誘サイトには以下の会社登録の画像が示されていてドバイに会社登録している証拠と主張しているようです。

しかしこの登録証明を出しているRAK INTERNATIONAL CORPORATE CENTREのRAKというのは登録証明の中にもあるようにRas Al Khaimah (ラアス・アル=ハイマ首長国)というアラブ首長国連邦(UAE)を形成する以下の7つの首長国の1つのようです。

アブダビ首長国

ドバイ首長国

シャールジャ首長国

アジュマーン首長国

ウンム・アル=カイワイン首長国

フジャイラ首長国

ラアス・アル=ハイマ首長国

つまりUSI-TECHが本拠を置くと主張しているドバイ首長国と会社登録が示すラアス・アル=ハイマ首長国は同じUAEを構成する国ではあっても明らかに別個の国です。残念ながらRAK INTERNATIONAL CORPORATE CENTREの公式サイト(www.rakicc.com/)では登録企業のリストを公開していないようなのでUSI-TECHの登録がラアス・アル=ハイマ首長国に本当に存在するのか確認出来ませんが、この会社登録でドバイの会社であると主張するのは明らかにオカシイです。

次に投資対象ですが公式サイトには以下のキャプに示すように「ビットコインの自動トレーディングシステム」で利益を出すとなっています。さらに「24時間365日、いつでも換金可能」とか「12段階・35%還元のリファラル コミッション」といった記述もありますが、これらの記述については後述します。

要するにビットコインの自動売買ソフトによるデイトレードで利益を出すとなっているのですが、公式サイト以外では自動売買だけが収益源ではないとなっています。例えばUSI‐TECH JAPANのサイト(usi-tech.co.jp/)では配当原資確保の手段として以下の3項目が挙げられています。

>①アービトラージ(裁定取引)

>ある取引所でビットコインを安く買い、ほぼ同時にそれを他の、より高値で売れる取引所で売却するのです。この取引をUSI-TECHは毎日24時間、1日に何百回という単位で行っています。

>②伝統的なビットコイン/暗号通貨トレーディング

>USI-TECHのヘッドトレーダーによると、FXトレードと比べたら、「ビットコインのトレードは幼稚園児の遊びのようなもの」だそうです。

>③ビットコイン/オルトコインのマイニング

>USI-TECHは、他の成功しているマイニング運営会社に対して、マイニング代行業務を提供しています。

しかしこれらの収益源にはそれぞれ疑問があります。まず決済にかなり時間が掛かることが知られているビットコインの裁定取引を「1日に何百回」も繰り返すなんて本当に可能なのでしょうか?例えば日本国内の某仮想通貨取引所のFAQには以下の様な回答があります。

>反映時間は早ければ5~10分程度、場合によっては数時間、お時間を要する場合がございますがビットコインネットワークが大変混雑している場合は、承認までに数日〜数週間お時間が掛かります。

こんなに時間が掛かっているのに「1日に何百回という単位で」取引するなんて現実的とは思われません。また「検証18」で検証したトレードコインクラブの項目でも触れましたが、外国為替市場などと比べて仮想通貨の市場での取引はまだまだ規模が小さいはずです。USI-TECHの運用資金がどれほどなのか明確ではありませんが、多くの投資家から大きな資金を集めて短期売買しようと思ったら自らの売買注文で相場を動かしてしまい、利益を出すのは非常に困難になるはずです。どれほどの資金でどれだけの取引を行ってどれだけ収益を出したのかといった収支報告も公開されていません。

またマイニングについてもどうして自らマイニングに参加せずに「マイニング代行業務」をやっているのでしょうか?下請け業務では利益を分け合うことになり、投資効率は確実に低下するはずです。誰でも参加出来るはずのマイニングに代行としてのみ参加する意味が分かりません。

そして現在は公式サイトにはどれほどの配当を出すのか明確な記載がありません。「最大150%の利益を獲得」とありますがどれほどの期間で150%になるのか全く不明確です。

仕方がないのでこの部分についても勧誘サイトを参考にします。配当を受け取らずに複利運用するコースもあるようですが、本質ではないので単利運用の説明を以下に抜粋引用します。

>元金に対して1日1%の利益目標で運用を行ない、140営業日(1ヶ月=20営業日と換算。よって約7ヶ月)で140%、つまり40%の利益を還元して運用終了となります。

