検証27

このページでは以下の案件を検証しています。

●ARGUS CRYPTO LAB(アルゴスクリプトラボ argusproject.com/jp/
●Space Coin (スペースコイン spacecoin.jp/)


それでは検証を始めます。

●ARGUS CRYPTO LAB(アルゴスクリプトラボ argusproject.com/jp/

この項目はYahoo知恵袋の質問に対する回答として書いたものです。ビットコインのアービトラージ取引を自動売買ソフトで行うとありますが「月利で12.5%は増える」などという話しにはそれだけで危うさを感じます。

まず例によって連絡先情報ですが日本語サイトの会社情報には以下のように書かれています。

>会社名 ARGUS CRYPTO Laboratory

>所在地 San Francisco,USA

>代表者 Benjamin Brooks

>資本金 $930,000

>設立日 2013.5

>事業 ブロックチェーンに関する研究、開発、コンサルティング

英語サイトにも基本的に同じことしか書かれていません。

>ARGUS CRYPTO Laboratory

>LOCATION San Francisco,USA

>REPRESENTATIVE Benjamin Brooks

>CAPITAL $930,000

>ESTABLISHMENT DATE 2013.5

住所はアメリカのサンフランシスコとだけあります。明らかに不完全な住所です。またアメリカの住所を書くならば簡略化するにしたって常識的には都市名+USAとは書かずに都市名+州名(サンフランシスコならカリフォルニア州)を書くのが普通ではないかと思います。日本なら神奈川県横浜市と書かずに日本・横浜市と書いているようなもので何となく違和感を感じるのです。

また英語サイトには電話番号がありませんが、日本語サイトでは「商品 TES」という項目のページの一番下に0120から始まるフリーダイヤルの電話番号が記されています。

ちなみにこのフリーダイヤル番号(0120-888-322)を検索すると電話帳ナビという口コミサイトに口コミが1件だけありました。国内で電話による勧誘が行われているようです。

連絡先情報を検討した結論として、連絡先情報の信用度は低く、これは実際には日本に拠点がある日本の会社である可能性が高いと判断します。

英語サイトと日本語サイトがあると書きましたが、それぞれのトップページのURLアドレスは以下のようになっています。

日本語サイト https://argusproject.com/jp/

英語サイト http://argusproject.com/

何故か分かりませんが日本語サイトが暗号化されている「https」、英語サイトが暗号化されない「http」で始まっています。またそれぞれのサイトに言語を切り替える選択は用意されていないようです。故に日本語サイトを見ている人は英語サイトが存在することに、英語サイトを見ている人は日本語サイトが存在することに気が付かないかもしれません。

日本語サイトと英語サイトの違いはURLアドレスだけではありません。一見して日本語サイトが青を基調としているのに対して英語サイトが黒を基調としていて記述内容 (情報量) は日本語サイトよりずっと少ないです。

英語サイトは単なる会社紹介みたいな内容なのに対して日本語サイトには知恵袋の質問に出ていたTESと称する自動売買システムに関する説明があります。逆の言い方をすると英語サイトには会社案内の部分にも自動売買システムに関する記述が全く見当たりません。

また英語サイトを読んでいると違和感を感じる部分があります。例えば仮想通貨の発展を説明する文章を英語サイトから抜粋引用します。

> Of course this Lab was also provided with coins, and the 60 million coins of currency issued for ordinary investors can be obtained by Lab members at 1ETH=about 25 yen. As of June 2017 they are about 20,000 yen, which is an approximately 800 fold increase. If a person had purchased 1 million yen worth of Ethereum, they would now possess 800 million yen worth of assets.

この文章には非常に違和感があります。つまりアメリカの会社の公式サイトにある英語の文章のはずなのに説明の中に出てくる通貨単位がドルではなく、YEN (円)なのです。これはどう考えてもアメリカ人がアメリカ人の為に書いた文章ではありません。日本語で書かれた文章をそのまま英語に訳したとしか思えません。実際に日本語サイトには元になったと思われる日本語の文章があります。円建ての金額がすべて一致しています。

>当ラボにももちろん支給されていますし、一般投資家向けに発行された6000万枚の通貨も、ラボ会員様たちは1ETH=約25円で手にしています。2017年6月現在で20,000円程ですが、約800倍です。100万円分のイーサリアムを購入していた場合、8億円の資産を持つことになるのです。

