8-3 花見川流域の魅力と地域づくり
8-3-3 地域づくりの取組
① 風景を損なうものとそれに対する対応
イ 柵
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【柵】
○○珍百景などと称するテレビ番組で、意味がわからない構造物とか野外の装置を紹介することがよくあり、散歩人の1人としていつも興味をそそられています。大抵は、つくられた時の状況が消失したのだけれども、その後撤去する積極的必要性がないので放置されたものです。最初の状況が思い出せなくなればなるほど珍風景になります。
上の写真は、横戸緑地下のサイクリング道路脇に数十メートルにわたって設置される金網の柵です。平成元年に花見川区に転居してから、現在までこの金網はありますが、いまでもその機能についてぴんときません。金網の途中に途切れた部分がありどうもドアの跡のようです。水際に人が出ないようにするためにしては、途切れたところを使ったり、両端を廻れば行けますから、ほとんど意味がありません。人の背丈より高い金網の柵というものは人や動物が自由に出入りできませんという行動規制の強烈なサインです。無意識にまで働きかける記号です。だから、風景を鑑賞したり自由な散歩を愉しんでくださいという場所に置くことは、もしその必要性が無くなっているのならば避けたいものです。
この場所は戦前軍用軌道の鉄橋があった場所であり、橋脚の撤去や護岸補修などの工事が行われ、そのときの仮設安全柵が残ったのかもしれません。私の想像です。それにしては恒久的で頑丈な金網なので私の花見川珍風景の1つです。
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高津川小流域紀行2 有刺鉄線付き金網柵で川を囲む
高津川、北高津川は全川にわたって有刺鉄線付き金網柵で囲まれています。金網柵の存在は、それに囲まれている地物が、通行する人に対して強く侵入を拒否するサインです。ですから自然や風景に配慮したまちづくりでは特別の事情がないと使われません。高津川と北高津川の沿川はほとんどが密集市街地ですから、自然や風景に特別に配慮した地区とは違いますが、金網柵の存在は街から川を切り離しています。有刺鉄線の存在は川を街から切り離すだけでなく、危険物としてのサインになっています。
この有刺鉄線付き金網柵は単に転落防止とか水難事故防止の機能だけではなく、川の悪(穢れ)を回避したいという地域の深層意識を反映しているものと考えます。悪とは旧軍による敗戦時の演習場における毒ガス埋設であると考えます。
高津川の有刺鉄線付き金網柵
北高津川の有刺鉄線付き金網柵
八千代市と千葉市の境界を流れて、柏井小学校付近で高津川に合流する芦太川はそのほとんどが蓋掛け水路となっていますが、合流部手前500mは開水路(コンクリート柵渠)となっています。この部分には金網柵があります。しかし、有刺鉄線はありません。この川の上流には悪(穢れ)がありません。この川の金網の機能は転落防止です。金網の近くには付近住民の方が植えた花が咲いていました。高津川や北高津川には見られない光景です。
芦太川の金網柵
次の写真はその沿川が住宅密集地である勝田川上流小深川(千葉市稲毛区山王町)の姿です。金網柵はありません。勝田川に金網柵が全くないわけではありませんが、ほとんどありません。
小深川の姿(千葉市稲毛区山王町)
花見川水系について、辿ることの出来る河川・水路・水路跡をほとんど全部歩いて感じることは、高津川・北高津川が街から排除された悲しい姿です。沿川住民の方はこの川の姿について、疑問を感じないのでしょうか?
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花見川流域のイメージと感想12 改善したい風景
花見川の各種風景のベスト8を八景として選定して、これまで記事としてきました。
散歩していると、当然ですが、悪い風景もあります。悪い風景とは風景素材(地形、動植物、過去の人の利用、歴史等)を破壊、軽視して土地を利用し、工作物を作った時に感じる風景のことだと思っています。
悪い風景とは風景素材と現在の利用の間に齟齬を感じる私の心理現象です。ですから、私の心理を分析すれば、悪さの原因を突き止めることができます。原因がわかれば、その原因を除去したり、軽減する方法もわかります。
結局、悪い風景とは私が改善したいと思う風景のことです。
改善したい風景の一例が高津川の金網柵です。高津川、北高津川の開水路全区間にわたって金網柵が作られているのですが、その金網柵上部に全て有刺鉄線が3条つけられているのです。徹底しています。
転落防止機能からみると有刺鉄線はあきらかに過剰です。有刺鉄線の存在は、高津川の存在自体が日常的危険物であり忌避すべきものであるとのサインになっています。高津川=悪徳という地域づくりが行われています。
全区間有刺鉄線付金網柵で囲まれた高津川、北高津川
こうした風景は改善することが大切だと思います
稚拙な方法で上記写真から有刺鉄線を除いたモンタージュ写真を作ってみました。
有刺鉄線を除去したモンタージュ写真
風景に刺さったトゲは応急的に除去されました。
この有刺鉄線の除去された金網柵に囲まれた高津川、北高津川の風景が本当にこれでよいのか、住民、行政、専門家が集って「検討の対象」にすれば、街づくり・風景づくりがスタートすることになると思います。
現在は住民も、行政も、専門家も高津川や北高津川の風景を「検討の対象」にしていません。金網柵どころか、有刺鉄線で囲った川の風景さえ、その異様さが意識されていません。