>※140営業日より前に140%に達すればその時点で終了、140日経過時点でも140%に達していなければさらに運用は継続され、140%達成時点で終了となります。

週末は配当が支払われず、営業日に1日当たり1%の配当を出すことを目標としているようです。実際には上で指摘したように誰かを勧誘すれば最大35%もの勧誘報酬(リファラル コミッション)を出しているのですから運用に回される資金はこの勧誘報酬の分だけ目減りしているはずであり、1日1%の運用益では足りないはずです。仮に35%の勧誘報酬を払えば残りの65%で1日1%の配当を出すには1日当たり1.55%以上という考えらえない高利回りが必要になるはずです。

また理由は明らかでありませんが原資は返ってこないようです。率直に言ってこの配当分配方法には疑問を感じます。まず公式サイトに「24時間365日、いつでも換金可能」と書いてありますが、最終的に返ってこない元本についても換金(出金)可能なのでしょうか?例えば約7カ月の運用機関の半ば、3カ月半の時点で換金すると元本の半分が返ってくるのでしょうか?返ってこなければ3カ月半分の配当だけでは元本分に届かず、損をすることになります。この点について答えを公式サイトや勧誘サイトでも説明を探しましたが回答は見つかりません。

またビットコインの様な仮想通貨は本来は決済手段なのですから株式や為替市場と違って週末であろうとも市場は動いているはずです。実際にビットコインのチャートは週末でも途切れずに繋がっています。自動売買ソフトが勝手に利益を出してくれるはずなのですから営業日にしか配当が出ないのは理解不能です。さらに原資が返還されないということは実際には1日に1%の運用利益を出せずに、1日1%の配当を出しているから原資が目減りしてしまうということなんでしょうか?あるいは「入会金や月会費は一切かかりません」と言いながら実際には原資を運用手数料代わりに徴収しているということなんでしょうか?かなり不明朗なシステムの様に思われます。

そして例えば最初に参考情報元として取り上げた「USI TECHでビットコインは増えるのか検証ブログ 」では2017年11月30日から1カ月(23営業日)の配当実績なるものが示されています。得られた配当は1日当たり0.76%~1.01%で23営業日で0.5685BTCの投資額に対して0.1084125BTCの配当が得られているとありますから19.07%。1営業日当たりの平均は0.829%です。目標とされる1%を超えているのは23営業日の中で1営業日のみですが安定しているとは言えるかもしれません。しかしこれだけ安定した配当を毎営業日出すことが出来るとなれば逆に運用の実態があるかどうか疑わしく感じます。短期売買では相場の変動が大きい日もあれば小さい日もある、あるいは上げ基調の日も下げ基調の日もあるはずですから収益に波が出るのがむしろ当然でしょう。23営業日連続でマイナスを1日も出すことなく、0.76%~1.01%という極めて安定した配当を出すなんて非現実的としか思われません。運用の実態があるかどうか疑問を感じずにはおられません。

そして言うまでもないかもしれませんがこのような配当を出す投資案件には法的な問題があります。実際にこの案件にはアメリカやカナダで違法という判断が相次いで下っているようです。

カナダ・ブリティッシュコロンビア州証券局からの警告 (2017年12月15日)

アメリカ・テキサス州証券局からの警告 (2017年12月20日)

カナダ・ニューブランズウィック州金融消費者局からの警告(2017年12月21日)

カナダ・ノバスコシア州証券局からの警告 (2017年12月21日)

カナダ・マニトバ州証券局からの警告 (2017年12月22日)

カナダ・サスカチュワン州金融・消費者局からの警告 (2018年1月26日)

カナダ・オンタリオ州証券局からの警告 (2018年2月15日)

例えばカナダ・ブリッティシュコロンビア州証券局からの警告は単に金融機関登録がないと指摘しているだけですが、「検証24」で検証したビットコネクトコインに対しても警告を出していたアメリカテキサス州証券局からの警告では登録がない点に加えて必要な情報開示が為されていない、1日1%の配当を出すほどに収益を得られているのか、マイニングの費用や収支などの情報開示が為されていないことを指摘して問題視しています。これに対してカナダ・ニューブランズウィック州からの警告は違法性については触れていませんが、詐欺の疑いが濃いから疑問があるなら相談を受け付けるので連絡してくれといった告知を行っています。カナダ・マニトバ州証券局からの警告はさらに手厳しく、登録がない違法性を指摘した上に低リスク&高配当という組み合わせは有り得ないことや勧誘報酬(リファラル コミッション)を出していることを指摘してこれはネズミ講方式で集金するポンジースキーム(自転車操業方式の詐欺)の疑いがあるからマニトバ州民は投資しないようにという呼びかけを行っています。

私見ですが上のレンダーズコインの検証で触れたように日本の金融庁から出た注意喚起に照らして日本でも金融商品取引法に抵触していると判断される可能性は充分にあると思われます。