アルゴスクリプトラボはやはり実際にはアメリカの会社ではなく日本のグループによるものである可能性が高いと判断せざるを得ません。何故日本のグループがアメリカの会社を装っているかと考えれば日本の法規制を逃れる為としか思えません。しかし海外の金融業者であっても日本語サイトを設けて日本人向けに積極的に投資勧誘するならば日本の金融庁から金融商品取引業者の登録を得なければ金融商品取引法違反になる可能性があり、出資法違反にも問われることも考えられるはずです。一応、金融庁のサイトで公開されている金融商品取引業者のリストを確認しましたがアルゴスクリプトラボは該当がないようです。但し、仮想通貨が投資対象ということで実際に金融商品取引法や出資法の規制対象になるかどうかは金融庁の方針も定まってはおらず、グレーゾーンということになるのかもしれません。

一方、資金の運用方法ですが、TES1、TES2、TES3、TES4と4つの選択肢が用意されていてそれぞれの月利が12.5%、18.1%、25.3%、41.6%だそうです。年利にすると150%~約500%という夢物語としか思えないレベルの高利回りです。

この高利回りを説明する文章から一部抜粋します。

>当ラボがご案内するシステムは、仮想通貨の価格差を利用した裁定取引で利益を得るため、「負ける」という概念がありません。自社及び顧客のビットコインをリスクに晒すことなく拡大できる革新的なシステムです。

>例:一カ月の取引回数16回、一回の取引による獲得収益3.25%、獲得月利=52% 当ラボ(分配率20%)=10.4%、お客様(分配率80%)=41.6%で分配します。

これらの記述を見て確信しましたがこの文章を書いた人物は「裁定取引(英語ではArbitrage [アービトラージ])」の知識が極めて乏しいか、あるいは意図的に裁定取引の実態を無視しています。仮想通貨の取引市場は世界中に多数あるでしょうし、参加者がそれほど多くないでしょうから取引所Aと取引所Bで例えばビットコインの取引価格に開きが出ることはあるでしょう。しかし裁定取引で「一回の取引による獲得収益3.25%」なんてことは有り得ない、裁定取引の常識を著しく外れていると思います。裁定取引は勝率は高くても1回の取引で得られる利益は非常に少ない薄利の取引であるはずです。

また裁定取引では資金量がある程度以上膨らむと運用が難しくなるのは自明です。投資家から巨額の資金を集めて裁定取引で「150%~約500%」なんていう高利回りを叩き出すなんて裁定取引の知識がある人ならば絶対に無理と断言すると思います。さらに仮にそんな高利回りの運用が可能だとしたら自動売買のシステムを開発した人は不特定多数から資金を集めて収益の80%を投資家に還元するなんてことをするはずがありません。自分で銀行などから資金を調達して自己資金を運用することに集中するでしょう。

結論としてこの案件は公開されている情報の信頼性が著しく低く、合法性にも疑義があります。さらに運用方法や期待される投資利回りなど全く信用出来ません。投資は避けるべきと結論します。


※付記

2019年1月、Yahoo知恵袋に被害報告と思われる投稿が出てきたことでこの案件が破綻したことを知ることになりました。公式サイトには以下のキャプに示した破綻宣告が出ています。

2019年1月13日に大きな損失が生じて1月18日までに引き出し手続きを行えとあり、さらには引き出し手続きのやり方まで別に示しているのですがYahoo知恵袋への投稿によれば実際には引き出しが出来ず、カスタマーサービスとの連絡も出来なかったようですから理不尽な主張でしょう。Enjinというサイトでは集団訴訟への呼びかけが行われてかなりの被害者が集まっているようです (以下のキャプを参照)。このEnjinのサイトへの被害者の書き込みでも実際には引き出しのチャンスなどなく、勧誘に関与した大島を名乗る人物への怒りの声が溢れているようです。

さらにこの件に関してはベガと名乗る人物が主催していたメルマガが勧誘の舞台となっていたようであり、このベガなる人物の責任を問う集団訴訟の呼びかけも行われているようです。

これらの呼び掛けに書き込まれた被害者からの情報によれば当該のベルというメルマガでは多数の仮想通貨案件を厳しく評価して読者の信頼を得る一方でアルゴスクリプト/TESについては非常に高く評価して資金集めにも参加していたということです。「検証19」で検証した「投資のKAWARA版」→「ASECコイン」、「検証44」で検証した「仮想通貨ポリス」→「日本仮想通貨オンライン」で使われていたのと同じ手法による勧誘とも考えられます。

さらにmatomaというサイトでも以下のキャプに示した様にアルゴスクリプトラボに対する集団訴訟の呼びかけが行われていました。しかしおそらく訴訟相手となる人物の特定が難しいことが理由ではないかと思われますが訴訟断念の判断になっているようです。