さらにアメリカやカナダから相次いで警告が出たことに関連して勧誘グループが活発に活動していたアメリカのグアム島ではTommy Morrison (トミー・モリソン)というグアム議会の議員がUSI-TECHのネズミ講方式の勧誘に加わっていたことが明らかになって問題視されたり、グアムの司法長官から詐欺の疑いについて警告が出るなど報道から多数の新聞記事が出ているようです。

モリソン議員USI-TECHとの関与を認める (Guam Daily Post 2018年1月11日)

グアム司法長官ビットコイン詐欺の調査開始 (Marianas Variety 2018年1月12日 )

司法長官USI-Techへの警告を発す (Guam Daily Post 2018年1月12日)

こうした極めて異常な状態になっているUSI-TECH社への投資は勿論推奨出来ません。そしてさらにUSI-TECH社はこれまでの配当が出る投資に代わってTech Coin (テックコイン)という仮想通貨を売り出そうとしているようです。

テックコインに関する情報はUSI-TECHの公式サイト(usitech-int.com/)には見当たりません。表題の2つ目に挙げたサイト (www.techcoin.com/)のサイトはUSI-TECHの公式サイトとURLアドレス以外、全く同じです。しかし公式サイトからリンクされているUSI-TECHの公式Twitterアカウント投稿にはテックコインのホワイトペーパーの画像が出ています。

これ以上の情報が公式サイトには見当たらないようなので検索するとUSI-Techの公式アカウント以外にTwitterにはTech Coinの公式アカウントらしきものが存在しており、テックコインのホワイトペーパーが「Back Office」から入手可能であると書かれています。

Back Officeというのが何を意味するのか最初は分からなかったのですが、これはどうやらUSI-TECHに投資した人だけがログイン出来る会員専用サイト(usitech-int.com/login.html)を指すようです。つまりUSI-TECHに投資した人だけしかホワイトペーパーを見ることが出来ない設定になっているようです。仕方がないのでテックコインについても日本語の勧誘サイトにある情報を検証します。例えばUSI‐TECH JAPAN株式会社のサイト (usi-tech.co.jp/)にあるテックコイン関連と思われる情報を抜粋してみます。

>USI-TECHトークンパッケージは、2017年10月28日のロンドンでのイベントで発表された、USI-TECHの新商品です。

>USI-TECHトークンパッケージは、USI-TECHの将来の暗号通貨である「TECH COIN」に変換されるトークンで構成されています。

>【TECH COINとは】

>財務、資産およびその他の取引方法など、世界的なビジネス経済において直面する主要な問題を解消すべくUSI-TECHが独自に発行する暗号通貨です。

>USIのブロックチェーンを使用することで取引は迅速になり、数秒で予約できる。よって注文が実行されるまで数日も待つ必要がない。

>このトークンは、5億個の限定販売となっています。

>現在、特別ICO(イニシャルコインオファーリング)期間中のため、購入したパッケージごとに、無料のボーナストークンを受け取ることができます。

こういった断片的な情報だけを見ても評価することは出来ません。販売価格はシルバーからダイヤモンドまで5段階のパッケージがあり、50~5万ユーロ(1ユーロ=135円で換算して6750円~675万円)という価格が付いており、高額のパッケージを買うとおまけが付くようです。

例えば最も高額なダイヤモンド・トークンパッケージを5万ユーロ(約675万円)で購入するとトークンの売り上げが一定レベルに達するたびに手持ちのトークンの数がボーナスと称して倍になり、最大4回のボーナス給付で最初の10万トークンが160万トークンにまで膨れ上がるようです。さらに詳細は不明ですがテックコインの販売についても勧誘報酬(リファラル コミッション)が出ているようですからトークンの数はさらに膨れ上がる可能性があると思われます。ICOで集める資金に対して発行されるテックコインの数が非常に多いことを考えれば、テックコイン1枚当たり0.5ユーロという価値が保たれるかどうか非常に疑問です。

また何しろ発行されているはずのホワイトペーパーが投資した人にしか公開されていないという設定なので断言は出来ませんが、テックコインが何処で決済手段として使用可能になるのかという非常に重要な点に関して情報が見つかりません。結論としてUSI-TECH社の信頼性、合法性については極めて低いと考えざるを得ませんし、情報公開も明らかに不充分です。テックコインへの投資も推奨出来ません。


※付記

matomaというサイトでUSI-TECHに対する集団訴訟の呼びかけが行われているようです。

この集団訴訟の呼び掛けのページにある概要&詳細によれば出金が不能になり、配当も停止したようです。