●Space Coin (スペースコイン spacecoin.jp/)

Googleで何かを検索している時に以下の様な広告を見かけたので検証してみました。あまり検証材料もないので簡単な検証になります。

まず連絡先情報です。

>特定商取引に関する表記

>販売業者 株式会社ダイセイ・パートナーズ

>運営責任者 岡本大基

>住所 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-25 GYB秋葉原4F/5F

>電話番号 TEL:03-6859-7317 FAX:03-6859-7221

>お問い合せ お問い合せフォーム

>URL http://daisei-partners.com/

>商品 当社が管理・運営する各ストレージスペース(購入証明として当社発行のトークン(SCPT)を送付します)

法人登録も全く同じ住所になっています。

>法人番号 8010401094913

>商号又は名称 株式会社ダイセイ・パートナーズ

>本店又は主たる事務所の所在地 東京都千代田区神田須田町2丁目25番地

>最終更新年月日 平成29年6月5日

しかしこの東京都千代田区神田須田町の住所を検索するとRegusというバーチャルオフィス業者の拠点の住所と一致します。またFAX番号(03-6859-7221)は検索すると複数の企業で使われているようなのでバーチャルオフィス業者のFAX番号と思われます。連絡先情報は全く信用出来ません。

次いでビジネスモデルは以下の様にまとめられています。

>ブロックチェーン市場を、当社独自のポートフォリオによって、安定した収益を目指します。

>低資本から参加可能にする、ストレージリセールビジネスの収益

>ストレージビジネス向け仮想通貨のマイニング収益(含み益・売却益)

>時価総額ランキング上位仮想通貨のマイニング収益(含み益・売却益)

>当社独自トークンの売買による収益(売却により損失が発生する場合もあります。又、売却した場合は収益の受取り権利は売却先へ移転されます)

「特定商取引に関する表記」の商品の項目にある記述と併せるとこの会社が所有するサーバーのスペースを小分けにしてその権利の証拠として「当社発行のトークン(SCPT)」つまり仮想通貨を発行するということのようです。そしてサーバーはビジネス向けに貸し出したり、仮想通貨のマイニングに活用して利益を出し、出資者に配当を出すというのが概要と思われます。

しかしこの会社が本当にサーバーを多数保有している会社なのかについて疑問があります。まず、このスペースコインのサイト自体のサーバーの管理者情報などを見るとXSERVERというレンタルサーバー業者の名前などが並んでいます。そして同じサーバー上に他に23個のサイトが共存しています。

サーバーをレンタルする事業を行うとしている会社が自社のサーバーを使わずに他のレンタルサーバー業者のレンタルサーバーを使うなんて不合理としか思えません。

さらにこのスペースコインのサイトには稼働中のサーバーと思われる画像が複数掲載されています。例えばサイトの冒頭にある画像ですが、この画像をGoogleの画像検索にかけると酷似した画像が多数のサイトに使われていることが分かります。下の2つの画像の内、上の画像はスペースコインのサイトの冒頭部、下の画像はWireless Weekというサイトの記事にあった画像です。この記事はアメリカの大手電話会社・ベライゾンがデーターセンターをEquinixという会社に売却した件に関するものです。

調べてみるとどうやらこの画像はFlickrというウェブコンテンツ向けの画像を提供するサイトにあった画像のようです。サーバー事業を行っている業者が稼働中のサーバーの画像を必要とするなら自社のサーバーを撮影すれば済むことです。この会社が本当に事業用のサーバーを保有しているのか極めて疑問です。

そもそもサーバーを運用する事業が実際のものであったとしても権利を仮想通貨として売るなどということが適切とは思えません。仮想通貨と言っても決済手段として通用させるかどうかについては何の説明もありません。発行条件は以下のようになっていますが、何処かの仮想通貨市場に上場されなければ換金も出来ないでしょう。

法的な問題を考えると例えばREIT (上場型不動産投資信託)の中にはデーターセンターなどをポートフォリオに持つものがあります。日本のJ-REITの中では例えば東京証券取引所で取引されているヒューリックリート投資法人というREITはデーターセンターを保有しているようですし、アメリカのデジタル・リアリティというREITが日本のデーターセンターを買収した事例もあるようです。スペースコインは金融商品としての規制を避ける為に「仮想通貨」という名目で販売されているようにしか思えず、金融商品取引法や出資法に照らして合法性に疑問があるように思います。投資は推奨しません。